澄田さんは広めたい 第2話「たまこまーけっと 」
初めまして。初めてではない方はお久しぶりです。澄田兼鈞と申します。
『澄田さんは広めたい』シリーズの第2話、今回紹介する作品はこちら。
2013年1月〜3月にかけて全12話放送された、京都アニメーションのオリジナルアニメです。監督は山田尚子氏、脚本は吉田玲子氏、キャラクターデザインは堀口悠紀子氏と、「けいおん!」の主要スタッフが集結しています。ただし、作風は「けいおん!」とは色々な意味で対照的です。
2014年には、劇場版にして完結編となる「たまこラブストーリー」が公開されました。
前置きはこれくらいにして、作品の紹介に移ります。
目次
○あらすじ
うさぎ商店街にある餅屋の娘、北白川たまこは、お餅と生まれ育った商店街のことが大好きな高校1年生。 商店街が忙しくなる年末に突然、高飛車な鳥がやって来る。 人の言葉を話すその鳥は、ひょんなことからたまこの家に居候する事になって…?
1.ストーリー・作風について
あらすじの通り、現実にありそうな商店街に突然人語を話す鳥がやってくるというちょっとしたファンタジーです。その鳥もなかなかいいキャラをしていますが、主人公のたまこと商店街に住む人々との交流がストーリーの主軸になっています。その交流も、とても温かみがあります。
ちなみに、舞台となるうさぎ山商店街は、京都にある実在の商店街がモデルとなっています。
2.登場人物・用語
①主な登場人物
主人公。うさぎ山商店街にある餅屋「たまや」の娘。明るく元気で人情に厚い。反面、色恋には疎く、自分に向けられる好意や他人の恋愛事情には鈍感。餅が大好きで、実家の店の手伝いを進んで行い、その腕前も天才的。
南の国から王子の妃を探すために日本にやってきた喋る鳥。高飛車な性格でウザがられることもあるが、その実紳士的で大事な場面では身を慎む。元々は痩せていたが餅の食べ過ぎで太った。
名前が『でら(名古屋弁で「すごい」という意味)、餅不味い』と空耳されやすい。
何故か映写機の機能も付いている。
○大路もち蔵
たまこの幼馴染で、たまやの向かいにある餅屋「大路屋」…改め「rice cake oh zee」の一人息子。外見はチャラそうだが面倒見の良い人物。映画研究部所属で映像に対しては割と真面目。たまこのことが好きでずっと片思いしている。
○北白川あんこ
たまこの妹。餅屋の娘だが餅は嫌い。一人称は「あんこ」だが、他人には自分を「アン」と呼ばせようとする。小学生だが、姉に比べるとおませささんな印象を持たれやすい性格。
あずにゃんの幼少期ではない
○常盤みどり
たまこの友人で高校の同級生。うさぎ山商店街の玩具屋の娘。サバサバとした性格で男女問わず人気があるらしい。時々、もち蔵に謎の対抗心を燃やすこともある。
○牧野かんな
たまこの友人で高校の同級生。ボソボソ口調で喋る。将来の夢は大工で、物の修理が得意。たまこ、みどりと共にバトン部に所属する。
○朝霧史織
たまこ達の同級生。眼鏡が似合うクールビューティー。引っ込み思案な性格で人付き合いが少々苦手。デラに惚れられる。
○北白川ひなこ
たまことあんこの母。たまこが小学生五年生の頃に帰らぬ人となっており、その葬式の日の出来事がたまこにとってトラウマになっている。
写真はひなこが高校生時代のもの。
②主な用語
○うさぎ山商店街
物語の主な舞台でたまこ達が住む商店街。魚屋や豆腐屋、銭湯、玩具屋、花屋など、色々な店が並ぶ。モデルは京都にある実在の商店街。
○たまや
たまこの父豆大と祖父の福が経営する餅屋。商品のラインナップは豆大福やおはぎなど、基本に忠実。
○rice cake oh zee(大路屋)
もち蔵の父、五平が妻と共に経営する餅屋。たまやとはお向かいある。時代に取り残されまいとする五平の方針により、ハロウィン餅やおせち餅などのイロモノを作っている。
○南の国
デラの出身地。物語後半では重要なポジションに入ってくる。
3.「たまこまーけっと 」の見どころ
①温かみのあるストーリー
「たまこまーけっと」は、全体的に見ればほのぼのとした作品ですが、主人公のたまこ自身の悲しみににも重点を置いています。軽くネタバレになってしまいますが、たまこの母の葬式があった日は商店街を挙げての葬儀であったため、うさぎ山商店街が一時的にシャッター商店街になってしまいます。そのときの光景がたまこの中でトラウマになっています。たまこ自身は、明るく賑わっている商店街や、そこで暮らす友達やご近所さん達の笑顔が好きだからこそ、葬式の日のシャッター商店街がトラウマになっていると思われます。ただし、流石に全12話通してこのように重たい話をやるわけではなく、コメディタッチな話やほのぼのとした話が多数を占めています。楽しいけど決して不変のものではない日常の中で、人と人とのつながりの温かみを再確認できるところも、「たまこまーけっと 」の魅力の一つだと思います。
②とにかく登場人物を応援したくなる
「たまこまーけっと 」は、話数が短い中でも、それぞれの登場人物が店の仕事や部活動、友達付き合いにせよ恋愛にせよ、様々なことを頑張っている様子が多く描写されています。彼らは不器用ながらもそれぞれのことを一生懸命やろうとしているので、見ていて応援したくなってしまいます。自分は特に、もち蔵の片思いやあんこの恋愛、みどり達の部活動の様子を応援したくなりました。劇中の人物達も、自分以外の人を応援しているため、よりストーリーの温かみが出ています。
○あとがき
今回は、「たまこまーけっと 」を紹介させていただきました。やっぱり吉田玲子さんはいい話を書きますね。
「けいおん」のスタッフが揃っておりますが、「けいおん」とは対照的な作風であると冒頭で触れましたが、どういうところが対照的かというと、男性キャラクターが多めに登場するというところがまず一つ挙げられます。それから、個人的に一番対照的だと思ったのは、登場人物の『悲しみ』にもスポットを当てている部分です。「けいおん」の平沢唯は(少々大袈裟な言い方をすると)悲しみとは無縁そうな人物なのに対し、たまこは悲しみを背負っており、そこから幸せの形を再確認していく話が「たまこまーけっと 」なのかな、と思います。
「たまこまーけっと 」の話自体は、劇場版にして完結編となる「たまこラブストーリー」で完成すると捉えています。「たまこラブストーリー」は、主人公たまこが変化に向き合う話であり、もち蔵の視点から見れば、たまこへの片思いに決着をつける話であります。そちらの方も機会があれば追々紹介したいなと考えていますが、まずは「まーけっと」の方を見ていただけたら嬉しいです。
それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!®️