『競い合い、支え合える場所』虹ヶ咲アニメ第9話「仲間でライバル」感想
虹ヶ咲のアニメも9話になり、ここで一応全員分の個人回を全て終えました。同好会メンバー全員分の当番回のトリを務めたのは、3年生メンバーでセクシーお姉さん系スクールアイドルの朝香果林です。
今回の第9話は、第6話から2週間ぶりにメインライターの田中仁さんがお話を書きました。前置きはこのくらいにして、内容の振り返りと感想に移ります。
目次
内容の振り返り
冒頭は果林のモノローグから始まります。果林は(おそらく)同好会のことを、『本当の弱い私を抱きしめてくれた場所』と評していました。第5話でエマに同好会へと誘われた出来事も関係しているのでしょう。
ある日のことです。読者モデルとしても活躍している果林は、校内のファンに声をかけられ、サインをくださいと頼まれます。もちろん喜んでサインをくれました。
ファンの子達にサインをあげた後、同好会の仲間であるせつ菜が自分のところに駆け寄ってきました。せつ菜は着替えている途中で他の生徒に見つかりそうになったらしく、それを怖がっていたみたいです。
果林はせつ菜に『正体が生徒会長なことがバレてもいいじゃない』と言いますがせつ菜はそれを良しとしません。しかし一方で、『正体のわからないスクールアイドルはまるで変身ヒーローみたいだ』と楽しんでいる節もありました。果林はせつ菜が自分の家庭事情について話した第4話の時点では同好会にいなかったため、おそらくそのことを知らないのでしょう。そしてせつ菜推しである自分は、せつ菜が正体バレを怖がるシーンとこのときの2人のやり取りが後のストーリー展開のフラグになっていると思えてなりません。
これ以上は脱線の恐れがあるため話を第9話に戻します。
部室でのシーンにて。彼方が『色んな人から声をかけてもらえるようになった』と発言しており、同好会が最初の頃に比べて有名になっていることが伝わってきます。そこには今までのPVや第6話での璃奈のライブの効果もあったと触れていました。
しかし、部長かすみの次に重役を務めているせつ菜は、『同好会としてはまだ何も成し遂げていません』と現状を分析した上での発言を行い、そこからみんながライブをしたいと言い出しました。
そのとき、彼方のスマホに妹・遥から連絡がありました。
遥は藤黄学園のスクールアイドル・綾小路姫乃を連れて同好会の部室にやってきました。姫乃は遥と同じくスクフェスのモブライブキャラの1人であり、ここでもまたスクフェス関連のファンサービスがあり、感心しました。姫乃はどうやら、果林のことをファッション誌でよく見たことがあるそうです。
姫乃は虹ヶ咲の同好会に大事な話があるため、そのことで虹ヶ咲を訪れました。その大事な話とはなんと、お台場で開催する音楽の祭典、Diver FESにスクールアイドル枠が3つ設けられており、既に決まっている東雲、藤黄の他に最後の1枠として虹ヶ咲を推薦するというものでした。
有名になりつつはあるものの、まだこれといった成果を上げていない虹ヶ咲としては非常に魅力的な話でした。しかし、歌える曲は1つのグループで1曲のみという決まりがありました。虹ヶ咲の同好会は各メンバーがソロアイドルであることを売りにしており、そこがネックであるため出演するメンバーを1人だけに決めなければならなくなりました。主人公・高咲侑の中の人がこの場に居れば、『ヒトリダケナンテエラベナイヨー』と言い出しそうな案件です。
1人だけしかDiver FESで歌えないとわかったものの、それだけにやはりメンバー選出は難航しました。果林の方はというと、『今回のライブは同好会が試されるライブになる。それに立ち向かえるメンバーを選ぶべき』とシビアな発言をしていました。読者モデルというプロの芸能界で活躍している果林だからこその言い分なのだと思います。メンバー選出に当たって、同好会の初期の頃からいたメンバーであるかすみやせつ菜は意見の違いで揉めた結果同好会を空中分解させてしまった経験があり、話し合いでは遠慮気味でした。その姿勢についても果林は『衝突を避けたい気持ちはわかるけど、それが足枷になったら意味がない。それで果たしてソロアイドルとして成長したと言えるのかしら』と指摘していました。
その後、果林はモデルの方の仕事もあるため、途中で帰ってしまいました。
今回のお話では、果林の読者モデルとしての仕事風景が見られたところも良かったです。
せつ菜の生徒会長としての仕事場面といい、彼方の家庭生活といい、しずくの演劇部といい、それぞれのキャラの背景をしっかり画で見せてくれるのもアニメだからこそ光る部分だと思います。
モデルの仕事の後、寄りたいところがあるためそこへいこうとしていましたが、場所がわからず道に迷ってしまいました。その道中で侑、歩夢、せつ菜の3人に遭遇します。
果林が訪れた場所は、アニメやゲームなどのサブカルチャーを扱っている店の前で、それらが大好きなせつ菜は果林もそうなのかと興味津々な様子でした。
このときのせつ菜の表情がたまらなく可愛らしいです。
店の中には、スクールアイドルのグッズも置かれていました。
中には遥が所属する東雲学院や姫乃が所属する藤黄学園のスクールアイドル部のグッズもありました。果林はそこでせつ菜のグッズもないのかと聞きますが、どうやらないみたいでした。せつ菜自身は、『悔しいですが、いつかここに並べてもらえるように頑張りたいです』と言っていました。果林がせつ菜にこのことを聞いたのは、おそらくせつ菜の実力を認めているがための発言であったと思います。しかし、魅力的なパフォーマンスを行い、侑と歩夢、愛と璃奈にスクールアイドルの世界は入りたいという気を起こさせたせつ菜でさえまだグッズを置かれていないというスクールアイドル界のシビアさも感じました。
店を出た後、果林は3人に仕事の仲間から紹介してもらったダンススクールを探していることを打ち明けました。ですが、そのダンススクールは丁度さっきの店の近くにありました。そのために果林は3人に方向音痴であることがバレてしまいます。侑はそんな果林のことを『可愛い』と評していました。ダンススクールに行こうとしていた訳を聞かれると、『ライバルに追いつくためだ』と答えました。そしてそのライバルとは、他でもない同好会のメンバーのことを指していました。果林としては、せっかく部活に入ったのだから楽しんでやりたいという気持ちはあったものの、手が抜けない性分であるため、こうして陰ながら努力をしていました。
そこでせつ菜が、改めてDiver FESに出るメンバーを決めないかと提案します。
みんなそれぞれの気持ちを込めて真剣に考え、改めてメンバー決めを行い、ストーリーはBパートに移ります。
Diver FESの当日、話し合いの結果、歌うメンバーは果林に決まりました。話し合いの様子はあまり細かく描かれませんでしたが、この後の話で姫乃も触れている事実も含めると、読者モデルとして名を上げていてスクールアイドル活動をしているという部分は十分アドバンテージがあり、同好会の名を上げるライブに出るメンバーとして果林はうってつけであると思います。当然同好会のメンバー達がそのアドバンテージだけを見て決めたということはないと思うので、普段の練習などで果林の実力を見て決めたことだと思います。
果林自身は始めからステージ衣装に着替えており、気合は十分です。
Diver FESにはスクールアイドル以外のアーティストも多数参加しており、同好会にとってはいわばアウェイな場所ということになります。その証拠に、侑と歩夢が道中で虹ヶ咲学園のことを知らない観客同士が会話していたのを耳にしており、尚更そのことを実感させられていました。
一方果林本人はというと、同好会にDiver FESの話を持ちかけてきた姫乃と話していました。果林もまた、姫乃からこのDiver FESにはスクールアイドルが好きな人だけが集まっているわけではないことを話されており、そのことで大きなプレッシャーを感じていました。しかも、ソロで出なければならないということもあり、そのプレッシャー自体も尋常ではなかったはずです。
やがて、Diver FESのステージでスクールアイドルのターンが始まります。先陣を切るのは遥達東雲学院です。
一方、虹ヶ咲サイドでは、控えのテントに果林の姿が見当たりませんでした。侑、歩夢、せつ菜の3人は迷子の可能性を案じ、同好会全員で果林を探しに行きました。
果林は1人ベンチに佇んでいました。仲間たちに発見された彼女は、アウェイなステージを前にびびっていることを打ち明けました。
メンバー選出の話し合いで偉そうなことを言っておいて情け無いと自分を責めてもいました。
しかしそんなとき、せつ菜、エマ、璃奈が真っ先に彼女に寄り添い、励ましてくれました。せつ菜は果林がライバル視している人物、エマは果林の親友にして彼女を同好会に誘ってくれた人物、璃奈は果林を含む他のメンバーが支えてくれたから立ち直れた人物です。特に、自分の気持ちを伝えることにかつては自信がなかった璃奈が果林をこうして支えている部分も素晴らしいです。
しずくも、『ソロアイドルだけどひとりぼっちじゃないんです』と果林を励ましました。第8話での経験が生かされている台詞だと思います。みんなの励ましを受けて、果林はステージに上がる覚悟を再び決めます。そのときにかすみが、『かすみんの元気を分けてあげます』と言い、そこからみんなでハイタッチの構えを取ります。
このハイタッチのシーンが大変素晴らしく、歌うのはソロだけど決してひとりぼっちじゃないという理念を感じられます。
このときエマが母国語(スイスの公用語の一つのイタリア語)で『Fozza(頑張れ)』と言っているところも何気に印象的です。
思えば冒頭のモノローグで、同好会のことを『本当の弱い私を抱きしめてくれる場所』と評していたのも、このシーンの前フリであったように感じられます。実は方向音痴な自分も、アウェイなステージを前に怖気付いてしまう自分も、本当は少し見栄っ張りな自分も受け止めてくれていて、それでもときにライバルとして対等に接してくれる同好会は、果林にとって大切な場所であるはずです。
その後、侑が『果林さんをしっかり見ていたい』と観客席の方へ走っていきます。第1話の感想でも触れたように視聴者に劇中人物の視点を与える主人公である侑らしい選択であると言えます。
これに対して同好会のスクールアイドルキャラ達はステージの裏側から果林を見守っているところもまた素晴らしい演出だと思いました。
『仲間だけどライバル、ライバルだけど仲間』、スクールアイドル同好会で培った絆を胸に、お待ちかねのライブシーンに突入します。
今回果林が歌った曲は『vivid world』。1stアルバムに収録されている持ち歌である『Starlight』の様なクールなダンスナンバーです。
歌詞も、果林と他の同好会メンバーとの絆を感じさせるものとなっており、今回の話のクライマックスを飾るのにふさわしい曲となっています。
また、ステージの演出で同好会のアイドルキャラ達のイメージカラーの流星群が流れるところも印象的です。
いつもの如く、過去の媒体をリスペクトしたカットも存在しました。
ライブは大盛況で、観客席のペンライトはいつのまにか果林のイメージカラーである青色に染まっていました。
終盤のシーンにて、虹ヶ咲をDiver FESに誘った姫乃がチームメイトと会話をするシーンがありました。どうやら姫乃はモデルとしての果林のファンであり、果林がDiver FESで歌うことに期待していたみたいです。回りくどいツンデレです。
観客席にて、昼間はスクールアイドルに興味が無さそうだった客2人が、果林のライブを見て『好きになった』と言っていました。果林の熱意はしっかりと届いていました。
そして、同じく観客席にいた侑も、何か思っているかの如くステージの方を見ていました。第1話にて、『夢を追いかけている人を応援できたら何かが始まる。そんな気がしたんだけどなぁ』と言っていた侑。1〜9話まで同好会のみんなの歌を聴き、パフォーマンスを見続けていた彼女の中で、ここにきてその『何か』が始まったのでしょうか。果林のステージを見ていた彼女は、一体どんなことを考えているのでしょうか。次回以降の掘り下げに期待です。
感想・総括
今回は虹ヶ咲の個人回シリーズのラストで、そのトリを果林が務めました。『vivid world』のカッコ良さもあり、果林のことがもっと好きになりました。
原作スクスタの果林といえば、キズナエピソードはともかく、メインストーリーではいい感じの活躍の場に恵まれたとは言い難く、それでいてテスト回などでいわばポンコツな部分がフォーカスされてしまうなど、正直に言ってしまえばどうしても締まりのない人物という印象を嫌でも抱いてしまうという不幸なキャラだなと思っていました。別に残念な美人という属性やギャップ萌え自体は嫌いではないですが、やはりビシッと決めるときは決めて欲しい、そういう場面が欲しいと思っていました。その点アニメ版では、今回の第9話がそうであったように多少ポンコツな面が見られても決めるときはしっかり決めてくれたと思います。やはりギャップ萌えは、カッコよく見える部分もきちんと描かなければギャップにはなりません。
アニメ第1話から今回の第9話までの果林は、自身が実際の仕事として芸能活動をしている背景もあってかシビアな発言が多いものの、仲間のことは大切にする人物として描かれていたと思います。競争心や向上心は強いけど、仲間意識も強い人物でした。そんな果林の活躍はこれからも楽しみです。
また、今回は当番回のラストということもあり、虹ヶ咲アニメにおける一つの集大成であったと思います。今までの話の中で多かれ少なかれ触れられてきた『違う価値観同士が共存し合える場所こそ理想(2話、3話)』、『ときには譲らない姿勢も大事(3話)』、『ステージの上では1人だけど支えてくれる人が近くにがいる(4話、6話、7話、8話)』といったテーマを決算して『仲間でライバル(9話)』という形に練り上げて昇華し、この作品のコンセプトが本格的に形を成した話であったと思います。ソロの集まりでありながらも同好会という形をとっている理由がこれで明確になりました。そういう意味では、今回当番を務めた果林はやはり大役だったと思います。
next虹ヶ咲
Cパートにて、せつ菜の提案で同好会は合宿に行くことになりました。合宿回はやはり「ラブライブ!」シリーズの伝統であるようです。
そして次回のタイトルは、『夏、始まる』。まだ春だったのかと突っ込みたくなりますが、予告では侑の方にスポットが当たっていました。合宿回であると同時に彼女の個人回でもあるのでしょうか。
次回も楽しみにしています。
それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。