『未来に残していけるのは?』鬼滅の刃最終巻・幾星霜を煌めく命感想
【注意】この記事には「鬼滅の刃」最終23巻の重大なネタバレが含まれます。
吾峠呼世晴先生による漫画、「鬼滅の刃」の最終23巻が2020年12月4日に発売されました。今回はその巻に収録された最終回のお話を軽くしたいと思います。冒頭にも書きましたがネタバレ注意です。
それでは本題に移ります。
目次
最終回の内容の概略
物語の時系列は鬼殺隊と鬼舞辻無惨の決戦から100年以上経った現代に話が移ります。そこでは人を食う鬼は存在せず、誰もが平和に過ごしています。主人公・竈門炭治郎達の子孫もいる他、本編で帰らぬ人となってしまった人物の転生した姿と思われる人々も登場します。
最終回について思ったこと
「鬼滅の刃」の最終回では、善逸の子孫・義照が善逸の残した戦いの記録(善逸伝)を読んでいたり、単行本の加筆版では炭治郎の子孫・炭彦が祖母から鬼退治の話を聞いていたりと、炭治郎達の活躍が昔話のように語れています。しかし、炭彦は兄・カナタに『鬼なんていない、おばあちゃんは嘘をついてある』と言い捨て、善逸伝に至っては義照の姉・燈子に『嘘小説』呼ばわりされる始末です。おそらく最終回の時系列では人食い鬼も鬼殺隊さえも昔の出来事として忘れ去られており、みんな何気なく暮らしているのだと思います。しかし、人を食べる鬼が存在せず、誰も理不尽に命を奪われない何気ない日常こそが大事であり、鬼殺隊のみんなが命を賭してまで守りたかったのはそんな日常だったのではないかと思います(この際殺人事件や戦争、貧困で理不尽に命を奪われているなどの現実的な問題とは区別して考えるものとする)。鬼殺隊のみんなは誰かの人生が理不尽に奪われることを良しとせず、多くの人がそうならないように戦ってきました。そういう意味では、産屋敷が言っていたように人の想いこそが永遠という理念を体現した最終回であったと思います。
鬼は救われない、救えないのか
「鬼滅」最終回は現代まで時代が飛び、本編で死亡した人の生まれ変わりと思われる人物が多数登場しましたが、鬼のメンバーは生まれ変わりがありませんでした(キメツ学園で救われてるからセーフと突っ込んではいけない)。ジャンプ本誌で自分が最終回を読んだ時は、『1000年以上人を殺し、また他人を鬼にして人を殺させてきた無惨はどうしようもないけど、鬼になったことを最終的に悔いて散って行った累や猗窩座、黒死牟、それから珠世、人間時代に生まれ育った環境や境遇が悲惨なために悪の道に走ってしまった妓夫太郎兄妹や響凱(鼓の人)は救ってやってもよかったのではないか』と考えていました。しかし、彼らを救うとなると、童磨や玉壺、半天狗のような人間時代から悪事を重ねてきたりどう考えても危ない性格だった人も同じ扱いになるのかなという気がしました(玉壺の過去はファンブックを参照)。これについては、どんな背景や理由があっても人を殺してはいけない、他人の人生を理不尽に奪ってはいけないという無言のメッセージでもあるのかなと思いました。
一方、珠世に付き添っていた鬼の青年・愈史郎はというと、画家として現代まで生きており、大好きな珠世様の生き様を絵で表現し続けています。珠世のことはこうして忘れて去られることはないというのは愈史郎から珠世への救済だと思いますし、珠世を失っても生き続けている愈史郎自身もとても強いと思います。
また、単行本の加筆版最終回では、炭治郎の子孫・炭彦も、『神様はきっと鬼も許してくれる』と言って鬼達の冥福も祈っている様子が見られました。
最後に
そんなこんなで「鬼滅の刃」は最終回を迎えました。吾峠先生にはひとまずお疲れ様と言いたいです。
最終回について、自分は100%納得しているかと言われるとそうでもなく、『痣の発生機序についてもっと掘り下げるべきだった』、『青い彼岸花は鬼の根源でキーになりそうだったのにそうでもなかった』といった未回収の伏線についてのことや、『正直子孫組や生まれ変わりメンバーの話よりも炭治郎達の祝言とかの方が見たかった(願望ダダ漏れ)』などと色々思うところがあった点もいくつかあります。ただ、話全体を通して言いたいことは何となくわかったと思いました。それがおそらく、この記事本文で自分が書いたことに当たるのかなと思います。ただし、自分としては鬼のみんなも何かしらの形で救ってほしかったなという本音もあります。
それでも、1000年以上無惨と戦い続け、やっと無惨を倒せた鬼殺隊のみんなや産屋敷家の人たち、炭治郎や禰豆子達のことは素直に讃えたいと思います。
それから、炭治郎達がしっかり子孫をのこして、その子孫も平和に暮らせているところは素直に嬉しかったです。一方で、亡くなったメンバーが転生していてもそれはよく似た別人でしかなく、失った命はやはり回帰しないという無常感に近い気持ちも感じました。特に悲鳴嶼の生まれ変わりはオリジンと違って目が見えてます(???『貴様は目が見えているだろう』)。そんな平和の時代で、鬼も鬼殺隊も全て過去の出来事になってしまっている、本当の意味で昔話になってしまっているという部分も、本編を最後まで読んできた読者としてはノスタルジックな雰囲気すら感じ取れます。
余談も余談ですが、産屋敷の息子である輝利哉について、『お母さんとお姉ちゃんまでお父さんと一緒に自爆してよかったの?』と少し可哀想な気はしましたが、裏を返せば鬼をちゃんと倒して現代まで移行して、子供が子供らしく過ごせる時代にもなれたのかなとも思いました。それから、義勇が現代に子孫を残していたのは何気に驚きました。口下手で言葉足らずな性格の彼と結婚してくれる女性がちゃんといてよかったですね。ちなみにサイコロステーキ先輩は転生してませんでした。
繰り返しになりますが、吾峠先生、お疲れ様でした。次回作も楽しみにしています。
『競い合い、支え合える場所』虹ヶ咲アニメ第9話「仲間でライバル」感想
虹ヶ咲のアニメも9話になり、ここで一応全員分の個人回を全て終えました。同好会メンバー全員分の当番回のトリを務めたのは、3年生メンバーでセクシーお姉さん系スクールアイドルの朝香果林です。
今回の第9話は、第6話から2週間ぶりにメインライターの田中仁さんがお話を書きました。前置きはこのくらいにして、内容の振り返りと感想に移ります。
目次
内容の振り返り
冒頭は果林のモノローグから始まります。果林は(おそらく)同好会のことを、『本当の弱い私を抱きしめてくれた場所』と評していました。第5話でエマに同好会へと誘われた出来事も関係しているのでしょう。
ある日のことです。読者モデルとしても活躍している果林は、校内のファンに声をかけられ、サインをくださいと頼まれます。もちろん喜んでサインをくれました。
ファンの子達にサインをあげた後、同好会の仲間であるせつ菜が自分のところに駆け寄ってきました。せつ菜は着替えている途中で他の生徒に見つかりそうになったらしく、それを怖がっていたみたいです。
果林はせつ菜に『正体が生徒会長なことがバレてもいいじゃない』と言いますがせつ菜はそれを良しとしません。しかし一方で、『正体のわからないスクールアイドルはまるで変身ヒーローみたいだ』と楽しんでいる節もありました。果林はせつ菜が自分の家庭事情について話した第4話の時点では同好会にいなかったため、おそらくそのことを知らないのでしょう。そしてせつ菜推しである自分は、せつ菜が正体バレを怖がるシーンとこのときの2人のやり取りが後のストーリー展開のフラグになっていると思えてなりません。
これ以上は脱線の恐れがあるため話を第9話に戻します。
部室でのシーンにて。彼方が『色んな人から声をかけてもらえるようになった』と発言しており、同好会が最初の頃に比べて有名になっていることが伝わってきます。そこには今までのPVや第6話での璃奈のライブの効果もあったと触れていました。
しかし、部長かすみの次に重役を務めているせつ菜は、『同好会としてはまだ何も成し遂げていません』と現状を分析した上での発言を行い、そこからみんながライブをしたいと言い出しました。
そのとき、彼方のスマホに妹・遥から連絡がありました。
遥は藤黄学園のスクールアイドル・綾小路姫乃を連れて同好会の部室にやってきました。姫乃は遥と同じくスクフェスのモブライブキャラの1人であり、ここでもまたスクフェス関連のファンサービスがあり、感心しました。姫乃はどうやら、果林のことをファッション誌でよく見たことがあるそうです。
姫乃は虹ヶ咲の同好会に大事な話があるため、そのことで虹ヶ咲を訪れました。その大事な話とはなんと、お台場で開催する音楽の祭典、Diver FESにスクールアイドル枠が3つ設けられており、既に決まっている東雲、藤黄の他に最後の1枠として虹ヶ咲を推薦するというものでした。
有名になりつつはあるものの、まだこれといった成果を上げていない虹ヶ咲としては非常に魅力的な話でした。しかし、歌える曲は1つのグループで1曲のみという決まりがありました。虹ヶ咲の同好会は各メンバーがソロアイドルであることを売りにしており、そこがネックであるため出演するメンバーを1人だけに決めなければならなくなりました。主人公・高咲侑の中の人がこの場に居れば、『ヒトリダケナンテエラベナイヨー』と言い出しそうな案件です。
1人だけしかDiver FESで歌えないとわかったものの、それだけにやはりメンバー選出は難航しました。果林の方はというと、『今回のライブは同好会が試されるライブになる。それに立ち向かえるメンバーを選ぶべき』とシビアな発言をしていました。読者モデルというプロの芸能界で活躍している果林だからこその言い分なのだと思います。メンバー選出に当たって、同好会の初期の頃からいたメンバーであるかすみやせつ菜は意見の違いで揉めた結果同好会を空中分解させてしまった経験があり、話し合いでは遠慮気味でした。その姿勢についても果林は『衝突を避けたい気持ちはわかるけど、それが足枷になったら意味がない。それで果たしてソロアイドルとして成長したと言えるのかしら』と指摘していました。
その後、果林はモデルの方の仕事もあるため、途中で帰ってしまいました。
今回のお話では、果林の読者モデルとしての仕事風景が見られたところも良かったです。
せつ菜の生徒会長としての仕事場面といい、彼方の家庭生活といい、しずくの演劇部といい、それぞれのキャラの背景をしっかり画で見せてくれるのもアニメだからこそ光る部分だと思います。
モデルの仕事の後、寄りたいところがあるためそこへいこうとしていましたが、場所がわからず道に迷ってしまいました。その道中で侑、歩夢、せつ菜の3人に遭遇します。
果林が訪れた場所は、アニメやゲームなどのサブカルチャーを扱っている店の前で、それらが大好きなせつ菜は果林もそうなのかと興味津々な様子でした。
このときのせつ菜の表情がたまらなく可愛らしいです。
店の中には、スクールアイドルのグッズも置かれていました。
中には遥が所属する東雲学院や姫乃が所属する藤黄学園のスクールアイドル部のグッズもありました。果林はそこでせつ菜のグッズもないのかと聞きますが、どうやらないみたいでした。せつ菜自身は、『悔しいですが、いつかここに並べてもらえるように頑張りたいです』と言っていました。果林がせつ菜にこのことを聞いたのは、おそらくせつ菜の実力を認めているがための発言であったと思います。しかし、魅力的なパフォーマンスを行い、侑と歩夢、愛と璃奈にスクールアイドルの世界は入りたいという気を起こさせたせつ菜でさえまだグッズを置かれていないというスクールアイドル界のシビアさも感じました。
店を出た後、果林は3人に仕事の仲間から紹介してもらったダンススクールを探していることを打ち明けました。ですが、そのダンススクールは丁度さっきの店の近くにありました。そのために果林は3人に方向音痴であることがバレてしまいます。侑はそんな果林のことを『可愛い』と評していました。ダンススクールに行こうとしていた訳を聞かれると、『ライバルに追いつくためだ』と答えました。そしてそのライバルとは、他でもない同好会のメンバーのことを指していました。果林としては、せっかく部活に入ったのだから楽しんでやりたいという気持ちはあったものの、手が抜けない性分であるため、こうして陰ながら努力をしていました。
そこでせつ菜が、改めてDiver FESに出るメンバーを決めないかと提案します。
みんなそれぞれの気持ちを込めて真剣に考え、改めてメンバー決めを行い、ストーリーはBパートに移ります。
Diver FESの当日、話し合いの結果、歌うメンバーは果林に決まりました。話し合いの様子はあまり細かく描かれませんでしたが、この後の話で姫乃も触れている事実も含めると、読者モデルとして名を上げていてスクールアイドル活動をしているという部分は十分アドバンテージがあり、同好会の名を上げるライブに出るメンバーとして果林はうってつけであると思います。当然同好会のメンバー達がそのアドバンテージだけを見て決めたということはないと思うので、普段の練習などで果林の実力を見て決めたことだと思います。
果林自身は始めからステージ衣装に着替えており、気合は十分です。
Diver FESにはスクールアイドル以外のアーティストも多数参加しており、同好会にとってはいわばアウェイな場所ということになります。その証拠に、侑と歩夢が道中で虹ヶ咲学園のことを知らない観客同士が会話していたのを耳にしており、尚更そのことを実感させられていました。
一方果林本人はというと、同好会にDiver FESの話を持ちかけてきた姫乃と話していました。果林もまた、姫乃からこのDiver FESにはスクールアイドルが好きな人だけが集まっているわけではないことを話されており、そのことで大きなプレッシャーを感じていました。しかも、ソロで出なければならないということもあり、そのプレッシャー自体も尋常ではなかったはずです。
やがて、Diver FESのステージでスクールアイドルのターンが始まります。先陣を切るのは遥達東雲学院です。
一方、虹ヶ咲サイドでは、控えのテントに果林の姿が見当たりませんでした。侑、歩夢、せつ菜の3人は迷子の可能性を案じ、同好会全員で果林を探しに行きました。
果林は1人ベンチに佇んでいました。仲間たちに発見された彼女は、アウェイなステージを前にびびっていることを打ち明けました。
メンバー選出の話し合いで偉そうなことを言っておいて情け無いと自分を責めてもいました。
しかしそんなとき、せつ菜、エマ、璃奈が真っ先に彼女に寄り添い、励ましてくれました。せつ菜は果林がライバル視している人物、エマは果林の親友にして彼女を同好会に誘ってくれた人物、璃奈は果林を含む他のメンバーが支えてくれたから立ち直れた人物です。特に、自分の気持ちを伝えることにかつては自信がなかった璃奈が果林をこうして支えている部分も素晴らしいです。
しずくも、『ソロアイドルだけどひとりぼっちじゃないんです』と果林を励ましました。第8話での経験が生かされている台詞だと思います。みんなの励ましを受けて、果林はステージに上がる覚悟を再び決めます。そのときにかすみが、『かすみんの元気を分けてあげます』と言い、そこからみんなでハイタッチの構えを取ります。
このハイタッチのシーンが大変素晴らしく、歌うのはソロだけど決してひとりぼっちじゃないという理念を感じられます。
このときエマが母国語(スイスの公用語の一つのイタリア語)で『Fozza(頑張れ)』と言っているところも何気に印象的です。
思えば冒頭のモノローグで、同好会のことを『本当の弱い私を抱きしめてくれる場所』と評していたのも、このシーンの前フリであったように感じられます。実は方向音痴な自分も、アウェイなステージを前に怖気付いてしまう自分も、本当は少し見栄っ張りな自分も受け止めてくれていて、それでもときにライバルとして対等に接してくれる同好会は、果林にとって大切な場所であるはずです。
その後、侑が『果林さんをしっかり見ていたい』と観客席の方へ走っていきます。第1話の感想でも触れたように視聴者に劇中人物の視点を与える主人公である侑らしい選択であると言えます。
これに対して同好会のスクールアイドルキャラ達はステージの裏側から果林を見守っているところもまた素晴らしい演出だと思いました。
『仲間だけどライバル、ライバルだけど仲間』、スクールアイドル同好会で培った絆を胸に、お待ちかねのライブシーンに突入します。
今回果林が歌った曲は『vivid world』。1stアルバムに収録されている持ち歌である『Starlight』の様なクールなダンスナンバーです。
歌詞も、果林と他の同好会メンバーとの絆を感じさせるものとなっており、今回の話のクライマックスを飾るのにふさわしい曲となっています。
また、ステージの演出で同好会のアイドルキャラ達のイメージカラーの流星群が流れるところも印象的です。
いつもの如く、過去の媒体をリスペクトしたカットも存在しました。
ライブは大盛況で、観客席のペンライトはいつのまにか果林のイメージカラーである青色に染まっていました。
終盤のシーンにて、虹ヶ咲をDiver FESに誘った姫乃がチームメイトと会話をするシーンがありました。どうやら姫乃はモデルとしての果林のファンであり、果林がDiver FESで歌うことに期待していたみたいです。回りくどいツンデレです。
観客席にて、昼間はスクールアイドルに興味が無さそうだった客2人が、果林のライブを見て『好きになった』と言っていました。果林の熱意はしっかりと届いていました。
そして、同じく観客席にいた侑も、何か思っているかの如くステージの方を見ていました。第1話にて、『夢を追いかけている人を応援できたら何かが始まる。そんな気がしたんだけどなぁ』と言っていた侑。1〜9話まで同好会のみんなの歌を聴き、パフォーマンスを見続けていた彼女の中で、ここにきてその『何か』が始まったのでしょうか。果林のステージを見ていた彼女は、一体どんなことを考えているのでしょうか。次回以降の掘り下げに期待です。
感想・総括
今回は虹ヶ咲の個人回シリーズのラストで、そのトリを果林が務めました。『vivid world』のカッコ良さもあり、果林のことがもっと好きになりました。
原作スクスタの果林といえば、キズナエピソードはともかく、メインストーリーではいい感じの活躍の場に恵まれたとは言い難く、それでいてテスト回などでいわばポンコツな部分がフォーカスされてしまうなど、正直に言ってしまえばどうしても締まりのない人物という印象を嫌でも抱いてしまうという不幸なキャラだなと思っていました。別に残念な美人という属性やギャップ萌え自体は嫌いではないですが、やはりビシッと決めるときは決めて欲しい、そういう場面が欲しいと思っていました。その点アニメ版では、今回の第9話がそうであったように多少ポンコツな面が見られても決めるときはしっかり決めてくれたと思います。やはりギャップ萌えは、カッコよく見える部分もきちんと描かなければギャップにはなりません。
アニメ第1話から今回の第9話までの果林は、自身が実際の仕事として芸能活動をしている背景もあってかシビアな発言が多いものの、仲間のことは大切にする人物として描かれていたと思います。競争心や向上心は強いけど、仲間意識も強い人物でした。そんな果林の活躍はこれからも楽しみです。
また、今回は当番回のラストということもあり、虹ヶ咲アニメにおける一つの集大成であったと思います。今までの話の中で多かれ少なかれ触れられてきた『違う価値観同士が共存し合える場所こそ理想(2話、3話)』、『ときには譲らない姿勢も大事(3話)』、『ステージの上では1人だけど支えてくれる人が近くにがいる(4話、6話、7話、8話)』といったテーマを決算して『仲間でライバル(9話)』という形に練り上げて昇華し、この作品のコンセプトが本格的に形を成した話であったと思います。ソロの集まりでありながらも同好会という形をとっている理由がこれで明確になりました。そういう意味では、今回当番を務めた果林はやはり大役だったと思います。
next虹ヶ咲
Cパートにて、せつ菜の提案で同好会は合宿に行くことになりました。合宿回はやはり「ラブライブ!」シリーズの伝統であるようです。
そして次回のタイトルは、『夏、始まる』。まだ春だったのかと突っ込みたくなりますが、予告では侑の方にスポットが当たっていました。合宿回であると同時に彼女の個人回でもあるのでしょうか。
次回も楽しみにしています。
それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
俗・自分とラブライブ!の歩み『10周年にして迎えた冬の時代編』
2020年で「ラブライブ!」シリーズは10周年を迎えました。Twitterの公式アカウントではだからといって特にそれに伴う動きがあったわけではないですが、「ラブライブ!」で役を演じてきた歴代キャストの皆様方は祝ってくださっており、やはり10年経つというのはめでたいことなのだと実感しました。
今回の記事は、2020年前半に「ラブライブ!」10周年を記念して投稿した『自分とラブライブ!の歩み』シリーズの続編という名目で書きます。ちなみに前シリーズはこちらです。
そんな「ラブライブ!」ですが、10周年であるはずの今年は冬の時代といっていいと思っています。今年といえば新型コロナウィルスが大流行したせいで「ラブライブ!」の看板コンテンツの一つであるキャストによるリアルライブがsaint snowのワンマンを除いてリモートでしか行えないことに加え、コンテンツ自体の問題点も増えた年であると考えています。それについて今回は書いていこうと思います。
目次
「スーパースター」Liella発足、しかし天の時は無慈悲
2020年初頭には、μ's、Aqours、虹ヶ咲に次ぐ4代目の看板コンテンツが新プロジェクトととして発足しました。しかも、最初からアニメ化が決まっていました。虹ヶ咲の方は外伝扱いで正式な3代目はこちらだろうという意見も度々見かけますが、今は虹ヶ咲の方が先にアニメをやっているため4代目扱いでいいでしょう。その内容は、一般公募で主演キャストのオーディションを行うという画期的ないものでした。プロジェクトの名前も「ラブライブ!スーパースター」に決まり、グループ名も投票の結果Liellaという名前になりました。
しかし、2020年は新型コロナウィルス大流行もあってオーディションの二次選考は延期状態に。その後もそちらの情報はファンサイドでは明らかになっておらず、プロジェクトを進めたくても進められない状況であることが伝わってきます。早くコロナが終息して、スムーズにプロジェクトを進められるようになることを願っています。
ラブライブ!史上初の追加メンバー登場
一方その頃、同じく現行の虹ヶ咲およびスクスタでは…
「ラブライブ!」史上初の主役グループへの追加メンバーとして、三船栞子というキャラクターが虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会に加入しました。しかし、自分はスクスタのストーリー展開や劇中での栞子の言動が気に入らなかったため、彼女のことは嫌いです。スクールアイドル同好会を家族問題の八つ当たりといってもおかしくない理由で潰そうとした支離滅裂さ、虹ヶ咲における自分の推しである優木せつ菜が生徒会長属性を栞子に奪われるなど、彼女にいいようにされていた中での加入であり、栞子の話をやるために既存の虹ヶ咲メンバーが蔑ろにされていため、自分がスクスタを引退する大きな原因の一つになりました。とはいっても、彼女にもファンはついており、シリーズ初の追加メンバーという点でもある種の盛り上がりイベントの一つであったことは間違いなく、その事実を今更否定のしようがないためこの記事の歴史的出来事としてカウントしておきます。
おそらく虹ヶ咲、というよりスクスタは昨今のソーシャルゲームのようにキャラをたくさん増やす商売を「ラブライブ!」でやりたいのだと自分は考えました。そこで、運営の意図は多分こうなのではないかという記事も過去に投稿しました。
三船栞子の加入について思ったことは過去の記事にも書いているため、そちらも参照していただけるとありがたく思います。
本当の問題はそこから先の出来事にありました。
そして事は20章へ
スクスタのストーリー20章が公開される頃には自分はスクスタを引退しており、多くを言えない部分もありますが、Twitterではトレンドに上がるくらい炎上していました。20章の内容はというと、ショウ・ランジュという理事長の娘が虹ヶ咲でスクールアイドル同好会とは別にスクールアイドル部なるものを作り、そこへ同好会メンバーである朝香果林、宮下愛が移籍したというものだそうです。栞子も移籍しましたが、ランジュのことをなんとかするためであるそうです。しかし、そのランジュのやり方が部室を乗っ取って魔改造したり、監視委員会なるものを作って同好会の活動を弾圧したりするなど横暴であり、その監視委員会があるせいで果林、愛の2人は損得勘定で同好会を離れたように見えてしまうなどキャラのイメージを損なう描写がなされ、主にそれが炎上に繋がったらしいです。これらは全て、栞子が加入するまでに『不自然な学園描写』、『キャラの扱いの偏り』などの負の要素を積み重ね続けていて20章でも同じことをした故に起こるべくして起こったことだと考えています。加えて同好会が潰れそうになる展開というのは第1章の同好会空中分解騒動や栞子の件も含めれば3回連続の出来事であり、そのうち2つは政治的権力を使った妨害工作というマイナスな対立であったため、そこも「ラブライブ!」としてどうなのかと思いました。
20章が更新される頃にはすでに虹ヶ咲のアニメが始まっており、今のファンの注目はそこに多く集まっているとは思いますが、その虹ヶ咲の母体がスクスタであるという事実だけは覆らないため、虹ヶ咲にとってもダメージは大きいと言えるでしょう。
アニガサキという最後の希望
リアルライブも思うように行えない、スクスタは荒れている、まさに「ラブライブ!」にとっては冬の時代といっていいくらいですが、希望はちゃんとありました。
虹ヶ咲のアニメ、アニガサキです。
本来はアニメ化の予定がなかった虹ヶ咲のテレビアニメということで、プロジェクトがファンに発表されたときは大盛り上がりでした。放送も2020年の10月に決まり、自分もとても楽しみにしていました。しかし、絵柄が前のシリーズから変わったことや、虹ヶ咲の原作にあたるスクスタのシナリオがゲームの引退を考えてしまうほどのものだったということもあって、少し不安もありました。しかし、蓋を開けてみると、とても面白いアニメだと思いました。
スクスタを含む今までの虹ヶ咲の媒体の小ネタを色々なところに散りばめて、キャラ描写もスクスタから大幅に洗練されたものとなり、とても面白いと思います。また、アニメ独自の解釈がたまに見られる部分もあり、視聴者を飽きさせない工夫ができていると思います。さらに、スクスタをやっていない、虹ヶ咲初見はだよという人も楽しめる内容です。
特に、第3話のせつ菜の描写については、詳しくはこちらの記事を見ていただければ良いのですが、せつ菜推しとして大変救われた気分になりました。
前作、前々作作のように続編があるかはわかりませんが、作られるといいなと思っています。ライブが思うようにできない中で、在宅で楽しめるメインコンテンツという意味でもこの冬の時代を支えてくれていると思います。
あとがき
今回は自分とラブライブ!の歩みシリーズの続編という名目で記事を書かせていただきました。現在コンテンツがこの調子で不安に思う点も多いですが、なんとか乗り切って欲しいなと思います。2021年はある意味コンテンツにとっては正念場となることでしょう。
それでは今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
『“理想のヒロイン”でいるために』虹ヶ咲アニメ第8話「しずくモノクローム」感想
虹ヶ咲のアニメも第8話を迎え、いよいよ後半戦に本格的に突入しました。今回の第8話は、1年生メンバーでスクールアイドル同好会と演劇部を兼部する桜坂しずくの個人回でした。
今回もメインライターの田中仁さんではなく、サブライターの人が話を書いていました。第8話の書いた人は大内珠帆さんといい、「八月のシンデレラナイン」や「魔王学院の不適合者」で田中仁さんのサブライターをしていた人です。
前置きはこのくらいにして、内容の振り返りと感想に移りたいと思います。
目次
内容の振り返り
今回の出たしはいつもより独特で、しずくの一人芝居らしきものから始まります。
ある街に一人の少女がいて、その少女はその街で1番の歌手になることを夢見ていました。その少女は『あなたの理想のヒロイン』になるために、今日も奮闘していました。しかし、そんな少女の願いを阻むかのように、少女と似た姿の仮面をつけた人物が黒装束を纏って現れます。この黒装束の人物のことを、以下より黒しずくと呼ぶことにします。
黒しずくは少女に『あなたの歌は誰にも届かない。』、『あなたは私だもの』と、まるでしずくの影の面や深層心理を象徴しているかのような言動をしています。そして、仮面の左目のデザインは涙を流しているかのようにも見えます。
舞台は現実に戻ります。スクールアイドル同好会の部室に、新聞部(おそらく)が写真撮影及びインタビューに来ていました。
しずくの元にも、新聞部の部員の一人が取材に来ており、しずくはそれに応対していました。しずくは新聞部員に『どんなスクールアイドルを目指しているか』と聞かれたときに、『みんなから愛されるスクールアイドルを“演じたい”です』と答えていました。そしてインタビューに答えているこの瞬間にも、まさに理想のスクールアイドルを演じているとのことです。
さらに、しずくには演劇部の方でも自分が主役を務める舞台の発表会が控えており、そのことについて聞かれたときも『楽しみにしていてください』と嬉々として答えていました。その発表会はスクフェスのモブライブ勢力の一つである藤黄学園との合同であり、ここでもまたモブライブネタが回収されました。
しかし、演劇部の部室にて、しずくは部長から主役の降板を言い渡されてしまいます。理由はしずくがその主役に合わないからであるそうです。役柄が合わないという理由はあったもののオーディションで役を勝ち取り、そこから本番に向けて練習を積み重ねていたであろうことを考えれてみれば理不尽な気がします。演劇部の部長はとても厳しくシビアな人物であるみたいです。
部長としては、その役は『自分をさらけ出す感じで演じて欲しかった』とのことで、しずくにはそれができていないと判断したようです。それでも主役を諦めきれないしずくはもう一度チャンスをくださいと部長に頼みます。
オープニング後のシーンにて、ある日かすみがしずくが一人で演劇の自主練をしているところを目撃します。その様子をかすみは複雑そうに見ていました。
同好会の部室では、先の新聞部のインタビュー記事が出されたことが侑からみんなに知らされました。何気に、主役スクールアイドル校内新聞が校内新聞に取り上げられる展開はシリーズでも初めてのことであると思います。
その記事にはしずくの舞台のことも書かれていました。
主役を下ろされてしまったしずくはその記事を見て焦ります。その様子を見ていたかすみは璃奈にそのことを相談しました。
璃奈のクラスメイトから、かすみはしずくが主役を降ろされてしまったことを聞きます。そこでかすみは、落ち込んでいるしずくを励まそうと、璃奈とともに動きました。
しずくを捕まえるときのシーンで璃奈ちゃんボードの新作を使うところがまた面白いです。
しずく、かすみ、璃奈の1年生組は、第7話で彼方のライブシーンにも使われたヴィーナスフォートの店に行きます。そこでパンケーキを食べたり、いろいろな店を回ったりしました。ヴィーナスフォートのマウンテンパンケーキはかすみが5回食べに行って5回とも完食できなかったそうで、食品ロスが悔やまれます。この日3人で行った時はなんとか完食できました。
道中にて、しずくがあるポスターを目撃します。そこには英語で『オードリー』と書かれていました。当然お笑いコンビの方ではなく、しずくの持ち歌の一つのモデルにもなったオードリー・ヘップバーンのことだと思われます。
同じくポスターを見ていた璃奈が、それが好きなのかとしずくに聞きます。するとしずくは、昔から古い映画や小説が好きだけど、そういう子は自分以外にはおらず、変な子だと思われたくないからお芝居をするようになったと話しました。そして、『芝居をしているときは自分が桜坂しずくであることを忘れられる』とまで言いました。
浮かない顔をしていたところをかすみに見つかり、主役を降ろされたならまたオーディションに受かればいいと励まされますが、そのまま2人に別れを告げて帰ってしまいました。
ここでまたしずくの心の世界の描写がなされます。しずくは再び黒しずくと対話していました。
黒しずくはしずくが本当の自分を見せるのを怖がっていることを指摘します。しずくの方はそんなことはできないと拒むも、黒しずくは『私は歌いたい』と本音を言います。そして、そのためには自分を受け入れてほしいと迫るま、しずくはそれを拒み、やはり自分をさらけ出すなんてできないと落ち込みました。
上記のように、しずくは周囲から変な目で見られたくないがために演技をしながら生きてきたことが伺えます。そして、そのようにしか振る舞えない自分のことを嫌ってもいました。思えば第4話で同好会はソロでやろうという話になったときに『自分1人にステージを盛り上げられる魅力を出せるのか』という旨の発言をしずく自身がしていたことも本来の自分に対する自信の無さからくる発言であり、今回の8話に向けての伏線であったと考えられます。しかし、演劇部に入りながらもスクールアイドル同好会を兼部しているしずくには、純粋に自分を表現してみたいという気持ちもないわけではなかったと思います。黒しずくはそんなしずくの内なる願いを代弁している存在であるといえます。
翌日のお昼の時間にて、かすみがしずくに連絡してみたところ、返事は返ってきませんでした。かすみも璃奈も、しずくのことを心配しました。
そこで璃奈が、『落ち込んでいるしずくちゃんもしずくちゃんなんだと思う』とかすみを励まし、自分自身も今のしずくと同じように自分のことが嫌だったことがあるとしずくの心境に理解を示していました。
璃奈には愛がいたように、今のしずくにはかすみがいることをかすみに気づかせ、それに勇気づけられたかすみはしずくを説得に行きました。第6話にて、自分らしいやり方で自分をスクールアイドルの世界に適合させ、璃奈ちゃんボードという仮面をつけることでこそ本音で語り合えるようになった璃奈だからこそ、この後のしずくの再起に一役買うことができたのだと思います。
しずくを探していたかすみは、教室で1人発生練習を諳んじるしずくを見つけました。かすみと再会したしずくは、璃奈にも話した自分が演劇を始めた背景をかすみにも打ち明けました。その上で、自分をさらけ出すことが役者にもスクールアイドルにも必要だというのなら、自分はどちらにもなれないと嘆きます。そこでかすみは『何甘っちょろいこと言ってんだ』としずくに寸止めパンチからのデコピンをお見舞いし、『嫌われるからなんだ』、『かすみんだってこんなにかわいいのに褒めてくれない人だってたくさんいる』、『しず子にだってかわいいと言ってもらえたことがない』と叫びました。その後、しずくに自分はかわいいかと尋ねる、『かわいいんじゃないかな』と答えてもらえました。
かすみの発言は、スクールアイドルという表現者の1人であるが故に悩んでいることや難しいと感じていることが滲み出ているように思います。第2話の感想でも触れましたが、かすみは自分はの自信に溢れていていかにも『私には何も怖くない』、『私ってかわいいでしょ?』といった感じの人柄に見えて周りの反応を無視しない態度や他人の気持ちを気遣う姿勢を持っているところが素晴らしいと思います。これもある意味優れた表現者には必要な心構えです。それでも表現者としての道を進み続けたいのならば、自分が信じた道を貫き、自分の『かわいい』を発信していかなければならないという強さも感じました。
そして、『頑固で意地っ張りで、自分に自信がない』などといったしずくの性質を全て受け入れ、その上で『桜坂しずくのことが大好きだから』、『しず子のことが好きって言ってくれる人も絶対いるから』としずくを強く励ましました。
その発言を受けて、しずくは再起しました。一連のやりとりは流石のかすみも恥ずかしかったようで、『かすみんにここまで言わせたんだから再オーディションは受かりなさい』と言って教室から去って行きました。
一連のやりとりを終えたしずくの表情は、憑き物が落ちたかのように晴れやかなものでした。
藤黄学園との合同発表会の当日、虹ヶ咲学園サイドの演目のポスターを見ると……
『主演 桜坂しずく』の文字とともに、彼女がの写真がポスターにありました。
舞台は、スクールアイドル同好会のみんなも見にきていました。特にかすみは、ほかのみんなに比べて緊張した様子で見ていました。
演目の内容は、ある街でその街1番の歌手を目指す少女の話です。話の流れは、少女の歌の評判が悪いからと、劇場から追い出されてしまうなど、今回のしずくの境遇と重なります。
劇場を追い出されたことで大いに落ち込み、それでもなお歌を諦めきれなかった少女の元にしずくの心象風景にいた黒しずくに似た人物が実際の演劇の登場人物の1人として現れました。
黒しずく似の女性もまた、歌を歌うことを諦めておらず、そのために自分を受け入れて欲しい、本当の自分をさらけ出したいと少女に迫ります。少女はずっと見て見ぬふりをしてきた自分の影の一面=黒しずくに対して謝り、これからも歌い続けるために彼女を受け入れる決意をします。このとき、演技をしていないときのしずく自身も、黒しずくを受け入れる心構えができたように思います。
黒と白、表の気持ちと深層心理が一つになるとき、少女は再び立ち上がり、お待ちかねのライブシーンがスタートします。
今回しずくが歌った曲は『solitude rain』、しずくの今までの持ち歌で例えるなら、『オードリー』に近いアップテンポな曲です。ライブシーンの中で見られる雨の演出も、しずくが抱えていた葛藤や自己嫌悪の念を綺麗に洗い流してくれているみたいで素晴らしかったと思います。
また、しずくのモブライブ時代の服装をリスペクトしたカットや、藤丸さんの4コマ漫画をリスペクトしたカットがあった部分も好感が持てるポイントです。
藤丸さんがまたも喜んでくれていました。
坦々麺ネタが記憶に新しいですが、大正浪漫しずくも懐かしかったです。当時、全員を記憶しきれてなかったんですが、しずくちゃんはあの衣装で覚えました。
— 藤丸:191227単行本『ユアソング』 (@fujimaru_24) 2020年11月21日
さりげなくオフィーリアも映っていました。
さらに、画像ではわかりにくいですが、降り注いでいた雨が静止する演出も幻想的でした。そこは是非ともYouTubeで公開されているMVをご覧ください。
このようにして、しずくの舞台は無事に幕を引きました。演目が終わった後に拍手をするかすみも可愛らしいです。
舞台袖にて、黒しずくがついに素顔を見せます。舞台における黒しずくの正体は演劇部の部長でした。
舞台が終わった後、しずくは再び新聞部からインタビューを受けていました。そこで『スクールアイドルとして、役者として一言はありますか』と言われたときに、『本当の私を見てください』と笑顔で答えていました。演技をしている自分もまた自分であるということの表れであると思います。
感想・総括
今回の話は、しずくが本当の自分をさらけ出した表現ができるようになるまでの話でした。演技をしているときの自分も、していないときの自分も紛れもない『桜坂しずく』なのであると思いました。どんなに自分のことが嫌いでも、それを受け入れてこそ前に進める、自分をさらけ出すということは、自分を受け入れ肯定するところから始まるというメッセージが込められていたように思います。だから、別にしずく自身が演じることをやめたわけではない、しずくが演じることを持ち味とするのを否定しているわけではないと考えています。
また、今回の第8話はしずくとかすみを通して、表現者としてのスクールアイドルというものに踏み込んだ話でもあったと思います。内容の振り返りでも触れましたが、かすみがしずくを再起させるときの一連の台詞にはまさに表現者であるが故に悩んでいることや難しいと感じている部分をそれこそさらけ出していたと感じています。このようにして、各々違うスクールアイドル像を持っているメンバーが様々な形でスクールアイドルというものに切り込んでいくところが虹ヶ咲の面白い部分であると思います。
それから、虹ヶ咲はオムニバス形式をとっていると感じますが、自身のかわいいを追求するだけでなく他者への気配りもできるかすみ、自分に合った戦い方で成長できた璃奈といった具合にそれぞれの個人回で成長した部分がこうして違うメンバーの個人回で活かされているところも好感が持てるポイントです。
next虹ヶ咲
物語は次回へと進みます。同好会のアイドルキャラの個人回シリーズでトリを務めるのはセクシーお姉さん系スクールアイドルの朝香果林です。
その回のタイトルはなんと…
『仲間でライバル』。
ここにきて虹ヶ咲のコンセプトの核心に触れる話をやるそうです。しかもその話が果林の個人回に回されるとなると、序盤に侑と歩夢をスクールアイドルの世界に引き込んだせつ菜とは別の意味で、果林はきっとアニメの中で大役中の大役を務めることになるでしょう。次回も楽しみにしています。
それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
『熱く優しい姉妹愛』虹ヶ咲アニメ第7話「ハルカカナタ」感想
虹ヶ咲のアニメも第7話に突入し、物語は後半戦に入ります。
今回の第7話は、3年生メンバー近江彼方の個人回でした。
今回の話は、前回の璃奈回とは別の意味で虹ヶ咲ならではの話だと思いました。また、今回は第5話と同様にシリーズ構成の田中仁さんではなくサブライターの人が担当しました。
TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第7話の脚本を担当させていただきました。彼方ちゃん回です。どうぞよろしくお願いいたします!
— 平林佐和子 (@sui_sui_sei) 2020年11月14日
それでは前置きはこのくらいにして、本編の振り返りと感想に進みたいと思います。
目次
内容の振り返り
彼方の家は、控えめに言っても経済的に豊かであるとはいえない環境であり、彼方が学業の傍らでアルバイトをして家計を支えたり、母が忙しいので自ら妹のために料理を作ったりしながら生活していました。
彼方の妹・遥も、東雲学院でスクールアイドルをやっており、彼方は家庭のことや学業、それから自身のスクールアイドル活動を頑張りつつ彼女の夢も応援していました。
ある日の晩御飯、いつも頑張っている姉の姿を少し不安そうに見ていた遥は『お姉ちゃんの同好会を見学したい』と言います。彼方としては可愛い妹が自分の活動に興味を持ってくれることはとても嬉しく、快く承諾してくれました。
翌日、彼方は妹・遥を連れて同好会にやってきました。
冒頭でも述べたように、遥は東雲学院のスクールアイドルであり、スクールアイドル好きの侑もリサーチ済みでした。しかもその東雲学院のスクールアイドル部といえば、果林が『知名度はうちの同好会と天と地ほどの差』というくらいとても有名らしく、遥はその有名なスクールアイドル部の期待の新星であり、そういった意味でも侑は遥に会えることを喜んでいました。
こちらのカットでは同じく東雲学院に所属するスクフェスのモブライブである支倉かさねとクリスティーナが映っていました。
東雲学院の知名度は伊達ではなく、同好会(自称)部長のかすみは『敵情視察だ』と警戒していました。そこで果林が『敵じゃないでしょ』となだめるところも『スクールアイドルはライバルであっても敵ではない』という理念の表れとして好感が持てるポイントなのですが、かすみは頑として譲りませんでした。
見学に来た遥は、まず練習風景を見せてもらうことにしました。彼方はというと、可愛い妹にいいところを見せようと必死です。
ランニングのシーンでは、お姉ちゃんがあんなに走ってると遥が驚いており、練習以外で普段は運動をしないことがよくわかりました。
柔軟の方はあまり向上していないようで、かなり苦戦していました。そのとき、第4話のときのようなここだけ見るといかがわしいシーンに見えるカットを再び披露してくれました。
その隣で柔軟をやっている璃奈は人並みに上半身を前に倒せるようになり、成長を感じます。
続いて腕立て伏せのシーンに入りますが、ここでもまたいかがわしいシーンに見えるカットを披露してくれました。今度は柔軟のときなんてものではなく、左肩をはだけさせている服装をしており、汗をかいていて目線も上によっていることもあってますますグレードアップ(?)しています。
バランスボールを使ったトレーニングのときも苦戦しており、またも倒れ込んでしまいました。そのときの表情もなかなか素晴らしいです。
朝香果林が虹ヶ咲のお色気担当なら、彼方は無自覚にその片鱗を見せている『隠れお色気担当』といったところでしょうか。少しアブナイ話はここまでにして次に進みます。
練習がひと段落したところで、部室でお菓子やお茶をたしなむシーンもありました。
音楽を題材にしたアニメで、部室でお茶をするシーンとなると、「けいおん!」を連想します。
お茶のシーンにて、遥は虹ヶ咲の同好会のことを『それぞれの個性に合った練習メニューもやっていて面白い』と評していました。遥のいう通り、そこも虹ヶ咲の面白いところだと思います。
練習の疲れもあり、お茶の後で気が抜けたのか、彼方は寝てしまいました。遥は同好会のメンバーに、『お姉ちゃんはいつもこんな感じで寝ているのか』と聞いたところ、しずくは『練習中もよく寝る』、愛やエマが『時々みんなが膝枕をやってあげている』とまで言いました。そのことを聞いた遥は、何か思うところがある様子でした。
そのまま彼方は夕方まで寝ており、目覚めたときは『遥ちゃんにカッコ悪いところをみせちゃった』と焦っていました。
そこで遥は、姉に対しての胸の内を明かします。遥は『お母さんが忙しい中で、家庭のことやアルバイトを頑張っている傍らでスクールアイドルをやっていては、このままではお姉ちゃんは体を壊して倒れてしまうのではないか』と心配していました。そして『お姉ちゃんには好きなことをちゃんと続けてほしい』と思っており、これ以上は姉に無理をさせたくないがために、自分はスクールアイドルを辞めようとしていました。
彼方は妹がやりたいことをできなくなるのは嫌であるためにそれを止めようとし、自分は無理なんてしていないとなだめようとしますが、『お姉ちゃんのわからずや』と逃げられてしまいます。部室から出て行った遥を侑が追いかけ、『本当にそれでいいの?』と問いかけるも、遥はそれでいいとそのまま帰ってしまいました。
翌日、昼食にてみんなが彼方の相談に乗っていました。遥の同好会見学の日の晩御飯にて、遥は『次回のライブが私の出る最後のライブになるから絶対来て』と姉に言っていました。
彼方はそんなことになるくらいなら自分が辞めようと言い出そうとしたところ、エマに『本当にそれを望んでいるの?』と聞かれ、違うと答えました。彼方としては、自分が好きなスクールアイドルとしての活動を続けたいと思っており、同時に妹・遥にも自分の夢を大切にしてほしいと考えていました。彼方はそんな自分のことを『わがままだ』と言いましたが、みんな『そんなことはない』、『二人とも似たもの姉妹だ』といった具合に彼方を励ましてくれました。『自分の夢も大切にしたいけど家族にも自分のやりたいことを大切にしてほしい』というのは年長者ほど考えることであり、そんな彼方自身も家族のことをとても大事にしていることが伝わってきました。それを聞いた侑が、『遥ちゃんはもう守ってもらうだけの人じゃないと思うよ』と彼方を励ましました。遥だって、お姉ちゃんのために何かしたいからこそ考えてしまうのです。侑の説得を聞き、ここで彼方自身もあることを決めました。
東雲学院スクールアイドル部のライブ当日、同好会メンバーもそこに集まっていました。
実はこの会場、かすみ、璃奈、彼方、エマの4人からなるユニット・QU4RTZの1stシングルの背景となったヴィーナスフォートです。
さらにここで、遥と同じく東雲学院のメンバーであるかさねとクリスティーナも声付きで登場しました。
スクフェスのネタもこうして回収しているところは本当に愛を感じます。
実は東雲学院のライブの前に、ある人物のステージが用意されていました。遥が舞台の上を見上げると………
そのにはステージ衣装に身を包んだ姉・彼方の姿がありました。
そのままお待ちかねのライブシーンに突入します。
今回披露された曲は『Butterfly』、「デジモンアドベンチャー」ではありません。彼方には珍しくややアップテンポな曲ですが、『眠れる森にいきたいな』、『My own fairy tale』、『Märchen star』で培われてきた彼方曲のメルヘンチックで優しいテイストを伴奏で表現できていた良曲でした。
さらに、『Butterfly』のライブシーンはダンスパートが映ることは少なく、ボーカロイド曲のMVを思わせるファンタジックな映像が流れていました。
ボーカロイド曲だけでなく、シャフトのアニメでよく見かけるような演出であるとも思いました。それから、この映像にてモブライブの絵を担当していた藤丸さんの4コマ時代のイラストを意識した絵も用意されており、尚更スタッフの作品愛を感じました。
アニメスタッフさんへ pic.twitter.com/vgO7H5515G
— 藤丸:191227単行本『ユアソング』 (@fujimaru_24) 2020年11月14日
シャフト的な演出が彼方の曲の雰囲気にマッチングしており、大変良きライブシーンでした。さらにこのライブ自体も、突然乱入してきた感じではなくあらかじめ用意されていたものであったと説明があった部分も何気に高評価ポイントです。ライブ中に遥が映るカットがあった部分も好感が持てます。
彼方のライブの後、彼方は妹・遥に自身の胸の内を明かします。そして、お互いの好きなことをこれからも続けていくために姉妹二人で助け合っていくことを決めました。彼方は遥にも家のことを手伝ってほしいと言い、そこから遥も家事に少しずつ参加するようになりました。卵焼きを作るシーンで四苦八苦している様子も微笑ましいです。
彼方自身も、遥がお手伝いをしてくれるようになってからアルバイトの作業効率が上がったみたいです。
それから、彼方と遥の母についてですが『娘二人にこんな大変な思いをさせて…』と思う視聴者もおそらくいると思います。そこで、第7話終盤のカットで二人の母からの置き手紙がありました。そのことから、決して母と娘達の絆は解けてはいない、母も二人のことを想っているということが伝わってきました。
感想・総括
今回は彼方の家庭事情や彼方の年長者ならではの悩みに踏み込み、彼方と遥の姉妹愛を丁寧に描き切った回でした。そしてその姉妹愛に心打たれた30分でもありました。
今回のお話は、自分達の生活を守りながら好きなことを続けることの難しさを説いていました。それと同時に、自分の生活を守ることも、好きなことを続けることも両方同じくらい大切なことであり、そのために助け合っていく必要がある、そうすることも好きなことを続けるための努力のうちだということも伝えていた回であったように思います。この話も、グループではなくソロを主体とする虹ヶ咲だからやりやすかった回であったと思います。また、家庭のお手伝いやアルバイトもそうですが、側からみれば辛そうでも本人は意外と苦にしていないことも多いのかなとも思いました。近くに頑張っている人がいるからこそ、その人のために自分も頑張れるという家族愛に満ちた近江彼方のお話でした。
また、彼方も遥もモブライブ出身のキャラであるためか、今回はさらにその辺のネタの回収が充実していました。相変わらずアニメスタッフは愛に満ちていてとても信用できます。
その他にも、彼方のライブシーンの後で、彼方は『スクールアイドルとしてはライバルだよ』と遥に言っていました。虹ヶ咲の内部の出来事でこそないものの、まさしく『仲間でライバル』というこの作品のコンセプトを姉妹二人で体現してみせた瞬間でもありました。
next虹ヶ咲
物語は次回へ移ります。同好会の部室で台本を読むしずく、その表情は物憂げに感じられ、高校一年生とは思えない凛々しさを湛えています。
予告を見る感じだと、演劇部の部長と一悶着あるみたいです。
タイトルも『しずく、モノクローム』と、何かシリアスの予感がします。次回も楽しみです。
それでは今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
『一緒じゃなくて大丈夫、私スタイルコミュニケーション』虹ヶ咲アニメ第6話「笑顔のカタチ(≧∇≦)」感想
虹ヶ咲アニメも第6話まで放送され、全13話予定のうちの半分まで到達しました。
今回の第6話は、ボードを顔に付けて歌うスクールアイドル、天王寺璃奈の個人回でした。
自分は虹ヶ咲ではせつ菜に次いで璃奈が好きなキャラクターです。そのため、今回の話もとても楽しみにしていました。
それでは前置きはこれくらいにして、内容の振り返りと感想に移ります。
目次
内容の振り返り
物語は璃奈のモノローグから。彼女は表情がわかりづらく、そのために他人に思いを伝えることが難しいと思っていました。クラスメイトに話しかけてみても、その後のアクションを躊躇ってしまいます。自分の姿を反射した窓ガラスに表情を描きたすこともしていました。口角の動き一つでもこんなに違うのに…みたいなことを考えていたのでしょうか。
ある日、同じ情報処理学科の先輩である宮下愛と出会い、そこから転期が訪れます。
『元気がなさそうだから』と璃奈に話しかけてきた愛は、璃奈が持っているジョイポリスの割引券に興味津々。璃奈はそんな愛のことを最初は怖いと思い、『友達と一緒に行ってください』と割引券を譲ろうとします。そこで愛は、『だったら一緒に行こう』と言いそこから二人の交流が始まります。璃奈にとってはおそらく、長く付き合える友人ができた初めての瞬間だったと思います。時は流れ、スクールアイドル同好会に入って新たな仲間が大勢できた璃奈は、もっと多くの人と繋がりたいと思うようになりました。
オープニング明けのシーンにて。璃奈と愛は侑と歩夢を連れて、ジョイポリスでVRアトラクションで遊んでいました。
このシーンは、スクスタリリース前に行われていた虹ヶ咲の声優さんのウルトラゲームズの企画にあったVRゲームの対戦を彷彿とさせます。さらに、このゲームで璃奈達が戦っていたクリーチャーがこちら。
ちょぼらうにょぽみ氏のファミ通app4コマに登場した宇宙人のネタを、ここで拾っていました。
相変わらず小ネタの使い方が上手いなと思います。
同じ頃、璃奈のクラスメイト3人もゲームセンターに来ており、アトラクションで遊び終えた璃奈達に会いました。
彼女達はスクールアイドル同好会のファンでもあり、その場に居合わせた愛と歩夢を見て喜んでいました。クラスメイト達は璃奈の自己紹介ビデオも見ていたらしく、そこでは璃奈自身をモチーフにしたキャラクターが動いて喋っていたそうです。
璃奈のクラスメイト達から、このジョイポリスにはライブスペースがあり、そこではスクールアイドルもライブをやっていることがあると聞きました。ここでもスクフェスのモブライブのネタが拾われていましたが、東雲学院のスクールアイドルもそこを使ったそうです。
ジョイポリスのライブスペースの話をクラスメイトから聞いた璃奈はクラスメイトとの距離を縮めるべく、そこでライブをやることを決心します。このときの璃奈の表情の動きはまだわかりづらいですが、その目つきからは何か心を決めたことが伺えました。
自己紹介はキャラに頼ってしまい、あれは本当の自分じゃないからということで、だからこそライブがしたいという気持ちがあったみたいです。璃奈のライブに向けて、同好会でも彼女のライブに向けた準備が始まりました。部長であるかすみは、璃奈がいきなりライブをすると言ったことに驚いていました。ですが、みんな璃奈のライブを楽しみにしています。璃奈自身も、ライブを行えることが嬉しい様子でした。
練習風景にて、MCの練習をしている歩夢、かすみの様子もありました。MCを練習する様子を見ていた侑は、かすみの背中を押し、せつ菜の心を開いたときのイケメンぶりからは程遠く、現地ライブで興奮するファンのような言葉遣いになっていました。璃奈自身も、MCについてはできないからやらないはなしと意気込みを述べていました。
その他の練習風景では、璃奈が少しずつ柔軟体操もできるようになっていたり、ステップがいい感じに踏めるようになっていたりすふ様子が見られました。また、しずくによる(おそらく)演劇部式のボイストレーニングの様子もありました。
練習からの帰りに、璃奈が作ったライブ用の映像をチェックするために侑、歩夢、璃奈の3人は璃奈の家にお邪魔しました。璃奈の家はとても豪勢なマンションで、鍵もスマホで開く、ドアの前に誰がいるかもスマホの画面でわかるというまさにスマートハウスでした。
璃奈と家族が住んでいる部屋はというと、璃奈のパソコンがあり、そこにはパソコンピアノを始めとする様々な機器が置いてありました。ピアノまである辺り、おそらく作曲も璃奈自身の手でできると思われます。
色々なものが揃っており、充実していると思った一方で、生活感が無いという印象も受けました。璃奈の両親は彼女が幼い頃からとても忙しく、そのため璃奈は昔から一人でできる遊びを多くやっていたそうです。
次の日、いつも通り同好会で練習をした後、せつ菜、かすみと一緒にいるところをクラスメイトに声をかけられました。クラスメイト達は先日璃奈がやるといったライブを楽しみにしていました。そこで璃奈自身も何か話しかけようとしたところ…
窓ガラスに写った自分の顔を見て、表情が作れていないことに再び気づいてしまいます。自分でライブをやりたいと決心したところから始まり、普段の練習も少しずつこなせるようになり自信が付いてきたところで、表情のことはどうやっても克服できそうもないと自信を失ってしまいました。それに悲しんだ璃奈は、逃げるように家へ走って帰り、翌日の学校は休んでしまいました。
学校を休んだ璃奈のことを、同好会のみんなは心配していました。ジョイポリスでのライブも、明日に迫っている中で、どうすればいいかみんなで考えました。
そこで愛が、璃奈の家に行くことにしました。他のメンバーも仲間のピンチを放っておけず、同好会全員で璃奈の家に行くことになりました。
璃奈の部屋に上がった9人は、璃奈が学校と練習に来なかった理由について聞きました。このとき璃奈はダンボール箱の中に隠れていました。璃奈は小さい頃から表情で気持ちを伝えることが苦手で、楽しいときでも怒っているなどと誤解をされてきたそうです。そのせいで過去の人間関係もうまくいきませんでした。高校に上がったときに愛やスクールアイドルに出会って、これなら自分も変われると思っていましたが、昨日の出来事で再び自信をなくし、『自分はみんなと繋がることはできない』と涙しました。
それを聞いた侑は、『ありがとう、璃奈ちゃんの気持ちを聞かせてくれて』と彼女を励まします。それを皮切りに、機械に強いところ、諦めないところ、動物に優しいところといった璃奈のいいところをたくさん挙げていきます。愛とかすみも『できないところはできるところでカバーすればいい』、『ダメなところも武器にしてこそ一人前のアイドルだよ』と璃奈を励まします。このときに愛がダンボール越しに璃奈を抱きしめますが、どんな形でも璃奈の気持ちはちゃんと伝わっているということを表している良き演出であったと思います。
一連のやりとりで自信を取り戻した璃奈は、ダンボールを被ったまま立ち上がり、『これだ!』と何かを思いつき、これがクライマックスのライブシーンへと繋がっていきます。
そしてついに迎えたジョイポリスのライブ。璃奈はヘッドホンと液晶画面が合体した変わった被り物を身につけてライブに臨むようです。
これこそまさしく、璃奈ちゃんボード誕生の瞬間であり、この発明はダンボール越しにみんなと会話をしていたところから着想を得たものでした。
ライブパフォーマンス開始前は、璃奈が自己紹介ビデオのときに使っていたキャラクターがオーディエンスをお出迎えしてくれます。
このキャラクター、実は璃奈ちゃんボードの顔にそっくりで、この後のライブにおける違和感を軽減してくれる役割も担っています。
ロボットアニメを思わせる登場の仕方に加え、みんなと璃奈ちゃんボードのお陰で自信を取り戻した璃奈の新曲がついに披露されます。
今回璃奈が歌った曲は『ツナガルコネクト』。『ドキピポ ☆エモーション』の頃から璃奈の定番であるテクノポップやボーカロイド曲を思わせるアップテンポな曲です。作曲はボカロPとしても有名なDECO*27さん、かすみの『無敵級*ビリーバー』に続き、「ラブライブ!」シリーズで作曲するのは2回目となります。また、『無敵級』よりも『ツナガルコネクト』の方はよりボーカロイドっぽいとも思いました。
今回の曲のステージはいつもの心象風景ではなく、璃奈自身が機械に強いという面もあり、彼女が演出を決め作り上げたステージなため、心の中でそう見えるのではなく実際にそう見えるという設定となっており、第5話までのライブシーンとはまた一味違います。また、第1話のせつ菜のライブ以来、ちゃんとしたステージで行われたライブでもあります。璃奈ちゃんボードも、3Dモデルでとても映えており良いと思いました。
ライブシーンにて、璃奈の口元が一瞬だけ映るカットも素晴らしいです。
ライブの次の日、璃奈はクラスメイトに声をかけられ、ライブの感想をたくさん言いたいからお昼ご飯を一緒してもいいかと聞かれます。もう他人と仲良くできないことを恐れることはありません。紙製の璃奈ちゃんボードを掲げて、『にっこりん』とOKしてくれました。
感想・総括
今回は璃奈ちゃんボード制作秘話でもあり、アニメが放送される前はその話を現在の時間軸でやることは予想していませんでした。だからこそ、璃奈ちゃんボードの重要性がより伝わってきたと思います。自信を失っても自らの得意分野を武器にして立ち上がる璃奈の姿には勇気づけられます。
原作スクスタでは、璃奈ちゃんボードを外すことで璃奈の成長を描くという手法が取られましたが、今回のアニメ第6話では反対に璃奈ちゃんボードを作り、身につけることで璃奈の殻を破るというスクスタとは真逆のアプローチが行われました。そこについても、璃奈ちゃんボードをつけることを感情表現が苦手であるがための『逃げ』の手段として使わず、璃奈が多くの人と繋がるための手段、そして彼女自身の個性として描いたことは見事であるといえます。ある意味今回の話が今のところの放送分でアニメ時空ならではのオリジナリティが最も出た部分であると思います。
また、璃奈ちゃんボードの製作とそれを用いたライブパフォーマンスは、自分自身をスクールアイドルの世界に上手く適合させていくことも一つの戦い方だともいえる点であるとも思います。かすみやせつ菜、愛みたいに『アイドルといえばこうだ』と色んな人がイメージする能力や適性を持った人も確かに魅力的です。それに対して璃奈は彼女達とは対照的に感情表現が苦手です。しかし、その愛が言うように苦手なことは得意なことでカバーすれば良いといった具合に、機械に強い璃奈は璃奈ちゃんボードでパフォーマンスをする道を選びました。
自分自身をある分野に適合させていくというのは決してその分野を極めるために個性やアイデンティティを捨てたり、無理に苦手なことをしたりするということではなく、むしろその分野で自分の個性や得意なことを活かす道を探したり、その得意なことで苦手な部分をカバーしたりすることなのかもしれないと今回の第6話で思いました。それは決して、適性や資質といった概念では簡単に測れない部分であるとも思います。そういった意味では、スクールアイドルに正解はないとした宮下愛の個人回である第4話に対するまた一つのアンサーなのかなとも思いました。ただし、璃奈自身は苦手分野の全てを遠ざけていたわけではなく、(おそらく)苦手だった柔軟やダンスなどの運動もライブができる水準までできるようにしていました。
この展開は璃奈だから、そして、ソロがメインで個々の目指すスクールアイドル像が違っている虹ヶ咲だからこそできた展開だと切実に思います。
next虹ヶ咲
物語は次回に移ります。次回予告ではなんと、3年生メンバーの近江彼方が妹の遥を連れている様子が見られました。
モブライブ出身のメンバーで虹ヶ咲に入ったキャラ以外で本格的にアニメデビューを果たしたのは遥が初となります。次回も楽しみにしています。
それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
『となりのひとを想えたとき』虹ヶ咲アニメ第5話「今しかできないことを」感想
虹ヶ咲アニメも第5話に突入し、もうじき1クールのうちの半分に到達します。第4話の愛加入回から続く完全オリジナルストーリー、今回の第5話はスイスからやってきたスクールアイドル、エマ・ヴェルデの個人回にして朝香果林の加入回でした。
今回はシリーズ構成の田中仁さんではなく、サブライターの伊藤睦美さんが話を書きました。伊藤さんは田中さんのサブでよく見かける人ですが、「ラブライブ!」シリーズの脚本家でサブライターを起用するのは珍しいことです。それから、「ラブライブ!」のアニメで女性の脚本家が参加したことも珍しいです。今回の話は今までの話に比べ、より日常回してるなという印象を受けました。
それでは、内容の振り返りと感想に入ります。
目次
内容の振り返り
始めはエマの回想から。故郷スイスから虹ヶ咲学園にやってきたエマ、彼女はスクールアイドルをやるために、はるばる日本まで渡ってきました。
学校の入り口にて、朝香果林と初めて出会い、それから2人はよく一緒にご飯を食べるなどして親友となりました。果林は騒がしいのが苦手なようで、それまでは一人で食事をしていました。
その食事のシーンですが、エマは日本に来たら食べてみたかったと、どんぶり一杯の卵かけご飯に醤油をかけて頬張っていました。同じく田中仁さんが手掛けていた「ゆるキャン△」ばりの飯テロです。
このとき使われたどんぶりも商品化するみたいです。
【🌈虹ヶ咲学園購買部🌈】
— ラブライブ!シリーズ公式 (@LoveLive_staff) 2020年10月31日
TVアニメと連動する公式通販サイトにて、メモリアルアイテムの予約受付がスタート🎊🎊
第5話のアイテムは……「ボーノ!をお届け♪虹ヶ咲学園どんぶり」です🎶
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食事の最中に、果林の元に話しかけてきた女子が2名、彼女達は読者モデルの仕事をしている果林のファンで、よく雑誌で彼女を見かけるそうです。ここは果林の仕事の話を上手く活かしている描写だと思いました。果林自身も、そちらの方面ではかなり有名なのかなとも思いました。
エマは果林に自分はスクールアイドルをやるために日本に来たと打ち明け、お互いにスクールアイドルも読者モデルも頑張ろうと励まし合いました。
次にオープニング明けのシーン。エマの大食いはアニメでも健在でした。
同好会の部室のシーンに移ると、各メンバーがそれぞれのプロモーションビデオを作っていました。ここでは情報系の分野に強い璃奈が活躍していました。ここでせつ菜の『DIVE』のライブシーンがパソコンの画面に映っていましたが、3話と同じものでした。実はこれも璃奈の編集によるもので、侑からアイデアをもらってできたそうです。侑の心象風景を映像化できるということは、他のメンバーのものも作っているということでしょうか。
部室のシーンにて、エマがスクールアイドルをやるために日本にやってきた背景も明かされました。どうやらスイスにいた頃に、日本のスクールアイドルの曲を聴いて元気付けられたため、自分もそれを目指そうと思ったみたいです。また、スイスにいた頃は家で飼っているヤギ達の前でよく歌を歌っていたそうです。
この回想シーンでエマが着ていた服はスクフェスのモブライブ時代のもので、『まさかそこのネタも拾ってくるのか』と感心しました。
初期デザインも使って貰えて嬉しかったです。アルプスのイメージなんかも、ここまで一貫して変わってなくて、ただただ嬉しかった
— 藤丸:191227単行本『ユアソング』 (@fujimaru_24) 2020年10月31日
モブライブのキャラデザを務めた藤丸さんも喜んでいました。このような細かい箇所にも愛やリスペクトを感じるところがとても良いと思います。
エマはみんながどんなスクールアイドルになりたいかと話している中で、自分は『人の心をポカポカにできるスクールアイドルになりたい』と言っていました。そんなエマのイメージを掴むためにお着替えタイムへ続きます。果林が服飾同好会にクラスメイトがいるということで、そこに衣装を着せてもらいに行きました。
まずはメイド衣装。メイドといえば西洋のお屋敷に仕えている人達です。エマ自身が西洋人であるため、とても様になります。関係ないですが、ちょうど彼女と同名のメイドが主人公の少女漫画もありました(ただし、そちらはスイスではなくイギリスが舞台です)。
お次は浴衣。日本に来た外国人の憧れの一つとも言えるこのアイテム、エマも例外ではなく、着れたことをとても喜んでいる様子でした。
チア衣装では、彼女の素晴らしいスタイルが強調されていました。
最後はエマ・ヴェルデなきクマ・ヴェルデ、まさかの着ぐるみまで置いてありました。あまりの可愛さに主人公・高咲侑も飛びつく始末、歩夢はどう思うのでしょうか。
クマ・ヴェルデと写真を撮りたいと言う侑の発言を受けて真っ先に『私も一緒に撮る』という歩夢に正妻の威厳すら感じます。
そんな中、同好会に付いてきた果林に仕事の電話がかかってきます。内容は、アンケート用紙によるインタビューに答えるというものでした。
虹ヶ咲の学生寮にて、エマは果林の部屋まで付いてきました。部屋は散らかっており、エマがそれを整理整頓していました。クールなお姉さんというイメージの果林ですが、プライベートは少しだらしなさがあるようです。そこでエマはある本を見つけます。
なんと、スクールアイドルの雑誌でした。余談になりますが、この雑誌に写っている少女2人もスクフェスのモブライブのキャラクターで、白瀬小雪と綾小路姫乃といいます。
(白瀬小雪)
(綾小路姫乃)
ここまでリスペクトする辺り、尚更感心します。
話を本編に戻します。エマは果林が同好会廃部騒動のときに協力してくれたこと、同好会の練習を手伝ってくれたこと、そして果林自身もこのようにスクールアイドルに関係するアイテムを持っていたことから、本当は果林自身もスクールアイドルをやってみたいのではないかと考え、彼女を同好会に誘います。そのことを果林に話してみると、『その本はエマのためになると思って持っておいただけ、自分自身は興味ない』と言い捨てます。そして、『もう誘わないで、次にやったら今の付き合いもやめにする』という旨の発言までしました。
果林の発言を受けて落ち込んでいたためか、翌日の写真撮影もどこか上の空でした。侑と歩夢もそのことを気にしていました。
エマが侑達にスクールアイドルの本を見せていると、果林のアンケート用紙が挟まっていました。そこにはなんと…
今一番興味があることは『スクールアイドル』、休みにやってみたいことは『友達と思い切り遊ぶ、お台場をブラブラ食べ歩いたり』と書かれていました。それを見たエマは、真っ先に果林の部屋へ急ぎました。
果林を連れ出したエマは、そのまま彼女と共にお台場のいろいろな場所を巡ります。まさに果林がアンケート用紙に書いたことをそのまま実現しようとしていたのです。
そこで映し出されるお台場の街並みも大変美しく、聖地巡礼がしたいなと尚更思いました。
お台場歩きも佳境に差し掛かる中、果林がなぜエマが今日自分を連れ回したのかを聞くと、果林が忘れていたアンケート用紙を取り出しました。
その内容を踏まえて、改めて果林をスクールアイドルに誘いました。さらに、いつも隣にいた果林の心も自分はポカポカにしてあげられなかったと悔やんでいました。『くだらないと思っていたことが実はこんなに楽しかった』と言いつつも、『朝香果林はそんなキャラじゃない』となお躊躇っていました。
しかしエマは、『どんな果林ちゃんでも笑顔になれれば一番だよ』と彼女の気持ちを優しく、暖かく包み込みます。
そして、自分も果林のことをもっと知りたいと言い、お待ちかねのライブシーンに突入します。
今回披露された楽曲は『La Bella Patria』、『evergreen』、『声繋ごうよ』、『哀温ノ詩』といった今までのエマの持ち歌からは想像もつかなかい、オープニングテーマを思わせるアップテンポなナンバーでした。
今回もいつもどおりファンタジックな心象風景を用いたライブシーンでしたが、このシーンにはエマと果林しかいませんでした。つまり、果林にも侑のような心象風景が見えているとも考えられます。また、このとき果林はエマと同じ目線の場所にいたため、彼女も今まさに同じ舞台に立っている、スクールアイドルとしての一歩を踏み出しているとも受け取れます。まさしく『やりたいと思ったときからもう始まっている』というエマの台詞をそのまま体現しています。
また、このシーンでエマが着ていた衣装が、前半のお着替えタイムにて果林が選んでいた服であるというのがまた高評価ポイントです。
エンディング明け、スクールアイドル同好会は新たに朝香果林を交えてさらに躍進していくのでした。かすみもライバルが増えて張り合いがありそうです。
感想・総括
以上が、虹ヶ咲アニメ第5話の大まかな内容です。エマの相手のどんな面も優しく包み込んでくれる性格と雰囲気にとても癒されます。そのおかげで、自分もスクールアイドルがやりたいのにモデルとしてのキャラを崩すまいと『これは自分のキャラじゃないから』と遠慮していた果林の気持ちを解きほぐすことができました。また、果林を励ますときの台詞には、流石海外からスクールアイドルをやりに日本までやってくる度胸も感じました。この一連のやりとりは、前作「ラブライブ!サンシャイン!!」の主人公である高海千歌の『できるかどうかじゃない、やりたいかどうかだよ!』という台詞に通じるものがあります。それをエマのような人物が言うとなると、また違った説得力があります。
さらに、今までの「ラブライブ!」シリーズでは各メンバーの掘り下げをやるのに加入回を用いることが多かったですが、今回の虹ヶ咲第5話のように既存のメンバーが誰かを勧誘することをメインテーマに持ってきた回があったことはシリーズ初の試みだと思います。スクールアイドルを始めたいと思っている果林と、そんな果林の気持ちを解きほぐすエマの両方にスポットが当たっており、いい手法だったと思います。果林の入部自体も、思ったより早くて驚きました。自分で知らず知らずのうちに作ってしまっていた枠を壊してスクールアイドルとしてこれから活躍していく果林を見るのも楽しみです。
第5話の最後の部分で、今回のライブシーンを果林が撮って璃奈に編集してもらっていたことも明らかになりました。どうやらスイスのエマの家族も喜んでいたそうです。いずれはエマの家族の話も掘り下げられるといいなと思います。
next虹ヶ咲
そして話は次回へ。パソコンの前で俯く璃奈、それに気がついた愛が彼女に声をかけるも黙り込んだままで…
次回は璃奈の個人回です。サブタイトルは『笑顔のカタチ(≧∇≦)』。璃奈ちゃんボードを思わせる顔文字があるのがまたいいです。ボードも次回で作られるのでしょうか。そこも楽しみにしたいです。
それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。