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『“理想のヒロイン”でいるために』虹ヶ咲アニメ第8話「しずくモノクローム」感想

 虹ヶ咲のアニメも第8話を迎え、いよいよ後半戦に本格的に突入しました。今回の第8話は、1年生メンバーでスクールアイドル同好会と演劇部を兼部する桜坂しずくの個人回でした。

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 今回もメインライターの田中仁さんではなく、サブライターの人が話を書いていました。第8話の書いた人は大内珠帆さんといい、「八月のシンデレラナイン」や「魔王学院の不適合者」で田中仁さんのサブライターをしていた人です。

 前置きはこのくらいにして、内容の振り返りと感想に移りたいと思います。

 

目次

 

内容の振り返り

 今回の出たしはいつもより独特で、しずくの一人芝居らしきものから始まります。

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 ある街に一人の少女がいて、その少女はその街で1番の歌手になることを夢見ていました。その少女は『あなたの理想のヒロイン』になるために、今日も奮闘していました。しかし、そんな少女の願いを阻むかのように、少女と似た姿の仮面をつけた人物が黒装束を纏って現れます。この黒装束の人物のことを、以下より黒しずくと呼ぶことにします。

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 黒しずくは少女に『あなたの歌は誰にも届かない。』『あなたは私だもの』と、まるでしずくの影の面や深層心理を象徴しているかのような言動をしています。そして、仮面の左目のデザインは涙を流しているかのようにも見えます。

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 舞台は現実に戻ります。スクールアイドル同好会の部室に、新聞部(おそらく)が写真撮影及びインタビューに来ていました。

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 しずくの元にも、新聞部の部員の一人が取材に来ており、しずくはそれに応対していました。しずくは新聞部員に『どんなスクールアイドルを目指しているか』と聞かれたときに、『みんなから愛されるスクールアイドルを“演じたい”です』と答えていました。そしてインタビューに答えているこの瞬間にも、まさに理想のスクールアイドルを演じているとのことです。

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 さらに、しずくには演劇部の方でも自分が主役を務める舞台の発表会が控えており、そのことについて聞かれたときも『楽しみにしていてください』と嬉々として答えていました。その発表会はスクフェスのモブライブ勢力の一つである藤黄学園との合同であり、ここでもまたモブライブネタが回収されました。

 

 しかし、演劇部の部室にて、しずくは部長から主役の降板を言い渡されてしまいます。理由はしずくがその主役に合わないからであるそうです。役柄が合わないという理由はあったもののオーディションで役を勝ち取り、そこから本番に向けて練習を積み重ねていたであろうことを考えれてみれば理不尽な気がします。演劇部の部長はとても厳しくシビアな人物であるみたいです。

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 部長としては、その役は『自分をさらけ出す感じで演じて欲しかった』とのことで、しずくにはそれができていないと判断したようです。それでも主役を諦めきれないしずくはもう一度チャンスをくださいと部長に頼みます。

 

 オープニング後のシーンにて、ある日かすみがしずくが一人で演劇の自主練をしているところを目撃します。その様子をかすみは複雑そうに見ていました。

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 同好会の部室では、先の新聞部のインタビュー記事が出されたことが侑からみんなに知らされました。何気に、主役スクールアイドル校内新聞が校内新聞に取り上げられる展開はシリーズでも初めてのことであると思います。

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 その記事にはしずくの舞台のことも書かれていました。

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 主役を下ろされてしまったしずくはその記事を見て焦ります。その様子を見ていたかすみは璃奈にそのことを相談しました。


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 璃奈のクラスメイトから、かすみはしずくが主役を降ろされてしまったことを聞きます。そこでかすみは、落ち込んでいるしずくを励まそうと、璃奈とともに動きました。

 しずくを捕まえるときのシーンで璃奈ちゃんボードの新作を使うところがまた面白いです。

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 しずく、かすみ、璃奈の1年生組は、第7話で彼方のライブシーンにも使われたヴィーナスフォートの店に行きます。そこでパンケーキを食べたり、いろいろな店を回ったりしました。ヴィーナスフォートのマウンテンパンケーキはかすみが5回食べに行って5回とも完食できなかったそうで、食品ロスが悔やまれます。この日3人で行った時はなんとか完食できました。


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 道中にて、しずくがあるポスターを目撃します。そこには英語で『オードリー』と書かれていました。当然お笑いコンビの方ではなく、しずくの持ち歌の一つのモデルにもなったオードリー・ヘップバーンのことだと思われます。

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 同じくポスターを見ていた璃奈が、それが好きなのかとしずくに聞きます。するとしずくは、昔から古い映画や小説が好きだけど、そういう子は自分以外にはおらず、変な子だと思われたくないからお芝居をするようになったと話しました。そして、『芝居をしているときは自分が桜坂しずくであることを忘れられる』とまで言いました。

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 浮かない顔をしていたところをかすみに見つかり、主役を降ろされたならまたオーディションに受かればいいと励まされますが、そのまま2人に別れを告げて帰ってしまいました。

 

 ここでまたしずくの心の世界の描写がなされます。しずくは再び黒しずくと対話していました。

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 黒しずくはしずくが本当の自分を見せるのを怖がっていることを指摘します。しずくの方はそんなことはできないと拒むも、黒しずくは『私は歌いたい』と本音を言います。そして、そのためには自分を受け入れてほしいと迫るま、しずくはそれを拒み、やはり自分をさらけ出すなんてできないと落ち込みました。

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 上記のように、しずくは周囲から変な目で見られたくないがために演技をしながら生きてきたことが伺えます。そして、そのようにしか振る舞えない自分のことを嫌ってもいました。思えば第4話で同好会はソロでやろうという話になったときに『自分1人にステージを盛り上げられる魅力を出せるのか』という旨の発言をしずく自身がしていたことも本来の自分に対する自信の無さからくる発言であり、今回の8話に向けての伏線であったと考えられます。しかし、演劇部に入りながらもスクールアイドル同好会を兼部しているしずくには、純粋に自分を表現してみたいという気持ちもないわけではなかったと思います。黒しずくはそんなしずくの内なる願いを代弁している存在であるといえます。

 

 翌日のお昼の時間にて、かすみがしずくに連絡してみたところ、返事は返ってきませんでした。かすみも璃奈も、しずくのことを心配しました。

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 そこで璃奈が、『落ち込んでいるしずくちゃんしずくちゃんなんだと思う』とかすみを励まし、自分自身も今のしずくと同じように自分のことが嫌だったことがあるとしずくの心境に理解を示していました。

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 璃奈には愛がいたように、今のしずくにはかすみがいることをかすみに気づかせ、それに勇気づけられたかすみはしずくを説得に行きました。第6話にて、自分らしいやり方で自分をスクールアイドルの世界に適合させ、璃奈ちゃんボードという仮面をつけることでこそ本音で語り合えるようになった璃奈だからこそ、この後のしずくの再起に一役買うことができたのだと思います。

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 しずくを探していたかすみは、教室で1人発生練習を諳んじるしずくを見つけました。かすみと再会したしずくは、璃奈にも話した自分が演劇を始めた背景をかすみにも打ち明けました。その上で、自分をさらけ出すことが役者にもスクールアイドルにも必要だというのなら、自分はどちらにもなれないと嘆きます。そこでかすみは『何甘っちょろいこと言ってんだ』としずくに寸止めパンチからのデコピンをお見舞いし、『嫌われるからなんだ』『かすみんだってこんなにかわいいのに褒めてくれない人だってたくさんいる』『しず子にだってかわいいと言ってもらえたことがない』と叫びました。その後、しずくに自分はかわいいかと尋ねる、『かわいいんじゃないかな』と答えてもらえました。

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 かすみの発言は、スクールアイドルという表現者の1人であるが故に悩んでいることや難しいと感じていることが滲み出ているように思います。第2話の感想でも触れましたが、かすみは自分はの自信に溢れていていかにも『私には何も怖くない』、『私ってかわいいでしょ?』といった感じの人柄に見えて周りの反応を無視しない態度や他人の気持ちを気遣う姿勢を持っているところが素晴らしいと思います。これもある意味優れた表現者には必要な心構えです。それでも表現者としての道を進み続けたいのならば、自分が信じた道を貫き、自分の『かわいい』を発信していかなければならないという強さも感じました。

 そして、『頑固で意地っ張りで、自分に自信がない』などといったしずくの性質を全て受け入れ、その上で『桜坂しずくのことが大好きだから』『しず子のことが好きって言ってくれる人も絶対いるから』としずくを強く励ましました。

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 その発言を受けて、しずくは再起しました。一連のやりとりは流石のかすみも恥ずかしかったようで、『かすみんにここまで言わせたんだから再オーディションは受かりなさい』と言って教室から去って行きました。

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 一連のやりとりを終えたしずくの表情は、憑き物が落ちたかのように晴れやかなものでした。

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 藤黄学園との合同発表会の当日、虹ヶ咲学園サイドの演目のポスターを見ると……

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 『主演 桜坂しずく』の文字とともに、彼女がの写真がポスターにありました。

 舞台は、スクールアイドル同好会のみんなも見にきていました。特にかすみは、ほかのみんなに比べて緊張した様子で見ていました。

 

 演目の内容は、ある街でその街1番の歌手を目指す少女の話です。話の流れは、少女の歌の評判が悪いからと、劇場から追い出されてしまうなど、今回のしずくの境遇と重なります。

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 劇場を追い出されたことで大いに落ち込み、それでもなお歌を諦めきれなかった少女の元にしずくの心象風景にいた黒しずくに似た人物が実際の演劇の登場人物の1人として現れました。


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 黒しずく似の女性もまた、歌を歌うことを諦めておらず、そのために自分を受け入れて欲しい、本当の自分をさらけ出したいと少女に迫ります。少女はずっと見て見ぬふりをしてきた自分の影の一面=黒しずくに対して謝り、これからも歌い続けるために彼女を受け入れる決意をします。このとき、演技をしていないときのしずく自身も、黒しずくを受け入れる心構えができたように思います。

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 表の気持ち深層心理が一つになるとき、少女は再び立ち上がり、お待ちかねのライブシーンがスタートします。

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 今回しずくが歌った曲はsolitude rain、しずくの今までの持ち歌で例えるなら、『オードリー』に近いアップテンポな曲です。ライブシーンの中で見られる雨の演出も、しずくが抱えていた葛藤や自己嫌悪の念を綺麗に洗い流してくれているみたいで素晴らしかったと思います。

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 また、しずくのモブライブ時代の服装をリスペクトしたカットや、藤丸さんの4コマ漫画をリスペクトしたカットがあった部分も好感が持てるポイントです。


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 藤丸さんがまたも喜んでくれていました。

 

 さりげなくオフィーリアも映っていました。


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 さらに、画像ではわかりにくいですが、降り注いでいた雨が静止する演出も幻想的でした。そこは是非ともYouTubeで公開されているMVをご覧ください。

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 このようにして、しずくの舞台は無事に幕を引きました。演目が終わった後に拍手をするかすみも可愛らしいです。

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 舞台袖にて、黒しずくがついに素顔を見せます。舞台における黒しずくの正体は演劇部の部長でした。

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 舞台が終わった後、しずくは再び新聞部からインタビューを受けていました。そこで『スクールアイドルとして、役者として一言はありますか』と言われたときに、『本当の私を見てください』と笑顔で答えていました。演技をしている自分もまた自分であるということの表れであると思います。

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感想・総括

 今回の話は、しずくが本当の自分をさらけ出した表現ができるようになるまでの話でした。演技をしているときの自分も、していないときの自分も紛れもない『桜坂しずく』なのであると思いました。どんなに自分のことが嫌いでも、それを受け入れてこそ前に進める、自分をさらけ出すということは、自分を受け入れ肯定するところから始まるというメッセージが込められていたように思います。だから、別にしずく自身が演じることをやめたわけではない、しずくが演じることを持ち味とするのを否定しているわけではないと考えています。

 また、今回の第8話はしずくとかすみを通して、表現者としてのスクールアイドルというものに踏み込んだ話でもあったと思います。内容の振り返りでも触れましたが、かすみがしずくを再起させるときの一連の台詞にはまさに表現者であるが故に悩んでいることや難しいと感じている部分をそれこそさらけ出していたと感じています。このようにして、各々違うスクールアイドル像を持っているメンバーが様々な形でスクールアイドルというものに切り込んでいくところが虹ヶ咲の面白い部分であると思います。

 それから、虹ヶ咲はオムニバス形式をとっていると感じますが、自身のかわいいを追求するだけでなく他者への気配りもできるかすみ、自分に合った戦い方で成長できた璃奈といった具合にそれぞれの個人回で成長した部分がこうして違うメンバーの個人回で活かされているところも好感が持てるポイントです。

 

next虹ヶ咲

 物語は次回へと進みます。同好会のアイドルキャラの個人回シリーズでトリを務めるのはセクシーお姉さん系スクールアイドルの朝香果林です。

 その回のタイトルはなんと…

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 『仲間でライバル』

 ここにきて虹ヶ咲のコンセプトの核心に触れる話をやるそうです。しかもその話が果林の個人回に回されるとなると、序盤に侑と歩夢をスクールアイドルの世界に引き込んだせつ菜とは別の意味で、果林はきっとアニメの中で大役中の大役を務めることになるでしょう。次回も楽しみにしています。

 

 それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。