『あなただからできること』虹ヶ咲アニメ第10話「夏、はじまる」感想
虹ヶ咲のアニメも第10話を迎え、いよいよ終盤に入りました。今回の第10話は、スクールアイドル同好会の合宿回であり、“アニメのあなたちゃん”こと主人公・高咲侑の実質的な個人回でもありました。そのためか、今回は虹ヶ咲アニメでは初のライブシーンがない回でした。
今回のお話は第5話ぶりにサブライターの伊藤睦美さんが脚本を担当しました。
それでは、前置きはこのくらいにして本題に移ります。
目次
内容の振り返り
期末テストを終え、夏休みムードに突入しかけている同好会メンバー達、かすみの点数はとても悲惨でしたが、スクールアイドル同好会としての活動も何かしらしなければならないため気持ちを切り替えていきます。
夏休みに入ったということで、第9話の頃から触れられていたある計画を実行に移します。すなわち、合宿です。
合宿はせつ菜の発案であり、そのせつ菜自身が合宿に行くにあたってどうやって厳しい親の目を誤魔化せたのか、せつ菜推しとしては気になりますが、次回以降で触れられるのでしょうか。
オープニング明けで同好会のみんなは合宿の場所に行きます。しかし、そこはいつもの虹ヶ咲学園の校舎でした。
しかし、校舎と敷地そのものの規模が大きいこともあり、寝泊まりできる場所も充実していました。どうやら研修施設であるみたいです。同好会一同はその施設の和室に泊まることにしました。
宿に着いた時間はだいぶ遅かったらしく、夕飯タイムに入ります。彼方が焼いているピザが、さすがライブデザイン科という感じでとても美味しそうです。
一方で、せつ菜も夕飯作りに参加していましたが、彼女は料理がとても下手らしく、キッチンでダークマターを生成していました。
ちなみにそのダークマターは彼方の手によって食べられる程度の味に仕上がり、食品ロスを防ぐことができました。
夕飯のシーンにて、『楽しくて合宿だってことを忘れちゃいそう』、『たまごパーティーがしたい』などとみんながお遊びムードに入りかけている中でせつ菜が『自分達の合宿は普段やらない練習やこれからのライブの予定を練るためにある』と再度合宿の目的を確認させたのに釣られて侑が9話のDiver FESでの出来事を振り返っていました。それを受けて、まずはかすみが『かすみんのめちゃかわパワーで、お客さんをメロメロにしちゃいます』、続いてしずくが『自信を持って自分を表現したいです』、彼方が『彼方ちゃんはベッドの上でリラックスしたいなぁ』、愛が『ライブでダジャレをぶちかましたい』、エマが『来てくれた人達と手をつないで踊ったりしたいな』、璃奈が『オンライン中継で離れた人ともつながりたい』、果林が『Diver FES以上に本気の私を見せるつもりよ』、せつ菜が『私は、私の大好きを叫びたいです』、歩夢が『ステージに立つだけで胸がいっぱいになっちゃいそう』と、皆次々にバラバラな願望を言っていました。侑はそんなみんなのことを『バラバラだ』と言いながらも、『個性がぶつかり合ってお互いを刺激し合えるような』楽しいライブができそうだと言いました。ソロの集まりでそれぞれの方向性が違う虹ヶ咲だからこそ、侑のような非アイドルの目線でみんなを客観的に見てくれるサポートメンバーが光るのかなとも思えます。
侑の発言を受けて、せつ菜も『バラバラな私たちだからこそできるソロステージの集合、そんな虹ヶ咲のライブがしたいです』とまだ見ぬ次のライブへの熱意を高めていました。それに続いて愛が『ゆうゆ(侑のあだ名)はどんなライブが見てみたい?』と聞くと、『私は、みんなのライブが見れるだけでときめいちゃう』と答えました。こうしてスクールアイドルメンバー達にただ純粋でまっすぐな好意や応援の気持ちを向けているところも、侑の好感が持てる部分だと思います。
夕飯の後の皿洗いは、侑と歩夢が一緒にやっていました。
皿洗いの最中に二人は小学校の林間学校のことを思い出す、などと思い出話に花を咲かせていました。歩夢が侑に『これからもずっと一緒にいたりして』と言うと侑が『よろしくね、歩夢おばあさん』と茶化すなど、高齢になっても仲良くしていくつもりらしいことが伺えました。
同好会が泊まる部屋ではかすみ、しずく、璃奈の1年生組が合宿の定番(?)であるおばけに扮装してみんなを驚かす遊びのために部屋を留守にしていました。一方で、侑の姿もありませんでした。
侑はどこに行っていたのかというと、夜の学校の音楽室のピアノでせつ菜の持ち歌の一つ『CHASE!』を弾いていました。
同好会のみんなが、それぞれ自分のやりたいことがはっきりしているがために、自分も何かしたいと思っていました。そのためかピアノもみんなの見えないところで練習していたらしく、第3話でぎこちなく単音を弾いていた頃に比べて上手になっていました。それもそうですが、『CHASE!』は侑が自分をスクールアイドルの世界に引き込んでくれた曲ということもあり、彼女の中では本当に特別な存在であることがわかります。
ピアノを弾いているところを、侑を探しに来たせつ菜に見つかり、そこから2人は話を始めます。ここでのせつ菜と侑の会話が大変印象的でした。
せつ菜は侑に、『私が今スクールアイドルを続けられているのは侑のおかげです。侑さんの言葉がなかったら、きっと私は大好きを叫べないまま自分を押し殺して生きていました。私の大好きを受け止めてくれてありがとう』と話していました。侑もせつ菜に、『せつ菜ちゃんやみんなの歌を聴くと、すっごく元気がもらえるんだ』と言いました。せつ菜もまた、『いつか侑さんの“大好き”が見つかったら、今度は私に応援させてください。侑さん自身の大好きを』と言いました。
せつ菜と侑の関係は、大好きを発信するアイドルとそれを受け止めるファンといった感じで、個人的に虹ヶ咲でとても好きな要素の一つです。そして今度は侑自身の大好きをせつ菜の方から応援したいという流れになるのもまた美しく思います。ファン目線のキャラである侑だからこそ、第3話で期待の呪縛に囚われていたせつ菜を救うことができたと思っているので尚更です。
部屋へ戻る途中、せつ菜が転びそうになったところを侑が抱き止めて支えます。
その様子をなんと、せつ菜と同じく侑を探しに来た歩夢に偶然見られました。
一見するとイチャイチャしているように見えてしまう2人の様子を見る歩夢の表情は不安げに曇っていました。
部屋にて、かすみ達が部屋にいるメンバーを驚かそうと帰ってくると、果林、彼方、エマに、逆に驚かし返されてしまいました。それをせつ菜に叱られた後、みんなは寝る時間に入りました。この時かすみがいたずらを仕掛けようとしたところ、眠ったままのせつ菜が枕を投げてきたため阻止されました。せつ菜は『ねごと(ポ○モンの技の一つ)』を覚えているか、雷の呼吸の素質が備わっていそうです。
歩夢はというと、皿洗いのときに『ずっと一緒にいるのかな』と侑と話し合っていた後でせつ菜と侑が仲睦まじそうにしている現場を見てしまったためか、寝ているときもどこか不安そうな顔つきをしていました。このときの歩夢はおそらく、侑の関心が幼馴染の自分から遠のいていってしまうのかもしれないと考えていたのかもしれません。
翌日から練習が本格的始まりました。最初はランニングをしていましたが、単調な練習に皆飽きてきたためか、かすみの機転で鬼ごっこに以降しました。鬼ごっこの内容はケイドロ(またはドロケイ)であったらしく、侑は鬼役の彼方に捕まって牢屋(に見立てた部室)に囚われてしまいました。
牢屋という名の部室にて、侑はパソコンでスクールアイドルの動画を見ていました。内容は、Diver FESにおける果林のライブと、東雲学院、藤黄学園のライブでした。
Diver FESが自らのチャンネルを持っていたことと、果林の動画が何気に10万回も再生されているのは驚きです。
それはさておき、侑は東雲学院と藤黄学園の動画のコメント欄もチェックしていました。今までのシリーズに比べ、ネット上と現実含めて一般人のスクールアイドルへの反応が細かく描かれているところも虹ヶ咲アニメの面白い部分だと思います。
それらの動画をみて、侑は何かを思いついた様子を見せました。
ランニングでみんな汗だくになったため、夜は学内のプールでリフレッシュしました。ここにきて水着回の需要も満たしてくれました。
みんながはしゃいでいる中で、侑と歩夢が2人で何か話していました。
侑は歩夢に、『スクールアイドルの夢を一緒に見てくれるって言ってくれたの、すごく嬉しかった。あのとき歩夢が勇気を出してくれたおかげなんだ。歩夢の夢を一緒に追いかけて、今の私がいる』と第1話の出来事を振り返りながら話していました。
こうして歩夢の侑に対する『自分への関心が薄れている』という誤解は解けた…とこのときは思っていました。
侑がその後に、『そして、みんなも』、『周りにどんどん広がっていって、スクールアイドルが好きな人達が集まって、いつのまにか大きな力になってた。ありがとう歩夢』と続けたため、歩夢は再び不安げな表情を浮かべました。
そうこうしているうちに、お台場の夜空に花火が上がり、みんなの関心がそちらに向いたところで侑がある提案を出しました。
『スクールアイドルもファンも、全部の垣根を超えちゃうような、ニジガクとか東雲とか藤黄とか関係なく、スクールアイドル好きみんなが楽しめるお祭りみたいなライブ。 知らなかったスクールアイドルに出会ったり、ファンの熱い声援に勇気をもらえたり、そこにいるみんなの心が強く響きあって、新しい“大好き”が生まれる。 そういう場所でみんなにも思いっきり歌ってほしい!』
『アイドルじゃない私だからできることもあるって思うから。 私もそこから何かを始めたい!』
『スクールアイドルとファンの垣根を越える』という部分を押し出すところも、ファン目線の主人公である侑らしい一面であると思います。みんなも侑の提案に乗ってくれました。
そして侑はこの催しを、スクールアイドルのお祭り、『スクールアイドルフェスティバル』とここで名付けました。おそらく、前回の『Diver FES』にインスパイアされたネーミングでもあるのかなと思います。3話でラブライブ大会には出なくても良いとしましたが、ここでまさしくラブライブに出なくてもスクールアイドルが輝ける場所を作れるという着地点に持って来れたのは見事です。
スクールアイドルフェスティバルに向けてメンバーは一致団結……と思いきや、歩夢だけは先程の出来事もあってか、いまいち乗り切れていない様子で第10話は幕を閉じました。
感想・総括
まさか、アニメの時空でもスクールアイドルフェスティバルを開く展開になるとは思いませんでした。おそらくこれが物語終盤のキーになるのでしょう。
今回の話では、高咲侑という人物が第1話以上に鮮明かつ詳細に見えてきました。今後の活躍にも期待したいです。
思えば虹ヶ咲のアニメの第1〜9話までは、第5話までに仲間集めが完了し、第6話からはファンタジック演出ではなく実際のステージでのライブシーンが増え、他校との繋がりも増えるという物語のスケールが少しずつ広がっていくという構成になっていました。彼方の妹・遥のスクールアイドル設定を残した上で他の東雲学院の面々や藤黄学園の面々と共に登場させたのも、単なるファンサービスではなく第10話で物語が転換点を迎えるにあたっての布石であったと思います。スクールアイドル同好会のみんなのパフォーマンスを見てきて、他校とのつながりも得た侑だからこそ、スクールアイドルフェスティバルの提案を出せたのかなと思います。第1〜10話はまさに、第1話で述べていた『夢に向かって頑張る誰かを応援できたら何かが始まる気がする』というところから、同好会のみんなとの交流を通して侑自身がやりたいことを見つけるまでの話でもあったと思います。
そして、スクールアイドルフェスティバルという名の一つの『みんなで叶える物語』の中心になってみんなを巻き込んでいく姿は、アイドルキャラでこそありませんが高咲侑も紛れもない「ラブライブ!」主人公と言えるでしょう。虹ヶ咲のラブライブ大会に出ないスクールアイドル活動も単なる自己満足ではなく、スクールアイドルフェスティバルを通して、せつ菜から侑と同好会メンバーへ大好きが繋がっていったように、他の誰かに“大好き”のバトンを繋いでいけるようになるという部分が素晴らしいと思います。その一方で、今までの主人公とは違い、アイドルキャラとの交流を深めて物語がある程度進んだところで自分のやりたいことを見つけるという部分も新鮮であり、ファン目線の主人公らしい部分でもあると思いました。また、ピアノが上達していたことも、今後の展開に関係してきそうなので楽しみです。
next虹ヶ咲
スクールアイドルフェスティバルに向けて一致団結ムードがある中で、1人だけ気が進まなさそうな様子の歩夢。第11話のサブタイトルの文字はピンクも混ざっており、彼女の葛藤はそこで解決されるのでしょうか。幼馴染の侑の夢が際限なく広がっていく中で、ただ侑と一緒のスクールアイドルの夢を追いかけたかった歩夢とは気持ちのすれ違いが生じていると思います。
そして、予告のせつ菜の表情が何やら気になりますが、彼女も何かあるのでしょうか。
それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。