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『本気系スクールアイドルの復活』虹ヶ咲アニメ第3話「大好きを叫ぶ」感想

 テレビアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第3話は、自分の推しである優木せつ菜の個人回にして同好会加入回でした。

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 スクスタのストーリーなどの事前情報もあり、多少の先入観があった故にまさか3話でせつ菜を加入させるというのは意表を突かれました。それでも待ちに待った個人回、今回はその感想を書いていきたいと思います。

 

目次

 

内容の振り返り

 冒頭は前回第2話の続き、果林が生徒会室に旧同好会メンバーを連れて乗り込んできたところから始まります。

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 優木せつ菜こと生徒会長中川菜々は、第2話のかすみ回でも触れられた自分の大好きを押しつけてメンバーの大好きを傷つけてしまったことを申し訳なく思っていました。そのために自らはスクールアイドルを辞めて、同好会を維持するには部員が足りず、廃部にせざるを得なかったようです。廃部にする前にも、グループとしての同好会は解散していたことがしずくの口からわかりました。

 さらにこの場面で、このアニメにもスクールアイドルの甲子園としてラブライブ大会』が前作、前々作同様に存在することがせつ菜の口から明らかになりました。せつ菜達旧同好会も、もともとそこを目指していたようです。そして、もしラブライブに出たいなら、残りの4人で出てくれという旨を言っておりました。これについては後ほど触れますが、この作品における『ラブライブ大会』の扱いが第2話で示されたこの作品の方向性をより強固なものにしたと自分は考えています。

 

 時は翌日に移り、校内で愛と璃奈に校則に反して匿われていた猫のはんぺんを生徒会業務として菜々は捕まえようとしていました。幸いはんぺんは飼い主の璃奈に助けられましたが、もし捕まっていたら別の里親を探してもらっていた、それが叶わなければ保健所に連れて行かれてしまったのでしょうか。このシーンでせつ菜は最終的にはんぺんを匿うことを認めていますが、このときに『名前、なんて言うんですか』と璃奈にはんぺんのことを聞く辺りの描写から、生徒会長・中川菜々としての彼女は決して義務に忠実なだけの冷血漢ではないことがよくわかります。

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 それはひとまず置いておき、音楽室での出来事に移ります。主人公・高咲侑が、そこのピアノでせつ菜の持ち歌である『CHASE!』を弾いていました。素人なため、人差し指でぎこちなく弾いていましたが、菜々にはそれがかつての自分の持ち歌だとわかりました。音楽室で侑は自分が優木せつ菜のライブを見て感動したことを菜々に熱く語ります。しかし、菜々は『優木せつ菜は自分の大好きを追求するあまり、他のメンバーの“大好き”を傷つけてしまった。だからせつ菜はスクールアイドルなんてやらない方が良かった』と言い、第1話冒頭のライブについても『いい幕引きだった』と言っていました。その上侑に、『幻滅したでしょう』とも言っており、自責の念に苛まれている様子がひしひしと伝わってきました。侑からはかすみを部長にして新しく同好会を作ることを告げられ、それに対しては特に何の文句も言いませんでしたが、自分はそこに参加する資格は無く、その同好会が新しく出来ることだけが自分のわがままだと思っていました。

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 自分の理想を追求するあまり仲間にもそれを押し付けていたとはいえ、せつ菜がこのように自分を責めている様子はせつ菜推しとしては見ていて辛いなと思う部分もありました。

 

 この話では、せつ菜の家庭の様子も描かれました。家庭では本来の姿である中川菜々として過ごし、模試に向けての勉強に励んでおりました。親がいない間に自分の衣装を眺め、親が部屋に来た途端に勉強しているポーズをとる様子は割と高校生あるあるな感じがして人間味があります。それと同時に、親にも自分がスクールアイドルをやっていることは秘密にしていることもわかりました。

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 原作(スクスタ)のせつ菜の親は、昔から一切の趣味活動を禁止しており、『強いリーダーシップを発揮してほしい』と自分の理想の生き方を娘に押し付けるというまさしく毒親といった人物でした。しかし、今回の話ではそのような印象を強く与える発言はなく、『模試があるんでしょう』といった発言から娘に少し大きすぎる期待をかけているように思える節はあるものの至って普通の親といった印象でした。そのため、親との関係で苦しんでいるがための二重生活というよりは、せつ菜自身が周囲の期待を感じ取る能力が高く、それに応えているといった印象を受けました。要するに『できた娘』といったところでしょうか。ですが、果林も『どうして生徒会長が偽名を使ってスクールアイドル活動をしているのか気になる』と言っており、せつ菜自身も、『期待されることは嫌いじゃない』と言いつつも、『少しぐらい自分の大好きなこともやってみたかった』と言っていたため、彼女なりに何か複雑な理由があることは間違いないでしょう。ただ少なくとも、あえて実名の中川菜々ではなく、『優木せつ菜』という偽名を使って活動している彼女の心境は、実生活で自分にかけられている期待とは別にやりたいことをやりたいというものであると思います。家庭事情についての詳しいことは、おそらく後の話で掘り下げがあるだろうと踏んでいます。

 さらに、この『期待』というものがせつ菜を縛っていた考えでもありました。自分にかけられた期待とは別に、ただ純粋に『大好き』なこととして始めたはずのスクールアイドルですが、活動を続け、ファンが増えていく中でそこでもまた期待をかけられるようになっていったのでしょう。実際に第1話で披露した『CHASE!』のライブ動画にも、そのようなコメントが寄せられており、中にはラブライブ大会への出場を希望する声もありました。

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 それでも、スクールアイドルが純粋に好きだという気持ちは変わっていなかったと思いますが、ファンからの期待に応えなければならないと焦り、同好会に亀裂を入れるきっかけになってしまったのだと思われます。かつてなりたかった自分からはかけ離れて行ってしまった見たいです。そしてせつ菜は、『自分の大好きはファンどころか仲間にも届いていなかった』と絶望しました。

 せつ菜自身がとにかく周囲からの期待に応えたいと強く思う性格なために同好会に亀裂を生むきっかけになってしまったとするストーリーの流れは、スクスタから上手くアレンジしたと思います。

 

 時はさらに流れて同好会の練習場面にて。果林がスクールアイドル同好会のせつ菜を除く旧メンバーと侑達新同好会を集めてせつ菜の正体について話していました。かすみはそのことにとても驚いていた様子でした。このとき、果林がかすみからもらったコッペパンを半分こにして親友のエマに分けている様子がとても印象に残っており、果林の好感度をさらに上げる描写だと思いました。

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 そして果林のドヤ顔が素晴らしかったです。

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 同好会のかすみを含む旧メンバー達は、廃部前のせつ菜の態度を悪く言っている様子はなく、むしろ素晴らしい同好会を作るためにはせつ菜の力が必要だと言っていました。特にかすみは、自分とは違う考え方のせつ菜の存在をより必要としていました。

 

 そして放課後、侑は校内の放送で中川菜々と優木せつ菜を屋上に呼び出します。そこで2人は改めて話し合いました。せつ菜は侑に、自分がいてはダメだとまだ言い、その上ラブライブ大会はどうするのかと言います。しかし侑は、『せつ菜ちゃんが幸せになれないのが嫌だ』といい、自分がいたらラブライブ大会に出られないとまで言うせつ菜に、ラブライブなんて出なくていい』と答えました。この台詞によってせつ菜を『期待』の呪縛から解放しました。また、その役割も同じスクールアイドルキャラである歩夢やかすみ達旧同好会メンバーではなく、ファン目線のキャラである侑だから出来たことだと思います。もしかすみ達がこれをせつ菜に言っていたら、『自分が彼女達にラブライブ大会を諦めさせた』とまたせつ菜が負い目を感じるかもしれません。そのため、ファン目線で行動している侑がこれを言ったからこそ、せつ菜の心を救うことができたと思います。

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 この後に菜々が髪の毛を解き、『優木せつ菜』に変身を遂げるシーンも印象的でした。

 

 侑の言葉でスクールアイドルへの信念を取り戻したせつ菜は、新曲DIVEを大勢の生徒がいる中で披露します。

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 第1話の『CHASE!』とは反対に、炎ではなく水属性を強調した演出とステージ、しかしそこには炎も時々発生しており、自分の大好きに正直になるそして広い海のように、形を自在に変える水のように新たな同好会で他人の大好きも包み込んでいくというせつ菜の心情が読み取れました。本来水と炎は共存できませんが、その壁すら越えていこうという意思を感じます。また、炎と水の演出はせつ菜と菜々の二面性を表しているようにも見えました。大好きを情熱的に叫ぶせつ菜が炎、常に冷静で本心を隠している菜々が水であると思います。

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 ライブシーンの演出は、せつ菜が一度歌を捨てた背景も相まって、童話の「人魚姫」を連想しました。また、海を思わせる風景に白いワンピースはという服装はボーカロイド曲の『深海少女』のMVも連想しました。

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 深海に潜む“大好き”を引っ張り出していく、そして新たな同好会でスクールアイドルとして返り咲く、まさに優木せつ菜の『復活』を描き切ったお話でした。曲自体も『CHASE!』の頃からのかっこよさを引き継いでおり、またCDが欲しくなりました。

 

感想・総括

 今回の第3話は、廃部云々の下りなどは正直何も廃部にまでする必要はあったのかなど少しだけもやもやした部分もあります。ただし、顧問の教師もいない上に部員不足で校則上廃部にせざるを得なかったと考えれば納得できないことはなく、実際劇中でも制度上の都合で廃部自体はせつ菜の本意ではなかったことは伝わってきたと思います。せつ菜が同好会を抜けることをメンバーに相談しなかったことについても少し引っかかりましたが、もしせつ菜が『同好会をやめます』と他のメンバーに言ってしまえば、『せつ菜は自分たちに愛想を尽かした』あるいは『自分たちのせいでせつ菜はやめてしまった』と負い目を感じさせてしまっただろうとも考えられます。特にせつ菜と真っ先に衝突したかすみなんかは、尚更そう感じると思います。せつ菜個人としても、そのようなことになるのは望ましくなかったはずです。

 原作スクスタでの同好会再結成におけるせつ菜の行動もプレーヤーにいい印象を与えづらいものであり、それをアニメで調理するのは難しかったと思います。実際アニメ第3話を見ていて、尺の都合などもあり『あ、ここを上手く辻褄合わせるのは苦労したんだな』と思う痕跡もいくつかありましたが、その辺も含めてアニメはより『優木せつ菜』という1人の人間に向き合えているシナリオ自体は描けていたと思います。それ以外に気になるところは特にありません。

 

 これはスクスタ経験者ならではの感想となりますが、せつ菜推しとしてはせつ菜の本当の笑顔をようやく見ることができたような気がします。第3話終盤で侑が言った『せつ菜ちゃんが幸せになれないのが嫌だ』という旨の発言は、自分の今の心境を代弁してもらったような気持ちになりました。スクスタにおけるせつ菜の顚末といえば、ここではあえて多くを触れないことにしますが、『目も当てられないくらいの惨状』としか言えませんでした。だからこそ、主人公にしてファンの代表ともいえる高咲侑に、せつ菜の生き様を肯定してもらえたことは心にくるものがあります。また、今回までの話ではどちらかと言えば『中川菜々』としての優木せつ菜により焦点が当てられていたという印象があるため、スクールアイドル・『優木せつ菜』として描かれるのはこれからの話が本番だという風にも思えました。それから、せつ菜に本当の幸せが訪れるのはやはり二重生活を解消できたときだと自分は踏んでいるので、そこも気長に待つことにします。ただしそれもやり方次第です。

 

 そして、あえてラブライブ大会には出ないことで、より純粋に『それぞれの大好きを追いかける』という姿勢が読み取れ、この作品の方向性がより強固になったと思います。そしてこれが虹ヶ咲のソロ路線なら繋がっていくというのは尚更見事に思えます。ある意味、虹ヶ咲が本来なら外伝ポジションとして作られたコンテンツだからこそできる試みともいえるでしょう。侑の台詞はある種の解放感すら感じました。同時に、ラブライブ大会に出なくても、勝ち負けや勝負事に拘らなくてもスクールアイドルとして活動できる』、『ラブライブ大会に出ず、ただ楽しいからやるスクールアイドル活動も無意味なものではない』というスクールアイドルのまた一つの可能性を示してくれたようにも思えます。虹ヶ咲のソロ路線も、スクスタでは昨今のソシャゲよろしくキャラをどんどん追加していくためのものというシステム・商業展開的な事情のようなものを強く感じましたが、アニメではこれを、2話と今回の3話で上げられた『一つの場所で別々の価値観が共存していくにはどうすればいいか』という物語の根幹をなす考えとしてソロ路線につなげていくところが見事としか言えません。

 

next虹ヶ咲

 次回からは、愛、璃奈、しずく、エマ、彼方、果林の掘り下げを行うと思われます。この6人はスクスタでは活躍の場に乏しいメンバーであったため、アニメの掘り下げはとても楽しみにしています。特に1〜3話を見る限り果林の描写は『スタッフに果林推しがいるのでは』と思うくらい気合が入っているため、尚更楽しみです。またスクスタの設定に基づく話になりますが、これから掘り下げられるメンバーはそれぞれおばあちゃんと近所のお姉さんのいる愛、妹の遥がいる彼方といった誰かしらの周辺人物が自身に影響を与えたキャラや、それぞれ演劇、モデルと何かしらの別の仕事とスクールアイドルを兼業しているしずくと果林、海外から来たエマといったメンバーは、この先の物語のスケールを広げるのにうってつけなメンバーであると思います。だからこそスクスタでは非常にもったいないことをしたなと思うと同時に、アニメではそこを上手く使えることを期待しています。璃奈もまだ璃奈ちゃんボードが完成していないので、それを作る話の内容次第では面白くなりそうです。

 スクスタをなぞるような展開はここまでで、次回からは完全にオリジナル展開に移行すると踏んでいます。

 

 それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。