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『物語の結末は、まぁいいでしょう』-仮面ライダーセイバー感想・総括

 初めまして。初めてではない方はお久しぶりです。澄田兼鈞と申します。

 今回は、「仮面ライダーセイバー」が最終回を迎えたということで、同番組の感想・総括を書いていきたいと思います。この記事は筆者と同じく仮面ライダーセイバーを視聴した人に向けて書いたものであり、最終回および本編未視聴の方はネタバレ注意です。それから、長文過ぎて色々散らかっています。そこはご了承ください。

 最初に簡単な感想を述べておくと、『やりたいことはわかるけど作品そのものには乗り切れなかった』というものです。面白いか面白くないかで判断するなら、自分は『面白くなかった』と思っています。

 前置きはこれくらいにして、詳しい感想に移りたいと思います。

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目次

 

1.ストーリー全般について

 セイバーのストーリーのあらすじは、小説家の主人公・神山飛羽真が幼い頃にとある剣士から託されたワンダーライドブックの力で仮面ライダーセイバーに変身し、ソードオブロゴスという組織に入って本の力を悪用するメギド達と戦うというものです。その中で、ライドブックの力の根源であるワンダーワールドと現世の均衡も守らなければならないという流れも組み込まれていきます。

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 第1話では、冒頭での世界観の説明やワンダーワールドの登場など、やたらに情報量が多かった印象です。そのことは以前の記事にも書きました。

仮面ライダーセイバー第1章感想『結末は誰がどう決める?』 - 澄田さんは綴りたい®︎

 その後は近年のライダーらしくサブライダーが多く追加されていくことになりますが、主人公や追加されたライダーのキャラが立つ前に人数だけ増やしていっている印象が拭えませんでした。しかもその追加されたキャラも、属性だけを登場回で提示してその後は出オチという印象が強かったように思います。

 例えば仮面ライダーバスター/尾上亮は子連れのベテラン剣士という属性を引っ提げて登場しました。登場した第3話ではベテラン剣士らしい頼れそうな戦いぶりや息子に危機が迫ったときに取り乱す様子が見られましたが、それ以降は自身の属性を発揮する機会に恵まれなかったと思います。一応フォローしておくと、ストーリー中盤にて息子に自分が戦う理由を問われたときに、彼なりにそれを力説していたところは良かったと思います。

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 仮面ライダー剣斬/緋道蓮は、強さを求めていることを度々強調していましたが、その強さを求める理由が見えてこなかったです。テンションの明るい演技と台詞回しから、言い方は悪いですがサイコパスみたいに見えてしまいました。中盤で飛羽真と対立してからは戦闘でメギドよりも飛羽真を優先して攻撃するなど、見ててストレスが溜まる場面もありました。終盤のデザストとの絡みは、中盤あたりでやるべき内容だとは思いましたが、彼の成長にはつながったのかなと思います。

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 仮面ライダーブレイズ/新堂倫太郎も、序盤こそは今までの2号ライダーとは違い最初から好印象だなと思いました。中盤以降は飛羽真の話を頑なに聞こうとしない、初登場時とは真逆な態度が目立ちました。彼の場合は大方話の都合に振り回された故にこうなったと思いますが、キャラの方向性は見えづらくなってしまいました。

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 ここではブレイズ、バスター、剣斬を例に挙げましたが、セイバーのキャラは『登場回で属性を提示して、その後は属性があまり活かされない』、『出オチ』というパターンが多いと思いました。それは主人公の飛羽真も当てはまり、小説家という職業を上手く活かした展開はあまり見られませんでした。『文豪で剣豪』というキャッチコピーも、尚更出オチに思えました。その上にメギドと戦う動機付けも弱く、大切な存在であるはずのルナとの思い出も掘り下げが今ひとつで、何がしたいのかわからない主人公という印象を序盤〜中盤時点では抱かずにいられませんでした。一応フォローしておくと、中盤の後半あたりからはルナにスポットがよく当たるようになった分、少しではありますが彼の戦う理由については『まぁわからなくも無い』と思えるようになりました。

 ヒロインの須藤芽衣も、特に戦闘では何かするわけでもないのに何かとでしゃばって来てということを繰り返しており、このキャラは最後まで何がしたいのかわからなかったです。仮面ライダーファルシオン/バハトを説得する場面もありましたが、そのバハトが飛羽真に一刀両断されたため彼女の活躍には意味があったとは思えませんでした。そもそもバハト自身に彼女の言葉は届いていなかったと思うので、そこは芽衣がどうあがいても焼け石に水だったのでしょう。

 個人的に序盤の時点では、『父の因縁とその真相を探る』というはっきりとした目的のあった富加宮賢人/仮面ライダーエスパーダの方が主人公に見えました。

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 ライダー変身者については、人数が通算で多く、その追加過程も駆け足であったために、キャラが立っていないライダーも多かったと思います。同じく多人数ライダー制を取った龍騎や鎧武は、退場するライダーも少なくなかった分、それぞれにきちんと見せ場がありました。物語後半では仮面ライダーサーベラと仮面ライダーデュランダルの神代兄妹も仲間に加わりますが、マスターロゴスを見限る過程も駆け足でした。

 敵勢力メギドも『何か悪いことしている』というのはわかるのですが、ワンダーワールドの力を独り占めしてどうしたいのかということが明確でなかったために感情移入しづらかったです。終盤ではストリウスが暗躍していましたが、序盤のころから終盤くらい弾けていれば個人的には好みでした。

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 仮面ライダーカリバーも同様で、真理を求めるという割にはその真理がなんなのか、真理を得てどうしたいのかがわかりませんでした。

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 セイバーの人物描写全般についてまとめると、『属性を提示した後は出オチ』、『目的がはっきりしないため最初から感情移入するのが難しい』と思いました。

 

 中盤に入ると、サウザンベースの使者、仮面ライダーサーベラ/神代伶花の策略によって飛羽真の元から倫太郎達が離れていき、対立する様になりました。この展開には正直違和感を感じました。まず、倫太郎達は少なくとも飛羽真とは数ヶ月共闘しているわけです。それなのに、『飛羽真』は組織を裏切るという伶花の言葉を簡単に信じるのは、騙されやすいにも程があると思いました。

 『乾巧ってやつの仕業なんだ』で有名なやりとりを彷彿とさせる展開ですが、彼方は草加自身が巧(ファイズ)に変装して木場に巧への悪印象を植え付けていた分、余計杜撰に感じました。

 飛羽真も飛羽真で、このやりとりの前に仮面ライダーカリバー/上條大地から組織の裏側について少し聞いていましたが、この時点で彼の言葉を信じるには判断材料が少な過ぎる印象でした。

 話を聞かない倫太郎や蓮。年長者なのにメギドそっちのけで勝負を仕掛けてくる尾上や大秦寺哲雄/仮面ライダースラッシュ。説得に適切な言葉選びをしない主人公。中盤ではこのようなストレスの溜まる展開が続きました。そのときから登場した仮面ライダー最光/ユーリは飛羽真陣営の味方をしてくれましたが、『もっと話し合いをするべきでは』と思うシーンなど、ツッコミどころもありました。仲間割れの最中に飛羽真はパワーアップするのですが、それもトントン拍子で熱さを感じづらいものでした。暴走フォームのプリミティブドラゴンは、敵であるストリウスの手によって飛羽真の手にやってきたもので入手過程でドラマを欠いていたと思います。そもそも仲間割れの最中に暴走フォームを出せば余計に話が拗れると思いました。

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 プリミティブドラゴン克服のためのエレメンタルドラゴン入手では、部分的に面白いと思う箇所もありました。ですが、プリミティブの本の中にいる少年を救う話で飛羽真の仲間達があまり絡まないかったことと、その少年がそれ以降の展開で活かされなかったことが少し残念でした。

 その一方で、倫太郎や蓮のような若手よりも先に尾上や大秦寺のような年長者が組織に見切りをつけていく構図は中々面白かったです。

 飛羽真達が和解したあとは、ブレイズのタテガミ氷獣戦記習得などの良さげな展開もありました。特にタテガミ氷獣戦記習得回とそれ以降の話は、それまで組織の自分は人間だからという理由でしか戦ってこなかった倫太郎が成長し、目の前の人を守るために自ら戦える剣士になれた素晴らしいエピソードだと思いました。

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 倫太郎だけでなく、中盤の後半に差し掛かると各キャラの成長も深く描かれるようになり、序盤と中盤前半の欠点は改善されたかのように思えました。

 しかし、マスターロゴスが本格始動するようになると、仲間割れ以来の駆け足な展開が目立ちました。Twitterや動画サイトで『セイバー坂』として注目されているシーンの回では、剣士達があっさりとブックと剣を奪われました。バハトに対抗するために劇場版以来エモーショナルドラゴンが登場したときも、何故か敵であるマスターロゴスの力を何の疑いもなく借りていました。極め付けにはセフィロトに囚われたルナが唐突に光の坂を召喚し、それを登っていった飛羽真があっさりとルナを助けるという展開がありました。この時は映像面も雑な作りであったと感じています。

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 仲間割れとルナ救出については、何の前振りもなく作り手が狙った展開が強引に進められているという印象を受けました。

 セイバーの最強フォームであるクロスセイバーを習得する回では、セイバー坂の回とは見違える映像美を見せてくれたと思います。しかし、そのクロスセイバー入手前に世界に絶望して悪に堕ちたバハトに飛羽真が『あんたは勝手に絶望していただけ』と言い切った部分はやってしまったなと思いました。人に裏切られて絶望した悪役に自己責任を問うのは理不尽にも程があるように見えました。

 クロスセイバーの習得、マスターロゴス打倒から物語は終盤へと動いていくことになります。

 

2.設定など

 仮面ライダーセイバーは、ファンタジーをベースにした設定となっています。しかしその設定も上手く活かせていない部分もあったと思います。

 セイバーではワンダーワールドという異世界が重要な鍵を握っており、ライドブックの力もそこからもたらされたものでした。序盤ではメギドを追って度々ワンダーワールドに行くこともありましたが、中盤で人間がメギドになる展開が始まってからはワンダーワールドの掘り下げも少なくなっていきました。ソードオブロゴスはワンダーワールドと現実世界の均衡を守るために戦っていると触れられていましたが、ワンダーワールドについての情報不足が目立ち、世界の均衡が崩れることへの危機感が伝わりづらかったように思います。そのワンダーワールドが現世にもたらす危機についても、キャラの台詞だけでしか触れられていませんでした。

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 あえて過去作を引き合いに出しますが、龍騎のミラーワールドならミラーモンスターが人間を捕食しに現世にやってくる、鎧武のヘルヘイムの森ならそこから来る植物によって地球の生態系が壊され、その植物の果実を食べた生き物はインベスになってしまうという目に見えた脅威を実際に描写していました。故に、主人公達がそれらをどうにかしないといけないと考える様子に説得力を持たせられていたと思います。


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 セイバーのワンダーワールドは過去作の異世界設定に匹敵する危機感の描写が希薄でした、だから主人公達が世界の均衡を守るために戦う姿にも、メギド達が世界を意のままにしようとする思惑にも感情移入しづらかったと思います。

 世界をつなぐ少女についても、彼女達がどこから現れたか、また、ワンダーランドに干渉できる力はどこからもたらされたのかの掘り下げが少なかったです。セカイ系のアニメの影響を感じる設定だなと思いましたが、ただそれだけに見えました。

 

 ライダー達の装備の名前についても少し違和感がありました。世界観はナルニア国物語ハリーポッターのような西洋ファンタジーをベースにしていましたが、装備の名前が『火炎剣烈火』、『水勢剣流水』など和風ファンタジーっぽい名前なのがミスマッチだったと思います。それについては見ているうちに慣れました。

 

 他にも、ソードオブロゴスに所属するライダー達の生活背景がハッキリしなかったのも難点でした。小さい頃から組織に育てられた倫太郎のような人もいれば、賢人のように親子で組織にいながらも人並みに俗世間に触れている人もいました。それから、蓮が大晦日の行事について知らない様子などもあり、彼らの生活背景はきちんと考えられているのかと引っかかる部分もありました。あえてその辺はファジーにしているという見方もできるのでしょうが、個人的にはその辺もハッキリした方が良かったと思います。

 

3.そして迎えた最終回

 もう公式サイトでも見ましょうよ。

セイバー 第46章:「さようなら、私の英雄。」 | 仮面ライダーWEB【公式】|東映

 と言うとこの記事を見ていただく意味がなくなってしまうので、最後までお付き合いください。

 ラスボスのストリウスはかつて詩人であり、数々の素晴らしい作品を残していたそうです。しかしそれも全知全能の書にあらかじめ書いてあったもので、自分は知らず知らずのうちにそれの後追いをしていたに過ぎなかったことに絶望し、世界を滅ぼすことを決意しました。それに対する飛羽真は、それでも人間は新しい物語を作っていける、だからそれを終わらせてはいけないという意思を持ってストリウスに挑みました。そして仲間達やルナも力を貸してくれて、ついに巨悪を撃って世界を救いました。本筋には全然関係ないと思われたプリミティブの少年も飛羽真の背中を押してくれたことには驚きました。飛羽真とプリミティブの少年の絡みが活かされた結果でしょう。

 「仮面ライダーセイバー」が伝えたかったことは、ストーリー中盤でも触れられていた『人が世界を作る』というもの。いわゆる人間賛歌的なテーマだったと自分は踏んでいます。最終的に人の想いから新たなワンダーワールドが生まれたことも、それを表していると思います。ですが、それならそれでもっとキャラの掘り下げを全編かけて真面目にやるべきだったと思いますし、仲間割れなどの寄り道も多過ぎたように思います。ワンダーワールドが消えると現世も消える理由は、現世の文明がワンダーワールドからもたらされたものだから、起源がなくなればその産物も消えるという理屈だったとわかりました。それならワンダーワールドの掘り下げもやっておくべきでした。終盤で触れられた『物語』の大切さも、中盤時点で飛羽真の小説家設定が活かされず、ストリウス戦でぽっと湧いたものに見えました。だから全体的な納得感を欠いたように思いました。余談ですが最終回は、まだ救いのあった「まどマギ」という印象を受けました。それから、最後のパワーアップではブられた神代兄妹は何気に可哀想でした。

 

 劇中の全ての出来事が全知全能の書のシナリオに沿ったものであったとストリウスから説明されていましたが、そこに関しては醒めてしまう視聴者もいなのではないかなと思います。自分はそちら寄りの人でした。ただし、セイバーのテーマ自体は全知全能の書のシナリオを超えて人が新たな世界を作るというものでしょうから、とりあえずそこだけは良しとします。

 

 とはいえ、少なくともしこりを残すような終わり方ではなかったと、自分は考えています。そこは評価したいと思います。

 

あとがき

 「仮面ライダーセイバー」、一年間お疲れ様でした。流石に同じスタッフのゴーストよりはテレビシリーズだけでも綺麗に終わらせようという気概は感じました。でもゴーストはVシネマや小説版が面白かったので、その分の評価を加味すればどうなるかはわかりません。

 あとは個人的な感想なのですが、昨年度の「ゼロワン」も、最終的な評価としては『面白くない』に1票を入れました。好きな人には申し訳ないですが、少なくとも自分は『令和ライダーはこれでいいのかな…』と思ってしまいます。『なんなら平成末期からこの調子だぞ』という文句はこの際受け付けないものとします。あくまで自分の感想ですので。

 次回作の「リバイス」には頑張ってほしいと思います。一応仮面ライダーも50周年ですので、令和ライダーとしては3度目の正直では収まらないところでしょう。とりあえずバトスピに実装されるのは楽しみにしています。

 

 それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。