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『これが本当の原作昇華』今更ながらの鬼滅の刃アニメ版感想・総括

鬼滅の刃といえば、2016年から2020年まで週刊少年ジャンプで連載されていた吾峠呼世晴氏による漫画作品です。主人公・竈門炭治郎が鬼になった妹・禰豆子を人間に戻すための術を探すべく、鬼殺隊の一員として戦うダークファンタジーです。2019年にはアニメ化もされ、社会現象ともいえるヒットを記録しました。今となっては知っている人が大勢いる漫画となっています。2020年10月にはコミックス7、8巻の内容に当たる「無限列車編」が劇場版として公開されます。

自分は「鬼滅の刃」をジャンプでかなり初期の頃から読んでいましたが(本当です)、今のようなヒットをするのは予想外でした。原作も面白い漫画だとは思っていましたが、やはりアニメの影響が大きいでしょう。自分がコミックスの方を集めるようになったのもアニメの影響です。

 

今回は、そんな「鬼滅の刃」が大ヒットするきっかけになったアニメ版の感想・総括を今更ながら述べていきたいと思います。

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鬼滅の刃」のアニメ版は現在、炭治郎の妹・禰豆子が鬼になるところから下弦の伍・累との戦いの後の蝶屋敷での療養生活、コミックスでいうと1〜7巻までの話をアニメ化しています。7、8巻の無限列車編は映画でやるので、アニメ 二期があるとすれば9巻からになるでしょう。

 

原作経験者として見、てアニメ版「鬼滅」のどういうところがすごいと思ったかというと、以下に挙げるものが特にそうであったと思います。

 

戦闘シーンの作画

鬼滅の刃」はバトル漫画であるため、まず戦闘シーンのアクション、カッコよさは重要になります。本作では『全集中の呼吸』という身体能力を飛躍的に上げる呼吸術とそれを用いた剣技を用いて人間が鬼に立ち向かいます。その呼吸もと様々な属性があり、剣技を使うとそれぞれの属性に対応したエフェクトが出ます(実際に水や炎が出ているわけではありません)

例えばこちらの水の呼吸。

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(こちらは水の呼吸・玖ノ型のシーンです)

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(こちらは拾ノ型、カラーではこんな感じ)

吾峠先生の絵柄もあってか、浮世絵を思わせる豪快かつ美しい演出となっております。

これがアニメではどうなっているかというと……

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原作以上の綺麗さと躍動感。アニメだからこそ出せる美しさだと思います。

水の呼吸の演出も素晴らしいですが、アニメ版では特に、神回と名高い19話で登場したヒノカミ神楽のシーンが印象的でした。

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作画良し、カメラワーク良し。(実際にそうはならなかったとはいえ)累に逆転勝利するまでの流れや挿入歌『竈門炭治郎のうた』と相まってとても胸が熱くなるシーンでした。

水の呼吸やヒノカミ神楽以外の呼吸の剣技の演出もこの二つに負けない素晴らしさなので、まだ見たことがない人にはぜひ見ていただきたいと思います。特に我妻善逸の雷の呼吸は、構えを真似する子供が多くなってきたみたいですね。

 

一方、鬼が使う異能・血鬼術については、こちらの作画も良かったのですが、アニメ一期の時点では個人的にまだ派手な血鬼術を使う鬼が登場しないと思うため、二期以降に期待したいです。原作を見る限り、上弦の鬼達の血鬼術は(幹部キャラだから当然とはいえ)とても演出が凝っているためアニメではもっと映えると思います。ただ、累の糸攻撃や禰豆子の爆血はとても映えていたと思います。

???『珠世様の血鬼術の作画はとても美しかったです!』

 

鬼滅の刃」がアニメ化されるとジャンプ本誌で知ったときは、正直原作の独特な絵柄や演出をアニメで表現しきれるのかと疑問に思うことがありました。アニメを作る会社が「Fate」シリーズなどでお馴染みのufotableであるとわかったときは、ここならいい感じのアクションを描いてくれるだろうと思いました。そしてアニメがオンエアされたときは、期待以上のものを見せてくれました。これなら劇場版も、(もしあれば)アニメ二期も期待できます。

 

声優さんの演技

鬼滅の刃」のアニメ版は声優陣も凝っていることも有名です。特に鬼殺隊幹部剣士・の面々のキャストは、水柱・冨岡義勇櫻井孝宏さん蟲柱・胡蝶しのぶ早見沙織さんを始め、アニメファンなら名前だけでも知っているであろうという方々が集結しています。それだけでなく、炭治郎達が戦う敵である鬼の面々も、幹部格でなくともベテラン・有名な声優さんを起用しています。最初に戦ったお堂の鬼が緑川光さん最終選抜のボスキャラである手鬼が子安武人さんだったと知ったときは少し驚きました。アニメ最終話のパワハラ会議の被害者の面々でさえ、植田佳奈さんや保志総一朗さんといった豪華声優陣が揃っていました。『出番が少ない鬼もいるのに凝りすぎだろ』と思いましたが、そのおかげでより強敵感、簡単には倒せない相手という雰囲気が強調されていたと思います。

 

自分が特に印象に残っているのは、炭治郎の同期、我妻善逸役の下野紘さんの演技です。

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善逸といえば、よく泣いたり喚いたり、たまにしょうもないことで怒ったりするシーンが良く見られます。そのような性格であるからこそ、「鬼滅の刃」の会話劇の面白さに一役買っている人物であるともいえます。特に、蝶屋敷での療養生活では機能回復訓練でアオイ、すみ、なほ、きよの女性4人組が相手をしてくれることに興奮して恥ずかしい発言を連発するシーンがありますが、自分は見ていて正直『声優さんしんどそうだな』と思っていました。話している内容のことではなく、単に息をつぐ暇がなさそうな感じに台詞を連発していたことについてです。それも上手くこなしているため、改めて『声優さんってすごい…』と思いました。

善逸は泣き叫んでいるシーンばかりではなく、雷の呼吸を使うときは別人のように落ち着いた表情で技を繰り出し戦います(ただし壱ノ型しか使えない)。そのときの下野さんの切り替えも素晴らしく、技を出すときは泣き虫は鳴りを潜め、声の出し方からもイケメンオーラが濃くなります。

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他のアニメでも見られることですが、このように声優さんの演技がキャラの台詞に合わさることで、キャラの魅力を底上げしています。善逸は無限列車の戦いの後、より頼もしさが増していくので、二期の下野さんの演技にも期待しています。

 

ストーリーの補完描写

原作経験者としてはこの部分が一番すごいと思いました。

漫画作品のアニメ化で原作にないシーンが追加されることはよくあり、「鬼滅の刃」も例外ではなかったのですが、その原作にないシーンの使い方が「鬼滅の刃」アニメ版は上手いと思います。

例えば、コミックス2巻の内容に当たる浅草の戦いでは、原作にはなかった愈史朗の戦闘シーンがあります。原作では直接戦闘を行わなかった愈史朗ですが、ここで彼の見せ場が一つ増えたと思います。戦法はというと、自身の血鬼術でステルス化して相手を殴るという割とシンプルなものです。

那田蜘蛛山の戦いの姉蜘蛛の回想シーンでは、母蜘蛛、父蜘蛛、姉蜘蛛、兄蜘蛛以外にも累の家族が本当はたくさんいたことも追加で描写されました。その回想では“家族”から脱走しようとした鬼のことを姉蜘蛛が累に告げ口しており、炭治郎と対峙する頃までにはその“家族”の人数も激減しているため、累の“家族”の歪さが際立っていました。

 

これらのような補完描写の中で、特に自分が気に入っているのは柱合会議の様子が実際に描写されたところと、蝶屋敷での炭治郎達の療養生活におけるカナヲの描写です。

柱合会議では、柱同士の絡みや、親方様と柱達の絡みを補完してくれていたことが嬉しく思いました。細かい部分ですが、風柱・不死川実弥『最近の隊士は質が低い』と言った後で音柱・宇髄天元『昼間の小僧(炭治郎)は見込みがある。不死川に派手な一撃(頭突き)をお見舞いしたからな。』と返したシーンは、宇髄の言動の特徴をアニメオリジナルの台詞に上手く落とし込んでおり、結構好きです。

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カナヲについては、炭治郎達が自主訓練をしている中で自分も混ざりたそうに彼らを見ているところを、しのぶに『あなたも同期なんだから混ざれば?』と促されるシーンがありました。これにより、炭治郎が銅貨を投げるときの『カナヲは心のままに生きる!』と言ったシーンにより説得力を持たせています。

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その一方で、炎柱・煉獄杏寿郎が無限列車捜索に出動する前にしのぶと会話をするシーンも追加されているのですが、7、8巻および劇場版の展開を思うと死亡フラグ味を感じさせるものとなってしまった様に思います。

 

漫画作品のアニメ化において、原作にない描写の追加は尺稼ぎに使われることも度々あり、その様な場合は話のテンポを悪化させている原因になることもありますが、「鬼滅の刃」のアニメ版ではアニメオリジナルの描写を原作のストーリー展開と上手く繋ぎ合わせていると思います。また、その描写自体も『これは原作でも欲しかったやつだ!』と思えるものが多く、総じて作品全体の魅力を底上げしていると思います。原作のポテンシャルも高いですが、そのポテンシャルの高い作品の魅力を底上げする描写を挿し込むことができている辺り、『そりゃハマる人も増えるよね』と思いました。原作ではページの都合などもあって描ききれない部分もあるところをアニメで表現できているのは素晴らしいと思います。

アニメ単体でも十分楽しめますが、原作を読んでいるとさらに楽しめるアニメ版だと思います。

 

また細かい部分の話になりますが、次回予告の大正コソコソ噂話でコミックスのおまけページやファンブックで触れられている内容を扱うのも良い取り組みだと思いました。

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他にも、原作ではメタ視点でのナレーションで済ませてしまっている部分を、あえてナレーションを入れなかったり、またそのナレーションの文章の一部をキャラの台詞に落とし込んでいる部分も見事だと思いました(例:19話の走馬灯の下り)。

 

○あとがき

今回は2019年に放送された「鬼滅の刃」のアニメについて、原作を踏まえた上で『ここがすごい!』と思う点をピックアップし、今更ながらその感想を書かせていただきました。「無限列車編」も控えており、コミックスも完結に向かっているため、まだまだ盛り上がっていると思います。

自分は今のところ原作コミックスを全巻持っていますが、コミックス7、8巻の内容に当たる劇場版も見に行こうと思っています。また、アニメ二期以降のテレビシリーズが作られるなら、そちらも見たいと思います。普段原作付きのアニメを見てコミックスを買うと、原作を全部見れば二期以降のシリーズは見なくて良いかなとなる場合が多い自分ですが、「鬼滅の刃」は上記に挙げた三つの理由から原作を全部見た後でもアニメシリーズを追いかけたいと思いました。今度はどんな補完描写があるのか期待しています。また、上弦の鬼達の声優さんが誰になるかも楽しみです。

 

それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!