澄田さんは綴りたい®︎

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澄田さんは広めたい第5話「プロジェクトセカイのユニット紹介」

 はじめまして、はじめではない方はお久しぶりです。澄田兼鈞と申します。

 気が向いたらたまにやる、自分が好きなものを紹介する『広めたいシリーズ』のコーナーも、5回目となりました。

 

 今回紹介するものはこちら。

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   Project SEKAI

  COLORFUL STAGE!  

   feat.初音ミク

 

 SEGAとクラフトエッグからリリースされている、ボーカロイドを題材にしたリズムゲームです。ファンからはプロセカの略称で親しまれています。使用されているボーカロイド曲は原曲そのままのものや、ゲームのオリジナルユニットがカバーしたもの、ゲームのために書き下ろされた曲まで様々な種類の曲があります。

 また、ストーリーパートではゲームオリジナルユニットのキャラクター達が織りなす物語も大変素晴らしく、ノベルゲームとしても面白いです。

 今回は、そんなプロセカのユニットの面々を紹介していきたいと思います。

 

目次

 

物語の鍵を握るvirtual singer達

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 いわゆるボーカロイドのキャラクター達のことを指す。プロセカに登場するのはクリプトンフューチャーメディア会社製のボーカロイドのみとなっているが、楽曲ではクリプトン製以外のボーカロイドが歌った曲も収録されている。

 プロセカのストーリーパートでは主要キャラ達の想いから生まれた『セカイ』と呼ばれる空間に住み、悩める少年少女達を導き成長を促すマスター的なポジションを担っている。また、全員どこかしらの劇中のユニットに出張している。

 

①キャラクター一覧

初音ミク(original voice.藤田咲

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 ご存知ボーカロイドブームの火付け役となったキャラクターで、ボーカロイド界のピカチュウ的存在。現実世界同様にインターネット上で様々な楽曲を歌う。大好物はネギ。

 プロセカのストーリーでは全ての劇中ユニットに出張しており、ユニットのコンセプトに合わせて姿を変えている。

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鏡音リン(original voice.下田麻美

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 パワフルで元気いっぱいな高音を特徴とする、明るい性格の女性ボーカロイド鏡音レンとは双子であり、良くケンカをするらしい。でも、レンのことはとても大切に思っている。

 プロセカのストーリーにおける出張先のユニットは、アイドルを題材にしたMORE MORE JUMPであり、ミクとセカイの中でよくライブを開いている。

 

鏡音レン(original voice.下田麻美

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 元気いっぱいな少年ボイスが特徴の男性ボーカロイド。一人称は『オレ』。リンとは双子で、よくケンカをするらしい。

 プロセカのストーリーにおける出張先のユニットはストリートミュージックが題材のVivid BAD SQUADであり、セカイのカフェでMEIKOにリンとケンカしたことをよく愚痴っている。コーヒーはブラックを頼みたがるなど、背伸びしたいお年頃。

 

巡音ルカ(original voice.浅川悠

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 日本語と英語の二カ国語に対応できるバイリンガルな女性ボーカロイド。大人しい性格。

 プロセカのストーリーではバンドユニットのLeo/needに出張しており、セカイでミクと一緒にバンド活動をしている。ギターを始め、様々な楽器を演奏できるため、Leo/needのメンバーに楽器を教えることもある。

 

MEIKO(original voice.拝郷メイコ

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 大人の魅力溢れる歌声が特徴の女性。意外と知られていないことかもしれないが、日本国内で最初に発売されたボーカロイド初音ミクよりも先輩である。性格は面倒見の良いお姉さんといった感じの人物。

 プロセカのストーリーではレンと共にVivid BAD SQUADに出張しており、セカイでカフェを経営している。美味しいコーヒーを淹れてくれる他、スイーツなどの料理も得意とする。

 

KAITO(original voice.風雅なおと

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 クールボイスが特徴の男性ボーカロイド。落ち着きがあって凛々しいお兄さん。アイスクリームが好きなのはあくまでも二次創作の設定。当然だが衣装に裸マフラーは実装されていない。ソフトの低売り上げからの躍進、10年以上にわたるネタキャラ扱いなど、ボーカロイドの中でも特に波瀾万丈な歴史を歩んできたキャラ。

 プロセカのストーリーではミュージカルを題材にしたユニットのワンダーランズ×ショウタイムに出張しており、セカイでミクと共にショーを開いている。また、ショーのシナリオを自ら考えている。

 

②その他のボーカロイドキャラクターについて

 プロセカに登場するボーカロイドキャラクターはクリプトンフューチャーメディア社のキャラのみであるが、楽曲は他社のボーカロイドが歌う曲も収録されている。例えば、GUMIが歌う『Echo』や『フラジール』、IAが歌う『チルドレンレコード』や『六兆年と一夜物語』などもある。その他にも、結月ゆかりの『チュルリラチュルリラダッダッダ』や音街ウナの『ポジティブダンスタイム』などのボイスロイドの曲も収録されており、恐るべき守備範囲を誇る。

 

③ミク達が住む『セカイ』

 プロセカのストーリーに登場する、現世とは別の次元にある謎の空間。劇中の人物からは『異世界』と言い表されることもある。

 ミク達曰く『誰かの想いから生まれた場所』であるとのことで、人によってセカイの姿形、情景は変わる。ミク達はそこで本人達に本当の想いを見つけてもらうための手助けをしている。

 スマホやパソコンに『untitled』という曲が入ると、それを再生することでセカイに行くことができる。誰かが本当の想いを見つけられると『untitled』がちゃんとした曲名を与えられ、プロセカのユニットストーリーはその『untitled』が本物の歌になるまでがゴールとなっている。

 

ゲームオリジナルユニット一覧

 ミク達とは別のプロセカのオリジナルキャラクター達からなるユニット。全部で5つあり、基本的にミク達を除けば4人ずつの少年少女達からなる。男女混合ユニットも存在し、女性層も意識したメンバーチョイスとなっている。声優陣は「アイドルマスター」シリーズで活躍している面子が何故か多い。

 ユニットごとにコンセプトが違い、ユニットごとに別々のストーリーが用意されている。

 なお、全員東京都の渋谷に住んでいる。

 

Leo/need

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 すれ違いを乗り越えた幼馴染バンド。略称は『レオニ』プロセカ劇中では唯一のバンドユニット

 幼馴染バンドというコンセプトの通り、全員が小学校からの顔馴染み。ストーリーではメンバー達がすれ違いを乗り越えて友情を取り戻すまでの話を描いており、まさしく青春ドラマといった感じの作風。

 

①メンバー

星乃一歌(cv.野口瑠璃子

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 Leo/needの主人公格でギター担当。クールな印象を受ける見た目とは裏腹に友達想いな優しい少女。中学に上がってから友人達との間に距離ができてしまい、高校に上がってからは幼い頃の友情を取り戻そうと奮闘する。初対面の相手には同い年でも敬語で接しがち。

 バンド自体は4人で幼いころからやっている。また、そのバンドでミクの曲を演奏したり、普段からミクの曲を聴いたりするなど、ミクとは昔から接点があった。大好物は焼きそばパン。

 

天馬咲希(cv.磯部花凛)

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 一歌の幼馴染。Leo/needではキーボード担当。ギャルっぽい見た目で、人懐っこく明るい性格の少女。幼いころから体が弱く、病名は不明だが入退院を繰り返していた。そのため、『高校生らしいこと』に強い憧れを持っている。

 高校に復学したときには既に一歌達はお互いに距離ができてしまっており、そのことに驚いていた。一つ上の兄がおり、彼のことを慕っている。

 

日野森志歩(cv.中島由貴)

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 一歌の幼馴染。Leo/needのベーシスト。他人と必要以上に馴れ合わず、1人でいることを好む性格。その一方で一歌達とは仲良くしてきたが、周囲の目を気にするあまりに彼女達とも距離をとるようになってしまう。

 幼いころから始めたベースを今でも熱心に続けており、ライブハウスでバンドマンをやっている。一つ上の姉がいる。しかし、学校では話しかけられるのを嫌がっている。

 

望月穂波(cv.上田麗奈

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 一歌の幼馴染。Leo/needではドラム担当。誰にでも優しく接する性格で、周囲の人の愚痴を聞いてやることも少なくない。その態度を心無いクラスメイトから誤解されてしまう。だが、その優しい性格のためか、他のユニットのキャラとの交流もプロセカダントツで多いことにも定評がある。

 アップルパイが大好物。私服姿は人妻っぽい雰囲気が出る。また、家事の代行という珍しいアルバイトもしている。

 

教室のセカイのミク

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 ミクがLeo/needに出張してきたときの姿。通称レオニミク。一歌達よりも少し上くらいの女の子のように振る舞い、一歌達を導く。

 

②セカイの情景

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 一歌達の想いから生まれたセカイ。劇中では『教室のセカイ』と呼ばれる。どこかの学校の教室に見えるが、懐かしげな雰囲気がある。

 

③楽曲

 カバー曲では、ロキ(みきとP)ヒバナ-reloded(DECO*27)、アスノヨゾラ哨戒班(蜜柑星P)など、バンドソングや甘酸っぱい青春を感じさせる曲が多い。

 書き下ろし楽曲の一つneedle(DECO*27)は、彼女達の友情をクールに歌ったバンドソングとなっている。

 

 MORE MORE JUMP!

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 1人のアイドルを目指す少女とアイドルを辞めた3人の少女からなる異色アイドルユニット。略称は『モモジャン』『モアジャン』プロセカでは唯一のアイドルをモチーフにしたグループ

 ストーリーは、アイドルの負の面にも触れつつもアイドルを目指す花里みのりが成長していく姿と、元アイドル3人がアイドルとしての自覚と誇りを取り戻していく姿を通して『アイドルの底力、素晴らしい』と謳う内容となっている。

 余談だが、キャストの4人中3人は何かしらの作品でアイドルの役を演じていたことがある。

 

花里みのり(cv.小倉唯

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 モモジャンの主人公格。小さい頃から運が悪く、何かと酷い目に遭ってきた。そんなときに憧れのアイドルである桐谷遥の言葉に感銘を受け、彼女のようなアイドルを目指している。

 オーディションは落選続きだが、ちょっとのことではへこたれない意志の強さと根性を持つ。アイドルソング意外にも、ミクの曲も普段から聴く。筆者的にプロセカのキャラの中で主人公属性が強い人物。

 

桐谷遥(cv.吉岡茉祐

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 人気アイドルグループASRUNの元メンバー。可愛らしい顔立ちながら、落ち着きのある雰囲気と気品が溢れるクールビューティー。みのりの憧れの存在で、アイドル活動は割と小さい頃からやっていた。

 グループの中でもカリスマ的な人気を誇っていたが、ある理由からグループを引退してしまった。本人は『普通の学生生活がしたかった』と言っているが、実際の事情はもっと複雑。

 ペンギンの雑貨を集めるのが好き。

 

桃井愛莉(cv.降幡愛)

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 人気アイドルグループQTの元メンバー。自信家で強引な面もあるものの、アイドル活動に対しては誰にも負けない情熱を持っていた。

 芸能界にいた頃はバラエティの仕事が多く、一般層からはアイドルではなくバラエティ芸人と思われている節が強かった。そのことから『アイドルとしての自分』には需要がなかったと思い、アイドルを引退した。本人は自分のことを『顔が普通』などと言っていたが、決してそんなことはない。

 

日野森雫(cv.本泉莉奈

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 人気アイドルグループCheerful*Daysのメンバー。愛莉とは研究生時代の同期。おっとりしていて天然っぽいお姉さん。背も高い。ただし方向音痴気味なところもある。

 ルックスで人の目を惹く才能があるが、本人はそれにあぐらをかかずに努力している。しかしCheerful*Daysの他のメンバーからは『見た目で贔屓されている』と妬まれており、チームの人間関係は上手くいっていない。のちにCheerful*Daysを脱退する。Leo/needの日野森志歩の姉で、妹のことがとても大好き。

 

ステージのセカイのミク

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 ミクが MORE MORE JUMP!に出張してきたときの姿。通称モモジャンミク。セカイのステージでリンと共にアイドル活動をしており、ライブを度々開いている。

 

②セカイの情景

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 みのり達の想いから生まれたセカイ。一つのステージがあり、観客席は常にサイリウムの光で溢れかえっている。劇中の呼称は『ステージのセカイ』

 

③楽曲

 カバー曲ではハッピーシンセサイザ(Easypop)、メルティランドナイトメア(はるまきごはん)など、アイドルソングと調和しやすい楽曲や、恋愛裁判(40mP)などのラブソングを多く担当している。

 書き下ろし楽曲の一つであるアイドル新鋭隊(Mitchie M)はわかりやすいアイドルソング。一部のプレーヤーではこの曲を男性キャラに踊らせることが流行っており、ネタ方面での人気が強い。

 

Vivid BAD SQUAD

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 とある街で開かれた伝説のイベント『RAD WEEKEND』を超えるために集まった実力派ユニット。略称は『ビビバス』『VBS』。ジャンル・題材はストリートミュージック。ユニット名にある『BAD』は決して『悪い』という意味ではなく、アメリカのスラングでいうところの『カッコいい』という意味であると思われる。中々にオシャレである。筆者的にプロセカのオサレ枠

 ストーリーは、各メンバーの信念にフォーカスした内容。物語が進むごとに視点となるキャラが変化していくため、群像劇のテイストが強く、全員が主人公といえる作風となっている。筆者の推しユニット

 

①メンバー

小豆沢こはね(cv.秋奈)

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 内気で自分に自信が持てない性格の少女。あるとき路上で歌っている白石杏と出会い、それ以来彼女の元へ通うようになる。音楽は初心者で『RAD WEEKEND』のことも知らなかったが、歌唱力に秀でた才能があり、杏の相棒に選ばれる。

 ストーリーが進むにつれて自身の覚悟を問われることになるが、『杏と一緒に歌いたい』という気持ちを胸に覚醒していく。ストーリー後半の成長描写は必見。

 

白石杏(cv.鷲見友美ジェナ)

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 『RAD WEEKEND』の中心になってイベントを盛り上げていたミュージシャンを父に持つ。中学生の頃にそのイベントを見て以来、それよりもすごいイベントをやりたいと志す。父が経営するカフェの手伝いもやっている。学校では風紀委員を務める。

 性格はサバサバしていてクール寄りの熱血といったところ。とてもフレンドリーで人当たりの良い人物で、周囲の人とは仲良くしている他、初めて会った人とも打ち解けやすい。筆者の推し

 

東雲彰人(cv.今井文也)

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 杏と同様に中学生の頃に『RAD WEEKEND』を見て感銘を受け、それ以来そのイベントを超えようと思う。青柳冬弥とBAD DOGSというチームを組んでいる。

 人当たりが良い優男のように振る舞うがストイックすぎる性格なため、他人にも自分にも厳しい態度を取りがち。一方で相棒の冬弥のことを大切にしていたり、姉の買い物に文句を言いながらも付き合ってやったりするなどの細かい気遣いもできるツンデレ。テスト勉強はヤマを張るタイプ。

 

青柳冬弥(cv.伊東健人

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 彰人の相棒。彰人とは対照的に穏やかで物静かな人物で、彼の行動を諌めるシーンも多い。冗談を真に受けやすく、ピュアな一面もある。

 実家は父が有名な音楽家であるクラシックの名家であり、兄達とともに幼い頃から英才教育を受けてきたため音楽センスは高い。しかし、クラシックの道では兄達のようにはなれず、それでも厳しい指導を強行する父に反発する。そんな境遇から、物語が進むにつれて彰人、杏、そしてこはねに引け目を感じる気持ちが強くなっていく… メインストーリー終盤の彰人とのやりとりは必見。

 

ストリートのセカイのミク

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 ミクがVivid BAD SQUADに出張してきたときの姿。通称ビビバスミクMEIKOのカフェの常連客。ビビバスメンバー達よりも少し年上の少女っぽい接し方をする。

 

②セカイの情景

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 杏達の想いから生まれたセカイ。劇中での呼称は『ストリートのセカイ』。杏達が住んでいる街に良く似た雰囲気を持つ。カフェもあり、そこにバーチャルシンガー達が集まっている。

 

③楽曲

 カバー曲では、ECHO(Crusher.P)、夜咄ディセイブ(じん)drop pop candy(ギガれをる)などのヒップホップ調の曲やクラブミュージックを担当している。

 書き下ろし楽曲の一つであるready steadyGigaはオサレなヒップホップとなっている。

 

ダーランズ×ショウタイム

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 ミュージカルを題材にしたユニット。略称は『ワンダショ』『ダショ』。遊園地でショーを開いて活動している。

 突き抜けた性格キャラが揃っており、彼らの掛け合いが充実しているためストーリーの作風はコメディタッチただしシリアスもあるぞ。コメディとシリアスのバランスが良く、盛り上がるところは普通に盛り上がり、燃えるところは素直に燃えるため、筆者的に彼らのストーリーは是非おすすめしたい。 

 

①メンバー

天馬司(cv.廣瀬大介

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 ワンダショの座長で愛すべきショーバカ。Leo/needの天馬咲希の兄。幼い頃に妹と見たショーに衝撃を受け、自分もそのような舞台をやりたいと志す。常に『オレはスターになる』と豪語し、調子に乗りやすい自意識過剰な性格だが、目上の人間には礼儀正しく振る舞うなどの常識も弁えており、ショーでは自ら脚本を書いたりするなど、その熱意も口先だけではない。座長でありながらも他のメンバーに振り回されることの方が多く、チーム内ではツッコミに回ることが多い。

 妹・咲希のことは昔から大切にしており、彼がスターに拘る理由の一つに妹の存在が関係している。筆者的に主人公属性強めのキャラその2。

 

鳳えむ(cv.木野日菜

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 いつもテンションが高く、天真爛漫な性格の少女。学校の先輩からは寒くても平気そうと思われている。オノマトペで他人と会話をする場面も見られる。高いところから上手に着地できるなど、身体能力も非常に高い。

 遊園地で、祖父から受け継いだステージを満員にするべく、一緒にショーをしてくれる仲間を探している。

 良いことがあると『わんだほい』と言うのが口癖。この台詞は座長の司も好んで使うようになり、やがてワンダショの合言葉、決め台詞として定着する。

 

神代類(cv.土岐隼一

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 ワンダショの演出担当。ただし役者もやる。機械いじりが好きで、ドローンなどのマシンを自作できる他、舞台用にプラズマを発生させる装置まで幅広く作ることができる天才。もはや高校生の趣味のレベルを超えている。セカイに住んでいるしゃべるぬいぐるみを現実世界に持ち帰って中身を調べたがるなど、マッドサイエンティスト的な一面もある。野菜が大の嫌い。

 遊園地にたまに現れては、自分が作ったマシンを使ってショーを開いている。自分の考えたトンデモ演出に死なない範囲で応えてくれる司には信頼を置いている。書き下ろし楽曲『セカイはまだ始まってすらいない』のMVにおける投げキッスは必見。

 

草薙寧々(cv.machico)

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 類の幼馴染。歌唱力に長けているワンダショの歌姫。しかし、引っ込み思案で人見知りな性格。舞台ではネネロボという類が作った遠隔操作型のロボットを使ってパフォーマンスをすることも多い。

 変人揃いなワンダショだが、彼女だけは常識人。そのためかメンバーの中ではツッコミに回ることが多い。毒舌な一面もあり、特に司の発言に対するコメントなどはかなり辛辣。

 

ワンダーランドのセカイのミク

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 ミクがワンダショに出張してきたときの姿。通称ワンダーミクワンダショミクまたはダショミク。セカイのステージでKAITOと一緒にショーを開いている。えむ以上にテンションが高い性格。筆者が1番好きなミクの姿。

 

②セカイの情景

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 司の想いから生まれた場所。劇中での呼称は『ワンダーランドのセカイ』。デ⚪︎ズニーランドのようなテーマパークを思わせる作りになっている。ショーが行えるステージもあり、ミク達がそこを使っている。

 

③楽曲

 カバー曲はブリキノダンス(日向電工)、ミラクルペイントOSTER projectなどのテンションが高めかつミュージカルともマッチしやすい(?)楽曲や、チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!(くらげP)などの電波ソングを多く担当している。

 書き下ろし楽曲の一つ、セカイはまだ始まってすらいないピノキオP)は、楽しげなメロディが特徴で、まさに『聴く遊園地』といえる。

 

25時、ナイトコードで。

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 夜中の25時に『ナイトコード』というボイスチャットツールで集まって活動している謎の音楽サークル。略称は『25時』から取って『ニーゴ』と呼ばれることが多い。ジャンル、題材はアンダーグラウンド。俗にいうアングラというやつ。ボーカロイド曲自体がアングラの巣窟であることもあって、ある意味ボカロを題材にしたソシャゲならではのユニット。

 メンバーは全員、人には言えない悩みやトラウマを抱えている。ストーリーの作風は全体的にダークな雰囲気があり、時折サイコホラーを思わせるような展開もあるため、他のユニットストーリーよりもシリアス要素が強い。

 余談だが、メンバーの宵崎奏役に楠木ともりさん、暁山瑞希役に佐藤日向さんがおり、4人中2人が「ラブライブ!」シリーズに出ていた声優となっている。

 

①メンバー

宵崎奏(cv.楠木ともり

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 ニーゴの作曲および作品管理担当。ナイトコードのハンドルネームは『K』。学校は通信制で、音楽ショップに行くとき以外は滅多に外出しない出不精。家事代行の望月穂波が来てくれるときを除き、食事はカップ麺で済ませている。明らかに体が鈍っていそうな生活をしているが、MVでは歌はもちろん、ダンスも披露する。

 父も作曲をしていたが、奏が作る曲を聴く度に父は作曲へのモチベーションが削がれていった。そのことで奏自身は父を傷つけてしまったと考えており、以来『誰かを救える曲を作る』ことに固執している。

 

朝比奈まふゆ(cv.田辺留依

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 ニーゴの作詞担当。ナイトコードでのハンドルネームは『雪』。作曲スキルもある。

 ニーゴのメンバーの中ではちゃんと学校に通っている。成績優秀、文武両道な優等生。それだけでなく、誰にでも優しく接することができるため、友人も多く、誰からも頼りにされている。そんなことから、親からも将来を期待されている。

 しかし、周囲が求める『いい子』でいようとするあまり、自身の本当の気持ちがわからなくなってしまった。

 

東雲絵名(cv.鈴木みのり

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 ニーゴのイラスト担当。ただし歌もダンスもやる。ナイトコードでのハンドルネームは『えななん』。高校は夜間通学。承認欲求が強く、SNSに依存気味なため、自撮りや食べ物の写真など、バズる手段を今日も模索している。しかし、肝心の絵の投稿は伸び悩んでいる。

 父は天才と称される画家であり、彼からは絵の才能がないと言われている。そのため、会うのも嫌なくらいコンプレックスを抱いている。

 ビビバスの彰人の姉であり、彼をよく買い物の荷物持ちに付き合わせている。筆者的にプロセカのキャラの中で1番現実にいそうな人物。

 

暁山瑞希(cv.佐藤日向)

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 編集技術に優れるニーゴのMV作成担当。ただし歌もダンスもやる。ナイトコードでのハンドルネームは『Amia』。一人称は『ボク』で性別は不明。

 カワイイものへのこだわりが強く、デパートでよくカワイイ服を探している。セカイに訪れたときは『異世界転生ものの冒頭みたい』と口にするなどアニメ関係の知識もある模様。

 学校は不登校気味であり、周囲の人に『近づかないとどっちかわからない』と言われることに嫌気がさしている。基本は明るい性格だが、そんな境遇から少し人間不信な所がある。

 

何もないセカイのミク

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 ミクがニーゴに出張してきたときの姿。通称ニーゴミク。一目見ただけではミクとはわかりづらい。セカイの情景そのもののように機械的かつ無機質な性格。

 

②セカイの情景

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 壊れた鉄柱やらが散らばっていて何もない光景が無限に広がっている。劇中での呼称は『誰もいないセカイ』。誰の想いから生まれたかはわからない。

 おそらくモチーフは工事現場。これが何を表しているかというと…

 

③楽曲

 カバー曲では、シャルル(バルーン)、命に嫌われている(カンザキイオリ)、ハロ/ハワユ(ナノウ)など、死生観を題材にした曲や退廃的な作風の曲を多く担当する。

 書き下ろし楽曲の一つ、悔やむと書いてミライ(まふまふ)は、ニーゴのメンバー達の胸の内にあるどうしようもない心の叫びや悲しみを強く歌っている。

 余談になるが、これらような退廃的な曲がかえって癒しになっていた経験はないだろうか。筆者には一時期あった。

 

終わりに

 今回はプロジェクトセカイのユニットの紹介をしました。

 プロセカはリズムゲームとして高みを目指すのも良し、ノベルゲームとしてキャラ同士の掛け合いを楽しむも良しと、さまざまな楽しみ方ができるゲームです。ちなみに、メインストーリーの他にも、随時更新されるイベントストーリーで各ユニットメンバーの活躍を見続けることができます。是非プレイしてみてください。

 

 それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ぼくがかんがえたさいきょうの優木せつ菜個人回

【注意】この記事には以下の要素が含まれます

  • 小説形態の記事で虹ヶ咲の二次創作です
  • 内容は長めです
  • 独自解釈多め
  • 解釈違い、ガバガバシナリオ注意
  • 時系列は細かく考えていません
  • スクスタともアニメとも繋がっておりません、ただし設定はアニメに準拠します

 

目次

 

title:「誰よりも味方でいてほしいあなたへ」

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#第1話

chapter.1

 ある日の放課後、いつものように部室で皆さんが楽しそうに話していました。

 「もうすぐ文化祭。みんなはやっぱりそこでライブしたいよね!」

 「もちろんです侑先輩!かわいいかすみんのパフォーマンスで、文化祭に来てくれた人を虜にしちゃいますよ〜。」

 

 侑さんとかすみさんの言う通り、もうすぐ文化祭が始まります。それの準備で生徒会の仕事も大変忙しくなっています。そして文化祭というからには、同好会の皆さんもライブがしたいみたいです。

 「先のスクールアイドルフェスティバルで、私達同好会の知名度も上がったと思います。だから文化祭のライブも、校内の皆さんだけでなく、色々な場所から私達を見にきてくださる方が大勢いると思います。

 そんな人達にも喜んでもらえるようなパフォーマンスを是非やりましょう!」

 「そうだねせつ菜ちゃん。」

 「スクールアイドルフェスティバル以上に、本気の私達を見せてあげましょう。」

 歩夢さんも果林さんも、気合は十分みたいです。

 そこで愛さん達が、自分の身内も来るだろうという内容の話をし出しました。

 「そういうことなら、お姉ちゃんやおばあちゃんも誘ってみたい!」

 「彼方ちゃんも、遥ちゃんやお母さんを呼びたいなぁ〜。」

 続けてエマさんと璃奈さんもご家族の話をしました。

 「私も、スイスにいる家族にも見てもらいたいな。」 

 「私の親は忙しいから、ライブを動画に撮っておきたい。」

 

 家族、ですか…。

 私の家庭では親が、特にお母さんが厳しくて、アニメなどの趣味を一切禁止されています。だからスクールアイドルも、親に内密でやっています。皆さんはちゃんとご家族の理解を得られた上で活動している中で私だけ親にスクールアイドルのことを隠しているのは少し寂しいですが、仕方のないことだと思っています。それでも、なんとか見つからずにこうして活動を続けられているので、これからもそうするつもりです。

 

 「どうしたのせっつー、考え事?」

 気がついたら少し考え事をしていたらしく、愛さんが興味津々に聞いてきてしまいました。

 「いえ、なんでもありません。それより、早く生徒会に文化祭のライブの申請をしましょう。」

 「生徒会長のせつ菜先輩がここにいるじゃないですか〜。パパッと申請しちゃいましょうよ。」

 「かすみさん、ちゃんとした手続きを踏まないとダメだよ。」

 冗談を言うかすみさんをしずくさんが宥めるのもいつもの流れです。

 「それに、会場も決めないといけませんからね。もしそこも決まれば、副会長と一緒に生徒会室で待ってますので、お願いします。」

 ひとまず時間を午後4時、場所を講堂に定め、申請書の作成に入りました。早く文化祭で歌いたいです。

 

chapter.2

 家に帰るときは、優木せつ菜から中川菜々に戻ります。文化祭の準備のことで生徒会も忙しくなり、帰りも遅くなってしまいます。

 「ただいま。」

 「おかえり菜々、夕飯できてるわよ。」

 いつものようにお母さんが出迎えてくれました。荷物を置いて制服から着替え後、すぐに食卓に向かいます。その前に手洗いとうがいも欠かしません。

 

 今日の夕飯はハンバーグでした。お母さんは料理が上手で何を作っても美味しいんです。だから学校帰りの夕飯の時間も、私にとっては楽しみの一つです。何より、日々の学校生活で疲れた私をお母さんが暖かく迎えてくれることが嬉しくて、そんなお母さんのことも本当は大好きなんです。

 「今日も文化祭の準備?」

 「はい、色々な部の出し物の申請を通したり、予算の管理とかで、かなり大変です。」

 「そう、頑張っているのね。

 去年も行ったけど、虹ヶ咲は専攻もたくさんあるから、文化祭が楽しいわね。」

 「はい、特に焼き菓子同好会の作ったクッキーや、ライフデザイン科のスイーツとかは絶品です。またお母さんの分も買ってきますね。

 それと、流しそうめん同好会も出し物をするみたいなので、よかったらそっちにも足を運んでみてください。」

 「菜々は学校が好きなのね。」

 「はい、だから文化祭も楽しみです。」

 私は虹ヶ咲学園が好き、だから生徒会長の仕事にもやりがいを持ってますし、そんな学校の文化祭をお母さんかみにきてくれることはとても嬉しいです。だけど、スクールアイドル同好会のことは言えない。言ったらお母さんをがっかりさせそうですし、怒られそうですから。

 

 「文化祭の後はテストもあるし、来年は受験なんだから頑張りなさいね。」

 「はい、わかってます。」

 「文化祭の方も、生徒会長なんだから、それに相応しく責任を持って進行しないとね。」

 「はい。」

 これもよくあるやり取りです。お母さんに言われずとも、私自身もそう思って励んでいるのですが、やはりお母さんからすれば心配みたいですね。

 

 私自身はお母さんとはとても仲良くできていると思っています。だからこそ、昔から漫画やアニメなどの私の好きなことを認めてくれないことが仕方ないですが残念に思います。

 小さい頃にアニメを見ていたら『教育に悪いから』といきなりテレビの電源を消されたことや、誕生日プレゼントに漫画が欲しいと言ったときに断られたこともありました。お母さんなりに『学生時代は勉学に集中するべきだ』と私のことを考えてのことだとは分かっています。

 実は小学校高学年くらいの頃にスクールアイドルを知って、『私もやってみたい』と話したこともあるんです。でも、『勉強の方を頑張りなさい』と言われて、結局許してもらえませんでした。

 その一方で、良い成績を取ったり、作文で賞をもらったりすると良く褒めてくれました。私も期待されること自体は嫌いじゃないので、お母さんの期待通りに今まで頑張ってきました。それでも、身近な人に好きなことをわかってもらえないのはやっぱり寂しいです。寂しいですが、仕方ないと思うので、これからも親には秘密で好きなことをしていくつもりです。 

 

 「では、ごちそうさまでした。明日も文化祭の準備で遅くなります。」

 「そう、頑張ってね。」

 食事を終えてから歯を磨いて、その後は個室に自己学習をしに行きました。学習の合間も母がよく飲み物を差し入れてくれるのでありがたいです。

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 学習がひと段落したら、いつものごとく母には内緒でアニメを見ます。今季は私の好きなラノベの一つがアニメ化しているので、毎週楽しみにしています。

 

#第2話

幕間❶

 ガタンッ。

 ある日、私が菜々の部屋を掃除していたら、彼女の机の近くにあったケースをうっかり落としてしまった。

 「あっ、いけない戻さな…きゃ。」

 落とした拍子にロックが外れてしまっていたため、ついでに中身も少し気になって開いてしまった。

 「何かしらこれ?」

 中には本や小型の機械みたいなものがいっぱい入っていた。でも1番目を引いたのは、見知らぬ赤い服だった。

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chapter.1

 「おはようございます、お母さん。」

 「おはよう。」

 朝起きて着替えた後、お母さんと一緒の食卓につきます。

 「文化祭最終日、頑張ってね。」

 「はい、きちんと責任を持って引っ張っていきます。」

 いよいよ文化祭最終日です。お母さんとの会話でも触れましたが、虹ヶ咲は専攻や部活動の種類が多く、文化祭となると本当のお祭りみたいに賑やかになります。販売や出し物一つ一つのクオリティも高く、入学希望者以外の外部からのお客さんもとても多いんです。お母さんが来たがるのも頷けます。

 「行ってきます、お母さん。」

 「いってらっしゃい、菜々。

 そうだ、この前あなたの部屋で変わった服を見かけたけど、あれは何かしら。」

 『変わった服』?もしかして、スクールアイドルの衣装のことでしょうか。もしかしたらこのまま、スクールアイドルをやっていることがバレてしまうのでしょうか…

 「あぁ… あれは、服飾同好会の出し物の、サンプルを預かっているんですよ…。」

 やっぱり嘘は苦手です。なんとなくそれっぽい繕い方をしましたが、隠し通せるか不安です。

 「そう、ならいいけど。邪魔しちゃったわね。気をつけてね。」

 なんとか誤魔化せたようです。マンションの階段を1番下まで降りた後は、急いで学校に向かいました。

 

chapter.2

 文化祭の開会式の挨拶を生徒代表として述べた後は、同好会の皆さんと部室で打ち合わせをしました。

 「お客さんの数、すごいね。フェスティバルで私たちを知って来てくれた人もいるみたいだよ。」

 「はい、やっぱりフェスティバルはやって良かったですね、歩夢さん。」

 「うん、たくさんの人達が見に来てくれるのはやっぱり嬉しいね。」

 ちょっと上から目線気味で申し訳ないですが、歩夢さん、フェスティバルを通して一気に成長しましたね。他の皆さんも同じです。

 

 しばらくすると、私たちの部室に遥さんも入ってきました。

 「お姉ちゃん!」

 「あっ、遥ちゃん。」

 「リハーサルまでまだ時間ある?」

 「うん、一緒に回ろっか。」

 「おっ、じゃあ愛さんも一緒に回っていい?みんなで回った方が楽しいじゃん!」

 「いいですよ。」

 「いいよ〜。」

 「ありがと!みんなも行かない?」

 「私は行きたい。」

 璃奈さんが3人について行きました。果林さんはというと…

 「ありがたいけど、私は好きなように回らせてもらうわ。」

 「果林ちゃん、道には気をつけてね。」

 「そうですよ果林先輩。道に迷ったら恥ずかしいですよ〜。」

 「ちょっとエマ!かすみちゃんまで…」

 結局エマさんとかすみさんと回ることになったようです。

 

 「リハーサルの時間までには戻ってきてくださいね〜。」

 6人「はーい!」

 そういうと、皆さんは部室から各展示に向かいました。

 

 「では、私も演劇部の方で予定があるので、一旦失礼します。」

 「承知しています。そちらも頑張ってきてください。」

 「いってらっしゃい、しずくちゃん。」

 「いってらっしゃい。」

 私と侑さんと歩夢さんでしずくちゃんを見送りました。

 「じゃあ、私たちも回ろっか。」

 歩夢さんの提案により、私たちも3人でしばらく文化祭を回ることにしました。

 

chapter.3

 文化祭を回るときは菜々モードで行動します。

 私達はまず、しずくさん達の演劇を見てきました。そのとき、同好会の皆さんも全員来ていました。演目はアーサー王伝説の終盤の話であるらしく、主演はしずくさん、助演は部長さんでした。

しずく『何故だグヴィネビア!どうしてお前まで私の元から離れようとする?!』

部長『貴方が心優しい方だということも、国のために死力を尽くされてきたことも存じております。しかしお言葉ですが陛下、貴方は私個人のために、今までどのようなことをしてくださったというのでしょうか。』

しずく『それは…』

部長『他の円卓の騎士達に対してもそうです。口先だけで“信じている”、“愛している”といっても、それを身を持って態度で示さなければ、愛も信頼もないもの同然なのです。

 高校生の演劇の出し物にしてはハードなチョイスだなと思いました。でも、しずくさん、合同発表会の頃からさらにパワーアップしています。部長さんの演技も素晴らしいです。

 その次は料理研究会のブースで昼食をとり、今は焼き菓子同好会のブースへクッキーを買いに行きました。自分達が食べたいというのもありますが、お母さんへのお土産に去年も買ったので、今年もそれで行きました。

 「これください。」

 「ありがとうございます。」

 私が買ったのはチョコ味のクッキー、お母さんの好物です。

 焼き菓子同好会といえば、以前歩夢さんと一緒にフェスティバルの準備をしていた方々もいました。

 「歩夢ちゃん、今回もライブするんだって?楽しみにしてるよ。」

 「ありがとう今日子ちゃん、4時からだから、きてくれると嬉しいな。」

 「侑先輩も、音楽科に転科してから作曲するようになったんですよね。先輩の曲を歩夢ちゃんが歌うの、楽しみです!」

 「ありがとう、講堂で待ってるからね。」

 

 焼き菓子同好会の部屋を出た後、いつも聞いている声が聞こえてきました。

 「あら、菜々じゃない。」

 お母さんと鉢合わせしました。

 「あ、お母さん。」

 お母さんが文化祭にきてくれること自体は嬉しいですが、スクールアイドルやっているのがバレないかが少し不安です。先程も以上のことを聞かれてしまったので… でも、いつものように変装を徹底しますので、なんとかなると思いたいです。

 「今、流しそうめん同好会のところに行ってきたところなの。

 そちらは、お友達?」

 付き添っている侑さんと歩夢さんのことを聞いてきました。2人とも、私の家庭の事情については以前少し話したことがあるので、少し緊張気味に答えていました。

 「は、はい。せ…菜々ちゃんの友達です。」

 「今、一緒に回ってます。」

 侑さん、今うっかり“せつ菜”って言いかけましたよね?!歩夢さんの受け答えの方は幾分かスムーズに感じました。

 「そうなの、菜々と仲良くしてちょうだいね。」

 2人「はい。」

 すると、歩夢さんが自分のスマホを取り出しめした。どうやら、リハーサルの予定を通知するように設定していたらしいです。

 「いけない、そろそろリハーサルの時間だ。2人とも行こう?」

 歩夢さんっ…!うっかり言ってしまったのでしょうけど、お母さんがいる前でリハーサルだなんて…。

 「リハーサル?なんのことかしら。」

 案の定お母さんも突っ込んできました。

 「いえ、歩夢さん達の出し物のことです。

 それでは、私も生徒会の仕事があるので失礼します!」

 別に間違ったことは言ってません。とりあえず、私たち3人は急いで部室の方へ向かいました。

 

chapter.4 

 「ごめんせつ菜ちゃん。お母さんの前でリハーサルなんて言っちゃって。」

 「良いですよ。それに、向こうも私自身が出し物をするなんて思ってないと思いますし、大丈夫だと思います。」

 歩夢さんがさっきのことを謝ってくれました。

 「でも、せつ菜ちゃんのお母さん、良い人そうだったよね。でも…」

 「はい、趣味を禁止にしてること以外は、確かに良い人だと思います。

 それよりも、部室へ急ぎましょう。」

 

 部室には、すでにかすみさん、しずくさん、璃奈さん、愛さん、エマさん、彼方さん、果林さんが来ていました。

 「全員そろったみたいですね。早くリハーサルに行きましょう!」

 かすみさんの呼びかけで、みんなで講堂に向かいました。

 

 リハーサルの最中、お母さんとのやりとりについて少し考えていました。家を出るときは衣装のことについて聞かれ、先程は侑さんと歩夢さんと同行しているところも見られてしまいました。それでもなんとか誤魔化せた気はするので、後はバレないことを祈るしかありません。あ、ちなみに家にあった衣装はというと、文化祭で着るため鞄に入れて持って行きました。

 だけど…

 「せつ菜ちゃん、もしかして、どこか具合が悪いの?」

 「エマさん?いえ、ライブ前なので少し緊張しているだけです。

 前も言いましたけど、フェスティバルで私達を知ってくれた方も大勢来ると思うので、その人達の気持ちにも答えなきゃって思ってます。」

 エマさんにも心配をかけてしまいました。とにかく気合を入れ直さなければいけません。

 「せつ菜さん、何か有れば私達がちゃんと相談に乗りますからね。」 

 「ありがとうございます、しずくさん。でも、心配はご無用です。」

 

 そうこうしているうちに、やがてライブ本番の時間を迎えました。そしてライブ前には、お決まりの掛け声からパフォーマンスに挑みます。先陣を切るのは侑さんです。

 「行こう!」

 10人「私達の虹を咲かせに!」

 

幕間❷

 文化祭のパンフレットに、変わった部活動の名前があった。

 「スクールアイドル同好会?こんなのもあったのね。」 

 去年の文化祭にはいなかったから、多分今年にできたばかりの同好会だと思う。でも、菜々はこの同好会の話は一切していなかった。

 「講堂でライブをやるのね。ちょっと見に行ってみようかしら。」

 とりあえず講堂に向かうことにした。

 

 講堂の近くに来たとき、外からも中の音響や叫び声がよく聞こえてきた。うるさい空間はちょっと苦手なのよね… でも、恐る恐るドアの取っ手に手をかけ、中に入ってみた。

 その瞬間に見た光景に私は目を疑った。

 「あれ?あの子…」

 黒髪ロングでサイドテールを右に縛り、元気よく歌っている。そして身に纏う衣装は、私が菜々の部屋で見かけた赤い服。

走り出した!想いは強くするよ。悩んだら、君の手を握ろう。

なりたい自分を我慢しないでいいよ、夢はいつか、ほら輝き出すんだ!

弾み出した想いは嘘じゃないよ。涙から生まれる希望も。目には見えない力で繋がる。夢はいつか、ほら輝き出すんだ!

 これでもかというくらいの熱量がこもった歌声。テレビでたまに見る歌手に勝るとも劣らない歌唱力。だけど注意深く聴いてみれば、それは私がよく知る声だった…。

 

chapter.5

 「ではみなさん、文化祭お疲れ様でした。」

 私達は全力で歌いきり、文化祭も無事に終了することができました。今はとあるファミレスで反省会と打ち上げをしているところです。

 「やっぱり、思った以上にお客さんが来たわね。」

 「またあんなに大勢の人の前で歌いたいなぁ〜。」

 果林さんと彼方さんはいかにも『やり切った』って感じです。

 「しず子、演劇部の方の出し物も良かったよ。」

 「ありがとうかすみさん、みんなも、来てくれてありがとう。」

 「しずくさんのアーサー王、カッコ良かったです!まるで私が知ってるアニメのキャラクターみたいでした!実は、そのアーサー王の性別も…」

 そこからしばらくは止まらなくなってしまいました。

 「せつ菜さん、嬉しいですけど、暑くなり過ぎですよぉ…」

 ついいつもの癖が出てしまいました。しずくさんを困らせてしまいましたね。

 「そういえば、姫乃ちゃんも来てたわよ。ライブの後に写真も撮ったわ。」

 「果林さんほんと?!」

 果林さん、そこまで姫乃さんと仲良くなってたんですね。侑さんが驚くのもわかります。

 「彼方ちゃんも、遥ちゃんが応援に来てくれて嬉しかったなぁ。」

 「アタシも、おばあちゃんとお姉ちゃんが来てくれたよ!」

 愛さんのおばあさんと美里さんもいらしていたのですか。全然気が付かなかったです。

 …あれ?そういえばライブ中、お母さん似の人が客席にいたような… 多分気のせいでしょうね。

 

 それぞれのメニューを食べ終えた後、ファミレスから出てみんな真っ直ぐ自宅に帰りました。私も三つ編みを結び直し、自宅へ向かいます。

 自宅ではいつも通り、お母さんが出迎えてくれました。

 「ただいま。」

 「おかえり。菜々、後でちょっとお話いいかしら。」

 「え?」

 お話ってなんのことでしょう。私はひとまず荷物を部屋に置いてから、母の元に向かいました。

 

 「今日の文化祭で、“スクールアイドル同好会”っていうところの出し物を見たんだけど。」

 そういう時母は文化祭のパンフレットを取り出しました。そして、同好会の写真が載ったページをめくりました。

 こんなことは考えたくないですが、もしかすると……

 そして、母はそのページにあった“優木せつ菜”の写真を指差して言いました。

 「これ、あなたでしょ?」

 

第3話

chapter.1

 お母さんとの家族会議になりました。ついに私が隠れてスクールアイドルをやっていることが、お母さんにバレてしまいました。こうなった以上、もう誤魔化しは効かないので、覚悟を決めて打ち明けることにしました。

 「…はい、それは私です。今まで隠していて、ごめんなさい。」

 「どうして隠れてこんなことしてたの?」

 私は続けて答えました。そして、その他の私が好きなものについても触れました。

 「だってお母さん、今までアニメや漫画とか、私の好きなことは禁止してきたじゃないですか。それでも、私は一度でいいから自分の大好きなことを思いっきりやってみたかったんです。今まで隠していたことは詫びます。でも、そうでもしないと、私は好きなことが出来なかったんです…」

 「そう、でもあなた、勉強の方は大丈夫なの?今まで菜々は勉強と生徒会の仕事を一生懸命やってるものだと思ってたけど信じられない。」

 「勉強の成績はちゃんと維持しています、だから…」

 「それもそうだけど!」

 今度は私の話の途中で口を挟んできました。その後に言われたことは、私も流石に聞き捨てならないものだと感じました。

 「維持できてるからいいってことじゃないのよ… 大体スクールアイドルって、あなたの将来にどう繋がるの?内申書にスクールアイドルやってました、なんて書けると思ってるの?」

 確かにそうかもしれません。でも、『だから無駄だ』みたいに言うのはやめてほしいです。

 「それに、スクールアイドルなんてやってたら、知らない人に大勢見られるわけでしょ?あなたいつか外歩けなくなっちゃうわよ。

 将来なんの役にも立たない、リスクも多い、そんなことをして何になるって言うの?時間の無駄じゃない?!」

 お母さんなりに私のことを考えてくれているのはわかります。今までもそうだと思っていました。でも、そんな言われようをされると、流石に堪忍袋の緒が切れてしまいました。私が頑張っていることを馬鹿にされたどころか、同好会の皆さんのことも、スクールアイドルフェスティバルを含む皆さんと頑張ってきたことまで侮辱された気分になりました。

 「明日、皆さんにちゃんと辞めるって言ってきなさい。それから、他にも何か隠れてやっているんでしょうけど、それも禁止…」

 「お母さんにスクールアイドルの何がわかるっていうんですか…?私が何したっていいじゃないですか!どうしてそんなふうに自分の考えを押し付けるんですか!」

 「押し付けるも何も、私はただ菜々のために…」

 「私のためってなんなんですか?好きなことを禁止にして、今もこうして私から取り上げようとして、それが私のためですか!」

 もう我慢の限界に達してしまいました。お母さんは口を開けて黙り込んだまま私の話を聞いていました。

 「今までも私の本心に目を向けようとしないで、それで今は自分の考えを押し付けようとして… お母さんなんて…」

 『それを言ったら終わり』だということは薄々勘づいていました。でも…

 「お母さんなんて大っ嫌い!」

 スクールアイドルを侮辱されたと思った私は、頭に血が上っていて冷静になれませんでした。そして、涙ながらにそう叫びました。

 

 しかし、すぐに我に帰って、その言葉を言ったことを後悔しました。お母さんも、口を開いて立ち尽くしていました。

 「ごめんなさい、今日はもう寝ますね…」

 

chapter.2

 「おはようございます、お母さん…」

 「おはよう、菜々…」

 

 私は昔から、親とあんな風に喧嘩をしたことがありませんでした。それはお母さんの方も一緒で、お互い今の状況をどうやって乗り越えていけばいいかがわからない状態です。

 「お母さん、昨日はごめんなさ…」

 「いいわよ… もう嫌いなんでしょ…」

 ついカッとなってお母さんのことを『大嫌い』なんて言ってしまいましたが、お母さんからすれば、あの一言でお母さんが私に今まで注いできた愛情を全て否定されてしまったと感じていると思います。朝ご飯はいつも通り作ってくれましたが、一緒には食べませんでした。

 同好会での活動については、このままなあなあで済ませてしまってもいいような、そうではいけないような気もして、とても複雑です。

 

 今日の放課後も部活がありました。文化祭の後も、同好会としてはまだまだやりたいことがたくさんあります。それなのに…

 「せつ菜ちゃん、やっぱり具合悪いの?」

 「せっつー、最近元気ないように見えるけど、どうしたの?」

 「練習中も上の空って感じで、あなたらしくないわね。」

 愛さんとエマさんは前から心配をかけていましたが、果林さんにも心配されてしまいました。

 「せつ菜ちゃん、何があったの?」

 彼方さんも心配している様子でした。侑さんや他の皆さんも、心配そうに私を見つめていました。

 私は、自分の身に起こったことを皆さんに打ち明けました。

 「侑さんと歩夢さん、愛さんと璃奈さんには以前お話ししましたが、私の家ではアニメや漫画、スクールアイドルを禁じられています。それが、文化祭の日に私がスクールアイドルをやってるのがお母さんにバレて、そのことで喧嘩になってしまったんです。」

 「…それで正体を隠してスクールアイドルをしていたのね。」

 「そうなんですかぁ?かすみんだったら、スクールアイドル禁止!なんて言われたら泣いちゃいますよ… せつ菜先輩が喧嘩になる気持ちもわかります。」

 果林さんには、以前私が正体を隠している理由が期になると聞かれたことがありました。だから真っ先に答えたのでしょう。かすみさんの言っていることも最もです。

 「はい。しかも、スクールアイドルのことを『無駄なことだ』って言われて……

 それで、『大嫌い』って言ってしまったんです。それでお母さんを傷つけてしまいました。だから、謝りたいと思ってます。でも…」

 しばらく黙り込んで考えていました。お母さんにあんなことを言ってしまって、お互いどうすればいいのかわからない状態です。そこである考えが浮かび、それをその場で話しました。

 「…思えば、今もこうして皆さんと一緒に練習ができていますし、お母さんとの問題はもう時間の流れに任せてしまおうかと思いま…」

 「ダメだよ…」

 「璃奈さん…?」

 璃奈さんが私の話を遮り、私の目を真っ直ぐ見つめて続けました。

 「…それじゃあ、せつ菜さんも、お母さんも、きっと苦しいままだと思う。だから、ちゃんと話合わなきゃダメだと思う。」

 璃奈さんのお家は両親がとても忙しく、そのため家族での交流が少なかったとお聞きしたことがあります。だから、今の私の問題に対しても思うところがあるのでしょうか。

 「それでは苦しいままなのは私にだってわかります。でも、お母さんにスクールアイドルのことを解ってもらえるか不安です。それに、私自身もお母さんに嫌われてしまったように思います…」

 すると、しずくさんが私に言いました。

 「そうだ、せつ菜さん、お母さんに向けてライブをやってみませんか?」

 「しずくさん?」

 「せつ菜さんが歌っているところを見て貰えば、きっとお母さんにもスクールアイドルの良さが伝わるはずです。どうでしょうか。」

 しずくさんの提案ならもしかしたら… 確かに実際に歌っているところを見てもらうのは重要かもしれないですね。

 「そのライブ、もちろんかすみんたちも歌いますよ。せつ菜先輩のこともそうですけど、そうでなくても、やっぱり何も知らないで悪く言われるのは納得できませんから。ね、しず子。」

 「うん。」

 「かすみさん…」

 かすみさんの言う通りです。2人の話を聞いて、ますます勇気が湧いてきました、

 「それに、せっつーのお母さんは、せっつーのこと嫌いになんてなってないと思うなぁ。」

 「愛さん。」

 「うん!だから、逃げずに話せばきっと伝わるよ!」

 愛さんにも背中を押されました。すると、侑さんが私の元に近づいてきました。

 「せつ菜ちゃん、私も一緒にお母さんのところへ行くよ。」

 「侑さん、でもお時間の方は大丈夫ですか?」

 「1人よりも一緒の方が、心強いでしょ?」

 なんだか目頭が熱くなってきてしまいました。続いて歩夢さんも私の前に出てきて言いました。

 「せつ菜ちゃん、始まったのなら貫くのみ、だよ!」

 そう言うと歩夢さんは私に向かって右の拳を真っ直ぐに突き出しました。

 皆さんの顔を見ると、全員優しく微笑んでいました。もう目頭が熱いどころかではなくなり、涙が溢れてきました。

 「歩夢さん、皆さん… ありがとうございます!」

 私は涙を拭ってから、同じく右の拳で歩夢さんとグータッチをしました。

 「じゃあ、練習が終わったら行こう、せつ菜ちゃん。」

 「はい。お願いします、侑さん!」

 

chapter.3

 放課後の練習が終わった後、侑さんと一緒に私のマンションの部屋の入り口まで行きました。このときはもう変身を解き、中川菜々に戻っています。

 「やっぱり緊張します… 本当に大丈夫でしょうか…」

 「大丈夫だよ。さ、早く行こう。」

 侑さんにそう言われてから、私は恐る恐るインターホンを押しました。すると、お母さんがドアを開けて出迎えました。

 「菜々、お帰り… あれ?お友達?この前文化祭で会ったような。」

 「はい、菜々ちゃんの友達で、スクールアイドル同好会の高咲侑です。今日は、菜々ちゃんのお話しを聞いてくれますか?」

 「スクールアイドル、そう… それなら上がってお話ししましょう。」

 私達はお母さんに言われて、家に上がって話をすることにしました。

 話はリビングにて行われることとなりました。

 「お母さん、昨日はあんなことを言ってごめんなさい。それと、今までお母さんに隠れてスクールアイドルをやっていたことも改めておわびします。

 だけど私は、やっぱり侑さん達とスクールアイドルがしたい。他の好きなこともそうです。

 …どうしてお母さんは、今までそれらを禁じようとしたんですか?」

 お母さんはしばらく黙り込んでからゆっくり答えました。

 「…私は、菜々がもっと勉強や将来に役立つことに励んで欲しくて、アニメやスクールアイドルに勤しんでいると、それらが疎かになってしまうんじゃないかと思っていたの。それが菜々にとって1番良いことだと思っていた。」

 続いてお母さんは、スクールアイドルについての話をしました。

 「スクールアイドルは、小6のときにやりたいって言ったとき、『やめておきなさい』って言ったでしょ?

 それは、1番は菜々がそういうことをすれば、色んな人に注目される、その分知らない人から悪く言われたり、それで菜々の人生がめちゃくちゃになっちゃうかもしれないって思ってたからなの…」

 お母さんが話し終えた後、私はしばらく間を置いてから答えました。

 「そうだったんですね。お母さんがそう思うのは、お母さんなりに私のことを考えてくれていたからだということはよくわかります。でも、残念ですが私はそうは思わない…」

 私は続けました。

 「確かに、スクールアイドルをやっている以上、色んな人から期待されたり、あることないこと言われたり、それがプレッシャーになったりすることはあります。

 でもそれだけじゃなくて、多くの人達とスクールアイドルが大好きな気持ちで繋がることだってできるんです。それで私は侑さんや同好会のみんなと出会うことができて、一度はスクールアイドルフェスティバルまで開くことができた。それは間違いなく、私にとってはどんなものにも替え難い大切なものなんです。

 だから、それを取り上げられたり、無駄だったみたいに言われたりするのは、とても悲しいことです。」

 もう一呼吸置いて、さらに続けました。

 「他の好きなことだってそうです。日々の勉強の疲れとかを、アニメや漫画で癒したり、辛いことにも立ち向かえる力をもらったりすることができるんです。それだって、私にとっては大切なことなんです。」

 最後に私はこう言いました。

 「これからも今まで通り勉強の成績は維持しますし、生徒会長の活動も真面目に続けます。だから、私がスクールアイドルをやることを、認めてもらえませんか…?」

 しばらくしてから、お母さんは答えました。

 「…わかったわ。」

 「本当ですか?!」

 お母さんは続けました。

 「菜々は昔から頭が良くて、勉強もそれ以外のことも、私がこれくらいやりなさいと言ったところまでなんでもやってくれる良い子だった。だけど、私もそれに甘えて色々なことを押し付けて本心に目を向けようとせず、知らないうちにあなたの笑顔を奪っていたのかもしれないわね…

  そんな菜々が本当の笑顔になれる場所がスクールアイドルだって言うのなら、それを取り上げる理由はもうないわ。」

 私は思わず涙をこぼして言いました。

 「お母さん…!ありがとうございます!」

 「よかったね、せつ菜ちゃん。」

 「はい!侑さんもありがとうございます!」

 隣にいた侑さんも喜んでくれました。そして、最後にもう一つだけ大事なことをお母さんに伝えました。

 「お母さん、今度ダイバーシティで同好会のライブを開きます。そこに是非来てくれませんか?」

 「良いわよ。」

 「ありがとうございます。

 スクールアイドルらしく、歌で誠意をお見せします。」 

 

第4話

『MELODY』chapter.1

 ダイバーシティのライブ当日、私達はまず会場の準備をしていました。会場では、何やら見覚えのある人が他のお客さんよりも一足早く来ていました。

 「高咲さん!みんな!」

 「副会長!」

 生徒会の副会長です。彼女はスクールアイドル・優木せつ菜のファンなのですが、私は今、菜々モードでこの場にいるので、少し恥ずかしい相手です。

 「ライブやるって言うから、急いで来たら早すぎちゃいましたね。

 あ、会長も来てたんですね!」

 「え、ええ… 今日のライブ楽しみですね。」

 かすみさんと侑さんがやや不安そうに私の方を見ていました。

 

 やがて準備の方も終わり、他のお客さんも大勢きました。そこには、お母さんの姿もありました。

 「いよいよだね。せつ菜ちゃん。」

 「はい、歩夢さん。いつものように、お客さん達に私達の大好きをお届けしましょう!」

 「じゃあ、私は、観客席でみんなのこと見てくるからね。」

 「ここはいつもの侑ね。」

 間もなく、ライブの時間となりました。

 

幕間❸

 ダイバーシティで菜々達がライブをやるというのできてみた。スクールアイドルのライブを見るのは文化祭以来になる。

 どうやら、菜々の出番はまだ先だったらしく、しばらくは他の子達が歌っていた。

 最初にピンク髪のシニヨンの子、その次に短髪ベージュの子大きいリボンの茶髪の子金髪の明るそうな子顔にお面みたいなものを付けた子栗色ロングの大人しそうな子外国人っぽい子青い髪の背が高い子が順々に歌った。

 正直、青い髪の背が高い子と大きいリボンの茶髪の子以外は歌もダンスもあまり上手だとは思えなかった。だけど、その子も含めてみんな楽しそうに歌っていることだけは伝わってきた。とにかく歌うのが楽しくて楽しくて仕方ないって感じがよくわかる。菜々もそんな気持ちだったのかな?

 

 どうやら菜々はヘッドライナーであったらしく、他の8人が歌い終えた後で菜々の出番であることがアナウンスされた。私が立ち尽くしていると、見覚えのある子が向かってきた。

 「あ、中川さん!来てたんですね。」

 「高咲さん…?」

 「隣で見ても良いですか?」

 「ええ。どうぞ。」

 菜々の友人の高咲さんだ。私は彼女と一緒に菜々の歌を聴くことになった。

 私は思い切って高咲さんに話しかけてみた。

 「ねぇ、高咲さんは、菜々の歌が好きなの?」

 「はい、とっても大好きです!初めて聴いた時にこれだ!と思ったんです。そして、彼女の歌があったからこそ、私も夢を見つけられたんです。

 中川さんにも、きっと良さがわかると思いますよ。」

 「そう…」

 私が知らない間に、菜々は彼女の背中を歌で押してくれていたんだ… 高咲さんだけじゃない。ここに集まっている人達が、菜々やみんなの歌を楽しみにしている、それを聴いて、明日も頑張ろうって気持ちになってる。そう思うと、確かに菜々のやっていることは素敵なことかもしれないと思えた。

 「あ、いよいよ始まりますよ。」

 高咲さんに言われて、私は再びステージの方を向いた。

 

『MELODY』chapter.2

 いよいよ私の出番が来ました。

 「せつ菜ちゃん、ファイトだよ〜。」

 「ありがとうございます、彼方さん。」

 「頑張ってね。」

 「璃奈ちゃんボード、ファイト。」

 「エマさんも璃奈さんも、ありがとうございます。」

 私はそのままステージの方は向かいました。

 

 ステージまで行く途中、ライブに来ている皆さんのことを少しだけ考えていました。

 私の後ろには、普段一緒にスクールアイドルとして頑張っている皆さんがいる。一度衝突したけど、今は同好会を引っ張ってくれているかすみさん、自分だけの面白い世界を持っているしずくさん、実は周りのことをよく観察している璃奈さん、皆さんを暖かく包み込んでくれるエマさん、良く寝ているけど実はとても頑張り屋な彼方さん、私をライバルだと認めてくれる果林さん、いつも皆さんを明るくしてくれる愛さん、私をきっかけにスクールアイドルを始めてくれた歩夢さん

 客席の方には、スクールアイドルじゃないけど、私のことを応援してくれる人がいる。私の大好きを受け止めてくれた繋いでくれた侑さん、今まで私を大切に育てて来てくれたお母さん、そして、いつも私を応援してくれて、共に夢を見てくれるファンの皆さん…!

 みんな、私の大好きな人達ばかりです。そんな人達が私の背中を押してくれる限り、怖いものなんてありません!

 

 私はステージに立ち、まず一言皆さんに伝えました。

 「今日は私達のライブに来てくれてありがとう!この歌は、誰よりも味方でいて欲しい人に届けます。」

 ステージに夕日が差し込み、同時に曲名を告げました。

 「それでは聴いてください!『MELODY』!」

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 前奏が始まるのと共に、観客席の皆さんのペンライトが赤一色に染まりました。空も夕焼けに染まり、空も地上の皆さんも私の背中を押してくれている気がしました。

 さぁ、もうすぐ歌い出しです!

好きなこと私だってここに見つけたんだ

力いっぱい頑張れるよ本当の自分だから

誰よりも味方で いてほしいあなたへ

心の奥まで届きますように 今日も信じて歌うよ!

 

走り抜けた想いが心を染めてまっかっか

涙飛んでった

道は不確かだけど好きだからできる

私らしく輝いていける気がして

光が差し込んだ これから先もずっとステージを照らすように

強く願い込めた歌を あの空までほら届け!!

 ここからさらにヒートアップしていきます!

『なんで私のことわかってくれないんだろう?』

言葉にして初めてわかり合える

 歌っている途中で、お母さんの顔が少し見えました。どうやら侑さんの隣で見てくれているみたいです。2人とも、精一杯声を出して応援してくれています。他のファンの皆さんも同じです。

 私の歌も、いよいよ大サビに突入します!

抱きしめてた想いがここにずっとあったんだ 空にはじけてった

真っ直ぐ伝えることももう怖くないよ

これからはなんでも話せる気がして

 

光が差し込んだこれから先もずっとステージを照らすように

強く願い込めた歌をあの空までほら届けーーーーーー!!!!!!!!!

 

エピローグ

 ライブは無事に終了し、ダイバーシティには私と同好会の皆さん、そして、お母さんだけが残っていました。

 「お母さん、どうでしたか?」  

 まずはお母さんにライブの感想を聞いてみました。

 「とっても素晴らしかったわ。これが菜々が大切にしてきたものなのね。」

 涙を拭いながら答えてくれました。同時に、私以外の皆さんの歌の感想も言っていました。

 「他の皆さんも良かったわ。スクールアイドルってやっぱりすごいのね。」

 皆さんもニコニコしています。

 すると、果林さんから質問がありました。

 「せつ菜、これでお母さんにもスクールアイドルをやるのを認めてもらえたわけだけど、学校のみんなにも正体を明かしちゃう?」

 それについては即答でした。

 「それはしません。

 確かに、もう正体を隠す必要はなくなったかもしれないですが、やっぱりステージの上ではちゃんと『優木せつ菜』でいたいですし、見てくれる人にもそう思ってもらいたいです。」

 これが私の信条です。それに、正体を明かしたら、特に副会長なんかは夢が壊れてしまいそうな気がしますから。

 私は続けました。

 「だからせつ菜の正体が菜々だということは、皆さんと、そしてお母さんとの秘密です。」

 そう言ってお母さんの方にも微笑みかけると、お母さんも微笑み返してくれました。

 ここで愛さんからある提案がありました。

 「そうだ!今日うちの店でライブの打ち上げやろうよ!それで、せっつーがお母さんと仲直りできたこともお祝いしようよ。」

 愛さんはお母さんの方を振り返って続けました。

 「もちろん、中川さんも一緒で。」

 「え?いいの?」

 「はい、美味しいもんじゃ焼き、ご馳走しますよ!」

 こうして私達は、愛さんのお店に向かうことにしました。

 

 道中で私は、侑さんとお話ししていました。

 「お母さんとの出来事で、一つ思ったことがあるんです。」

 「何?」

 侑さんに聞かれて、私は続けました。

 「私は、自分の大好きも、他人の大好きも否定しない生き方を目指してきました。でも、自分の大好きをわかってもらうのも、他人の大好きを理解するのも、とっても難しいことなんですよね。」

 「うん。」

 「だけど、相手の大好きを受け止めて、それをわかろうとする努力は、やめたくないと思いました。それは同好会の皆さんにも、お母さんにも、ファンの皆さんに対しても一緒です。」

 「せつ菜ちゃんらしいね。」

 侑さんの返事を受けて、また続けました。

 「それでも、その努力をしたとしても相手と自分の大好きなことがわかり合えるかどうかはわからない。

 自分と相手の価値観が合わなくても、それをわかった上で自分の好きなことを続けるためには自分の気持ち貫かなければならないこともあるんだなと思いました。」

 侑さんはしばらく私の方を見つめてから答えました。

 「そっか。でも、それだって大事なことだと思う。せつ菜ちゃんはそれでいいんじゃないかな。」

 「そうですよね。ありがとうございます。」

 そして私は、一度皆さんの方を振り返って言いました。

 

 「皆さん…!」

 私が呼びかけると、皆さんは私の方を向いてくれました。

 「今日は本当にありがとうございました!これからも、よろしくお願いします!」

 

ぼくがかんがえた最強の、アニガサキで三船栞子を出す上での改変ポイント

 2020年12月をもって虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメ版、通称『アニガサキ』が完結しました。製作陣の虹ヶ咲愛に満ちた素晴らしいアニメでした。

 もしもアニガサキ2期があるとしたら、原作スクスタでも登場した追加メンバーの三船栞子も(実際に出るかどうかは別として)出てくる可能性があります。

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 しかし筆者は、アニガサキで栞子を出す上で、スクスタのままのキャラ造形でははっきり言って厳しいと思います。実際にスクスタでの彼女の行動も未だに賛否あり、筆者自身も彼女のことを快く思っておりません。なので今回は、『アニガサキに栞子を出すならここを変えた方がいいんじゃないかな』ということを筆者なりに考えて書いていきたいと思います。

 以下は栞子推しには不快な思いをさせるかもしれません。それでも構わないよという方は歓迎します。

 

目次

 

①性格面について

 まず栞子の特徴を簡単に述べると以下のようになります。

  • 虹ヶ咲の一年生
  • 三船財閥を運営している一家の次女
  • 休日はボランティアに出かけている
  • 優木せつ菜から交代する形で生徒会長に就任
  • 他人の適性を見抜く能力がある。しかし、そのことで他の生徒を転部させたり、部活動に入るのに適性試験を実施しようとしたりするなどの押し付けも目立った
  • 姉・薫子がスクールアイドル関連で何か挫折をしたらしく、加入前はスクールアイドルにいい感情を抱いておらず、同好会を廃部にまでしようとしていた

 以上になります。

 

 自分はまず、この適性云々の話を押し付ける部分を“無し”にするべきだと思います。舞台となる虹ヶ咲学園は、自由な校風を売りにしております。主人公チームたるスクールアイドル同好会も、バラバラな価値観が同じ場所で共存する場所であることをストーリー全体を通して描いてきました。そのために、舞台設定からして彼女の考えが生きる土壌はないと思います。何よりも『私の考えが正しいのだから言う通りにしろ』というスタンスでは視聴者からの共感も得られにくいと思うからです。

 一方で、休日はボランティアに出かけているなど、『世のため人のために何かがしたいと思って行動している』という部分もあります。アニメではそこをもっとプッシュするべきだと思います。スクスタ劇中でも、一応保育園(もしくは児童施設)のボランティアに参加している描写があり、そこで子供達に優しく接している様子がありましたが、アニメに出すならそういった面の方を強調するべきだと思います。『世のため人のために働く』といっても、スクスタのように自分が正しいと思うことを他人に押し付けるのではなく、他人のために自分ができると思うことを率先して行うという風にすれば、視聴者受けは良さそうだと思います。

 

②生徒会長交代劇について

 栞子といえば、せつ菜と生徒会長選挙で戦い、その末に会長の座についたことも挙げられます。しかしその交代劇も、壇上でせつ菜を『この人は自分の大好きなことを我慢して生徒会長をやっている、だからそんな人に務まるわけがない』と、せつ菜が他の生徒に自分の正体を明かせないという弱みにつけ込んだ発言をして個人攻撃し、せつ菜を黙らせて勝利という卑劣極まりないものでした。こうした討論の場やディベートにおいてこのように個人攻撃や相手の人格否定を行うことは、本来ならば反則・マナー違反となります。また、このとき栞子は『適性』の一点張りだったのに対し、むしろせつ菜の方が『学校生活を良くするアプリを作る』と具体的な政策を挙げていたために尚更納得できませんでした。

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 加えて選挙自体も、全校生徒の意見を集めて会長をリコールするわけでもなく、理事会に栞子自身が掛け合っただけでせつ菜をリコールできたという不自然なものでした。その理事会との関係についても、栞子が虹ヶ咲の理事長と旧知の中であったことものちに判明しました。このことから栞子には理事長とのコネクションがあったからイレギュラーな選挙を通すこともできたのではないかという疑いも浮上し、もしもそれでせつ菜の首が斬られたと思えば尚更印象が悪かったです。

 そもそも生徒会長であったせつ菜が栞子に敗れ、そんなせつ菜に勝った栞子が同好会に入部しスクールアイドルと生徒会長を同時にやるようになったという事実は、せつ菜の株を下げていることになります。また、ストーリーの途中でせつ菜が生徒会長を辞めされられたことにより、『正体不明のスクールアイドル・優木せつ菜の正体は生徒会長だった』というせつ菜のキャラクター性にも傷が付けられました。

 

 筆者はアニガサキに栞子を出す上で、この生徒会長選挙の下りも“無し”にするべきだと思います。

 『じゃあ栞子の生徒会長設定どうするんだよ』という意見もあるかと思いますが、筆者に考えがあります。以下は自分が考えたストーリーになります。

 まず、せつ菜がスクールアイドルをやっていることが両親にバレた後で両親を説得し、その後もストーリー終盤まで生徒会長を続ける。そうしているうちに、せつ菜の生徒会長業務が任期満了を迎える。

 そこで、せつ菜が次期会長候補に栞子を推薦し、やがてバトンタッチする。

 これならせつ菜の株を下げないと思いますし、栞子の生徒会長設定をアニメでも通すことができます。『これでは栞子の生徒会長業務がしっかり描かれないだろ』という意見もあると思いますが、引き継ぎのところをしっかり描くなり、卒業式のシーンがあるなら在校生代表として挨拶をさせるなりすればいいと思います。もちろんこれまでに、栞子がせつ菜も生徒会長の肩書を譲っても良いと視聴者に思ってもらえる人物として描いていることが前提です。

 

③スクールアイドルと姉との確執について

 栞子は姉・薫子がスクールアイドル関連で何か挫折をしたらしくそのことでスクールアイドルにいい印象を抱いておらず、姉のような人は見たくないという気持ちから一時は同好会を廃部にまでしようとしていました。

 スクスタにおける薫子は、アニガサキでも行われたイベントである『スクールアイドルフェスティバル』の初代主催者でしたが、アニガサキではすでに主人公・高咲侑の発案で行われており、三船姉妹の出る幕は無さそうに見えます。もし栞子をアニガサキで出すのなら、そこも改変する必要があります。

 

 筆者ならどうするかというと、以下のようにします。

 薫子はスクフェス主催者ではなくスクールアイドルという設定で登場させる。薫子はスクールアイドル活動で挫折したために妹・栞子はスクールアイドルにいい印象を持っていない。でも、姉のことを近くで応援していたこともあり、本当はスクールアイドルが好きで同好会にも興味がある。しかしその姉の挫折も見ていたために、自分でも『私にはスクールアイドルの適性がありません』と思い込んでいる。そこで侑達に背中を押され、やがて同好会に入部する。

 

 逆のパターンとして、薫子を凄腕のスクールアイドルとして登場させても面白くなるかと思います。

 姉・薫は凄腕のスクールアイドル。栞子も姉の影響でスクールアイドルをピンでやっていたことがあるが鳴かず飛ばずで挫折してしまい、順風満帆でスクールアイドルをやっていた姉に劣等感を抱いている。そのため、本当はスクールアイドルが好きで同好会にも興味があるが『私にはスクールアイドルの適性はありません』と考えている。そこで侑達に背中を押され、やがて同好会に入部する。

 

 こうすれば、アニメにも三船姉妹を違和感なく登場させることが可能だと思います。また、同好会を廃部にしようとした件については、普通に印象が悪く、モブが大概スクールアイドルに良心的だったアニガサキでそういうことをすれば、間違いなくヘイトを溜めるでしょう。そもそもアニガサキでも、序盤で廃部騒動があったため、内容被りのことを考えても“無し”にするべきだと思います。何より、もしアニメ2期で栞子が登場するにしても、スクールアイドルフェスティバルを行ったことがすでに同好会の実績として残っているため、役に立たないから同好会は潰すという理屈には無理が生じます。

 

終わりに

 以上が、アニガサキで栞子を出すならこうした方が良さそうだということを自分なりに考えた結果となります。しかし、実際に出るかどうかはわからず、出たとしてもここに書いたようになるとは限らないため、ネタの範疇にとどまります。

 

 まとめると、『不快要素をオミットして良い部分を伸ばしていこう』ということになります。虹ヶ咲は案外そうでもなかったものの、「ラブライブ!」シリーズで媒体ごとのキャラの特徴・性格の違いがあることは今更な話でもあるため、これぐらいの改変はやってもいいんじゃないかとも思います。

 

 それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

『これは虹ヶ咲というシリーズの“お祭り”だ』虹ヶ咲アニメ感想・総括

 2020年10月から12月にかけて、ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメ版、通称“アニガサキ”が全13話放送されました。

 虹ヶ咲はソロの集まりということもあり、今まではグループ単位の話でやってきた「ラブライブ!」シリーズとしては異色の作品だったのではないかと思います。今回は、虹ヶ咲のアニメが最終回を迎えたということで、アニメ全体を総括する記事を書きました。長くなると思いますが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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目次

 

1.ストーリー全般の感想

①キャラ描写全般について

a.ソロの集まりのスクールアイドル

 冒頭でも触れた通り、虹ヶ咲はソロの集まりという体制をとっています。アニメ化する前からも、ユニット曲以外はアルバム単位で各メンバーのソロ曲が全員曲と合わせて一曲ずつ収録されていたり、公式の4コマ漫画や虹ヶ咲の母体であるスクスタでも度々ソロアイドルであることが強調されたりしてきました。そのために、アニメではどのようにして各メンバーを見せていくのかが気になりました。

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  実際に蓋を開けて見ると、1クールで各メンバーの個人回を全員分がっつり行うというものでした。さらに、第3話でラブライブ!大会の存在についても触れられたものの、そのラブライブ!大会には出ないという方針にもなりました。「ガンダム」シリーズに例えると、無印と「サンシャイン!!」が宇宙世紀シリーズで虹ヶ咲が「Gガンダム」以降のアナザーガンダムのポジションに当たるともいえます。グループ単位で活動していた今までの作品と比べると、終盤の11〜13話以外は各話1話完結のオムニバス形式で話が進んでいるという印象が強かったです。そのために、ライブシーンと合わせて『とにかく同好会のアイドルを見てくれ』という製作陣の作品愛を感じました。アニメの時空で虹ヶ咲のみんながソロ路線をとると決めたのは宮下愛加入回の第4話『未知なるミチ』からになりますが、それまでの経緯として、もともと優木せつ菜中須かすみ桜坂しずく近江彼方エマ・ヴェルデの5人からなる旧同好会時代にメンバー同士の価値観の合わなさから部が内部崩壊してしまったために、新生同好会では各メンバーがそれぞれの価値観に合ったスクールアイドル活動をできるようにソロという形をとったということがあります。虹ヶ咲の原作に当たるスクスタでは、昨今のソシャゲよろしくキャラを多数増やす商売を行いやすくするためにソロ路線をとっていたという印象が強かったですが、アニメではそういった虹ヶ咲のコンセプトを『同じ場所で違う価値観が共存する』、『自分たちの好きなことを追求するが他者とのつながりも重んじる』という現代的なテーマに昇華したことは見事だと思います。しかし、ソロでやるというはステージに立つのは1人ということなので、それに伴う不安もみんなにはありました。そういうソロ故の不安を第4話、そして第9話で描写していたところもポイントです。


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 また、オムニバス形式であるがために、各メンバーの話ごとに別々のメッセージが込められているように思いました。個人的に『この個人回にはこういうメッセージがこめられていそうだ』というのをここにリストアップしていきます。ここに記すのはあくまで個人的な見方です。

  • 第1話の歩夢&侑回→『これだ!というものを見つけたら躊躇わずにやってみよう』
  • 第2話のかすみ回→『可愛いも格好いいも、様々な価値観が共存する場所こそが理想』
  • 第3話のせつ菜回→『他人の大好きを尊重することは自分の大好きを否定することではない』
  • 第4話の愛回→『楽しいことに正解はない』
  • 第5話のエマ回→『やりたいと思ったそのときから事は既に始まっている(エマの台詞そのまま)』
  • 第6話の璃奈回→『苦手なところは無理に克服しなくても得意なところでカバーすれば良い』
  • 第7話の彼方回→『生活を守るのも好きなことを続けるのも両方大切なことだからお互いの助け合いが必要』
  • 第8話のしずく回→『何かを演じているときの自分も紛れもない自分自身』
  • 第9話の果林回→『1人で何かをしていても支えてくれる人がいる』
  • 第11,12話の歩夢回→『前に進む度に大切なものが増えていく、その一方で今まであったそれらが消えてなくなるわけではない』

 特に第9話の果林回『仲間でライバル』は、個人回シリーズのトリであったためか、今までの各メンバーの個人回を決算するかのような内容であったと思います。『仲間でライバル』という理念は第7話『ハルカカナタ』で彼方と妹の遥が果林よりも先に体現してみせたという印象もありますが、果林回がなければその方向性も強固なものにはならなかったでしょう。

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 続いて、「ラブライブ!」といえばやはり楽曲。そういうわけで、楽曲の話に移ります。

 楽曲はどれも素晴らしく、アニメ化前の各メンバーの持ち歌のテイストを良い感じに引き継いだものも有れば、エマの『La Bella Patriaや彼方の『Butterfly』のような今までの曲の作風からは想像もつかなかったようなテイストの曲まで様々でした。また、各メンバーごとにソロのMVがもらえたことは非常に贅沢に思います。第1〜5話では心象風景を使った演出が多く見られましたが、第6話からは実際のステージを使ったライブが増えたために徐々に地に足ついていったという風にも感じられました。


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   (皆さんのお気に入りの曲はどれですか?)

 また、既存曲では優木せつ菜の『CHASE!』がアニメで登場し、侑と歩夢の夢の始まりになったというところも、せつ菜推しとしては大変嬉しいポイントでした。


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 最終回に歌った全員曲の『夢がここから始まるよ』も、アニメ化前の全員曲である『Love U my friends』にも似た爽やかさと達成感のある一曲で、それぞれの好きなことを追求することと、メンバーを含む他の人と楽しいことを共有することを諦めずにいた同好会のみんなだからこそ歌えたアニガサキのラストを飾るのにふさわしい曲でした。

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b.とにかくキャラに好印象を持たせ続ける工夫

 アニガサキを見ていて思ったことは、各キャラのヘイト管理やキャラの株を上げる描写が上手いというところもありました。例えば、旧同好会の廃部騒動のときにせつ菜が暴走して同好会の雰囲気がギスギスしていたところでかすみが真っ先に反抗したことで、片方にヘイトが溜まるのを防ぎ、さらに両者とも悪気はなかったことをきちんと描写してから気持ちよく解決できる文脈に持っていくことでヘイト分散ができていたと思います。序盤の果林とエマについても、エマが果林に廃部のことを相談し、果林がエマの助けに回ることで2人の株上げができていたと思います。

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 第3話のせつ菜回については、『流石に廃部にまでする必要は果たしてあったのか』という疑問も残りましたが、主要メンバーの中では一際ヘイトを溜めやすそうなせつ菜の正体バレ(せつ菜は偽名を使ってアイドルをやっており、その正体は生徒会長)と加入を早い段階で済ませるというのは良き采配であったと思います。このときせつ菜の正体を見破ったのは果林であり、序盤はとにかく果林の株が上がり続けました。


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果林『“優木せつ菜”の名簿はどこにいったのかしら』

せつ菜『勘のいい上級生は嫌いですよ』

 

 果林自身の方も、第6話で璃奈が練習に来なかったときに練習を終わりにしないかと言ったり、第9話の個人回ではDiver FESに相応しいメンバーを選ぶべきなどのシビアな発言が目立ちますが、その一方で璃奈のライブのためにモデルの仕事に休みを入れていたり、Diver FES本番で自信をなくしかけたりするなどの柔らかい一面もすぐに描写されていたため、性格がきついわけではないという印象を持てました。

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 ここまでのヘイト管理については、『メンバーを良く見せよう』というよりも『悪く見えないようにしよう』という方向性の気遣いを感じます。

 

 ヘイト管理は主要メンバー以外の脇役にも行き届いており、その脇役一人一人にも好感を持てました。

 第6話で登場した璃奈のクラスメイトは、璃奈が表情を上手く出せないことをからかったり気味悪がったりせずに、そこまで親しくなかったときも明るい態度で接してくれていてよかったと思います。

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 第7話の彼方回では、彼方が家事や遥の世話をやっている中で娘2人に母が大変な思いをさせているのではないかと思った視聴者もいたと思いますが、7話終盤の母の置き手紙から、親子の絆は崩れていないことがわかったのも良かったです。

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 演劇部の部長も、第8話でしずくを舞台の主役から下ろしてしまうといったことをしていましたが、最後は主役のしずくの助演として彼女を助け、ひいてはスクールアイドルフェスティバル(以下スクフェス)で同好会を応援していたところが好印象でした。


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 スクフェス承認の話で登場した副会長も、侑からスクフェスの話を聞いてスクールアイドルのことを知ろうとしてくれていた姿勢には好感が持てました。また、そこでちゃっかりせつ菜推しになっているところも可愛かったです。

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 余談になりますが、このようにして一般人のスクールアイドルに対する反応を細かく描いていたところも、アニガサキの面白い部分だと思いました。そのために、モブキャラ一人一人も生き生きとして映っていたように思います。

 

②ファンとアイドルを繋ぐ、高咲侑の物語

 アニガサキには、高咲侑の物語という一面もあります。

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 高咲侑は、原作スクスタのプレーヤーキャラ(通称:あなたちゃん)に当たる人物であり、ラブライブ!」アニメシリーズでは初のスクールアイドルではない主人公です。侑は第1話でせつ菜のライブに感銘を受け、幼馴染でもう1人の主人公である上原歩と共にスクールアイドルの世界に入っていきます。その後、各話で同好会メンバーとの交流を深め、彼女達のパフォーマンスを見ていく中で自分も本気で何かがしたいと思うようになり、やがてスクフェスを発案・開催するまでに至ります。さらに、物語終盤では音楽科に転科することを決めており、その“好き”の気持ちは際限なく広がっていきました。アニガサキの物語は、ソロのスクールアイドルの話だけでなく、侑がスクールアイドルを通して自分が本気でやりたいことを見つけるまでの話でもありました。思えばこれは本当に小さな一歩に過ぎないと感じます。しかし、最終回の感想記事でも書きましたが、その小さな一歩を踏み出すことにも意外と勇気と時間が要るのかもしれないし、その小さな一歩が自分自身に大きな変化をもたらすのかもしれないと思いました。

 また、侑は10話でスクフェスを発案したときに『ファンとスクールアイドルが垣根を越える、スクールアイドルもファンのみんなもそれぞれの場所で自分の好きを表現する』ことも理念の一つとして上げていました。その他にも、最終回における『私にあなたがいてくれたように、あなたには私がいる』という歩夢の台詞は、ファンに“大好き”を発信するアイドルとそれを受け止め支えるファンの関係性を簡潔に表しています。これらを通してアニガサキは『ファンとアイドルの物語』という一面もあると感じました。ある意味、虹ヶ咲の初期からのコンセプトである『あなたと叶える物語』をアニメの文法で体現していると思います。

 スクールアイドルフェスティバルでファンも出し物を行うくだりはよくある学校の文化祭を彷彿とさせましたが、学園内で活動する“スクールアイドル”を題材にした作品だから出来たことであると思います。スクールアイドルは「ラブライブ!」シリーズの花形ですが、ファンの方でも何かができるはずだと思わせてくれる作品であり、逆にスクールアイドルからファンへお返しをする作品であると思いました。

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 侑にはファンの代表的な立場の主人公だからこそ持てる役割がもう一つあります。第10話における音楽室でのせつ菜との会話にて、『ステージの上ではみんな輝いて見える』とせつ菜に言ったところ、せつ菜から『侑さんからはそんな風に見えているんですね』と言われました。スクールアイドルではない者の視点から物事を見ているからこそ、スクールアイドル自身が持つ魅力を気づかせてくれるというところも、侑の重要なポジションであると思います。

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 準主人公・せつ菜の視点で見てみると、自分自身は幕引きのつもりで行っていたライブが侑と歩夢の心を動かし、やがてスクフェスという大舞台に繋がっていったという見方もできます。もちろん、侑の心を動かしていたのはせつ菜以外の同好会メンバーもそうであり、やはり決定打になったのは第9話の果林のDiver FESのステージであったと思います。ある意味、果林が第6話で同好会に入るのを遠慮したままではスクフェス開催はなし得なかったのなもしれません。果林を同好会に招き入れたエマも大役でした。そういう意味では、『誰かが発信する大好きが誰かの心を動かし、新しい夢が生まれる』『我慢せずに自分の大好きを発信していれば、それが他人の行動を変えることもあるかもしれない』というエンタメそのものに対する賛歌のような文脈も感じ取れました。

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 またせつ菜推しとしての話になってしまいますが、お付き合いください。せつ菜はアニメ化前から『大好きがいっぱいの世界』を作りたいと言っていました。アニメでは自分のパフォーマンスか侑の心を動かし、やがてスクフェスという大好きがいっぱいの世界に繋がっていったと思えば、せつ菜の頑張りも報われた気がします。

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 かつてせつ菜と衝突してしまったかすみの『かわいいもカッコいいも共存できるワンダーランド』という夢も、スクフェスで叶えられたのだと思いました。

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2.あらゆる虹ヶ咲媒体の総決算

 アニガサキは、スクスタを含む今までの虹ヶ咲媒体のネタを各話に散りばめており、虹ヶ咲媒体の総決算とも言える作りになっています。そういう意味では、この記事のタイトルの通り『虹ヶ咲というシリーズのお祭り』と言えるのかもしれません。だからといって虹ヶ咲初見の人やスクスタ未プレイの人が楽しめないわけではなく、今までの媒体の要素を集めつつもオリジナルストーリーに再構築しているため、新規の人も楽しめる内容になっていると思います。第3話まではスクスタ序盤でもあった同好会廃部騒動をややなぞる感じでしたが、それより後は完全オリジナルストーリーです。

 

 スクスタ以外にも、過去の虹ヶ咲の媒体のネタも拾っています。アニガサキで拾われた過去媒体の要素といえば、例えば、ライブシーンで度々映る手描きのカットではスクスタでも登場した衣装を着ているメンバーの姿が見られます。


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 せつ菜のMVだけは、スクスタの衣装を用いたカットが見られませんでしたが、『CHASE!』のライブシーンではアニメ化前からあった衣装を着ていました。
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 スクスタのネタ以外にも、ファンの間では一時期物議を醸していたファミ通app時代のちょぼらうにょぽみ氏の4コマ漫画のネタまで拾っていました。


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 ミヤコヒト氏による看板4コマ「にじよん」からも引っ張ってきたネタがありました。


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 アニガサキはこういった小ネタの使い方も上手いと思います。

 スクスタをなぞるのではなく、スクスタを含めた今までの虹ヶ咲の要素を全て分解し、再解釈、再構築を行なっているという見方が妥当かと思います。
 

 スクスタや虹ヶ咲の4コマだけでなく、スクフェスへのリスペクトもありました。これについては、虹ヶ咲のメンバーであるエマ、彼方、しずくがスクフェスのモブ出身のキャラだからこそスムーズに使えたという気がします。


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 その一例として、彼方の妹・近江遥に代表される東雲学院のメンバー、綾小路姫乃に代表される藤黄学園のメンバーがアニガサキでは声付きで登場しました。


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 これは単なるファンサービスではなく、第10話で侑がスクフェスを発案するに向けて他校との繋がりを得ていく布石としての機能を果たしていました。同好会再結成からスクフェス開催に向けて、こうして他媒体の要素を交えつつスケールを広げていく構成は面白かったです。スクスタ関連だけかと思いきや、スクフェスのネタも拾ってきたという点については脱帽しました。スタッフの「ラブライブ!」愛を強く感じる世界観構成であったと思います。

 

3.「ラブライブ!」らしくない?いや、そんなことはない

 虹ヶ咲は冒頭と1.で書いたようにソロが主体なことやラブライブ!大会を目指さないストーリー展開もあって、ラブライブ!らしくない』と感じた人も多いと思います。確かに、そういう点に関しては虹ヶ咲の「ラブライブ!」らしからぬ点であると思いますし、作風も今までのシリーズと比べればどちらかといえば「けいおん!」や、シリーズ構成が一緒の「ゆるキャン△」などの日常系アニメ寄りのものであったとは感じます。しかし自分は、虹ヶ咲も立派な「ラブライブ!」シリーズのアニメであると胸を張って言える気がします。なぜそう思うのかをこの段落で触れたいと思います。

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①虹ヶ咲にも共通するラブライブ!らしさ

 まずは序盤の話から。無印なら穂乃果がA-RISEの映像を、「サンシャイン!!」なら千歌がμ'sの映像を見てスクールアイドルの世界に入り込んだように、アニガサキでは侑と歩夢がせつ菜のライブを見てスクールアイドルの世界へと入り込んでいきます。穂乃果も千歌も、侑と歩夢も、物語開始前は特に夢を持たずに過ごしていたところをスクールアイドルに出会い、自分の夢を持つようになっていく部分が共通しています。夢を持たない女の子がスクールアイドルみ魅せられて自らの生き方を形作っていくというのは「ラブライブ!」シリーズ共通のテーマです。

 次に、無印「ラブライブ!」では南ことり『普通のアイドルなら私たちは失格』と言っており、その後に『スクールアイドルなら輝ける』という旨の発言をしていました。「サンシャイン!!」の千歌も、自らのことを普通怪獣と言いながらもやがては仲間と共にラブライブ!大会優勝までたどり着きました。ことりと千歌の発言はある意味、『持たざる者もアイドルとして輝ける』という部分もスクールアイドルの素晴らしさであるとも言っているように思います。虹ヶ咲では、第6話の璃奈がまさにそれを体現していたと思います。璃奈は表情を作るのが苦手で、ボードを使って歌うことを選びました。それはおそらく、普通のアイドルなら受け入れられづらい要素だと思いますが、スクールアイドルという分野だからこそ成せた表現手段といえます。

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 また、過去作で例えるなら、璃奈はμ'sの小泉花陽星空凛Aqours黒澤ルビィに近しいものを感じます。

 

 さらに虹ヶ咲では、過去の2作と同じくスクールアイドルのことを高校生である『今しかできないこと』と第5話で表現していました。これはもし続編が有れば卒業シーズンの話で触れられるようなことだと思いますが、高校生活の限られた時間の中で輝けるからこそのスクールアイドル、アイドルものだけど青春モノという根幹を成すテーマはやはり過去作と共通している部分であると思います。

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 「ラブライブ!」シリーズにおける共通のテーマである『みんなで叶える物語』という部分について。虹ヶ咲ではそれがスクールアイドルフェスティバルという形で実現されました。

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 第10話の感想記事でも書きましたが、スクフェスという一つの『みんなで叶える物語』の発案者で中心人物である侑は、スクールアイドルではないものの、紛れもない「ラブライブ!」主人公です。

 

②スポ根ではない、文化系のラブライブ!

 一方で、過去作と虹ヶ咲はやはり決定的な違いもあります。

 まず虹ヶ咲は、スクールアイドルをよりエンタメとして扱っていたという印象を受けます。過去の作品ではスクールアイドルをやる上で廃校問題も絡んでいたのに対し、そのような話とは無縁な虹ヶ咲は『とにかく楽しいことをやろう、それをファンのみんなとも共有しよう』というノリの作品でした。

 それから、無印と「サンシャイン!!」がスポ根モノなら、虹ヶ咲は文化系であると自分は考えています。過去の2作はみんなで一つのことを目指す話だったのに対し、虹ヶ咲は各々が自分の好きなことを追求していたという点においては、スポ根ではなく文化系であると思います。これは他校のスクールアイドルの描き方にも表れています。これは他校のスクールアイドルの描き方にも表れており、過去2作に登場したA-RISEとsaint snowは主人公チームと同じ目標を競うライバルという感じでしたが、アニガサキにおける彼女達と似たポジションの東雲学院と藤黄学園は、虹ヶ咲の視点から見ると美術部などが他校と合同で展覧会を開いたりするようなノリの仲であるという印象がありました。

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  ラブライブ!大会の扱いについては、1.で述べたように虹ヶ咲では出ないこととしていますが、これは『スクールアイドルをやる上で大会や勝ち負けに拘らないやり方でも良い』と、過去作とは違うもう一つの解答を出しているものだと思います。みんなで一つのことを目指し、『友情・努力・勝利』の三原則に忠実な王道の無印と「サンシャイン!!」に対し、あえてその路線を外した邪道の虹ヶ咲という見方もできると思います。

 ちなみに、ここでは過去作を貶めて虹ヶ咲を持ち上げるという意図は全くないので、悪しからず。自分は過去の無印と「サンシャイン!!」もとても好きです。

 

あとがき

 今回は虹ヶ咲アニメ全体を総括する記事を書かせていただきました。とにかく、このような素敵な作品を送ってくださったスタッフ一同には『お疲れ様でした』と言いたいです。

 アニメの終わり方自体は、まだまだ同好会のみんなの活躍は続いていきそうな雰囲気があるものの、クリアすべきことはクリアした分すっきりとしたエンディングだったと思います。その一方で、せつ菜の家庭の話やエマのスクールアイドルのルーツ、愛の祖母の話や彼方の母のことなどの掘り下げられていない部分もあるため、続編にも淡い期待があります。

 特に彼方の母については、置き手紙で『娘達のライブに行きたい』という旨のことを書いていましたが、スクフェス当日はその人らしき姿が見当たらなかったため、2期があれば彼方の個人回のライブシーンを見に来て欲しいなと思います。

 せつ菜の家庭の話については、せつ菜推しとして絶対にやってほしいと思っている部分です。本文でも書いた通り、今季の1クール分でもせつ菜は報われていると感じますが、趣味を禁じている親と本心で話し合えるようになってこそ、せつ菜には本当の幸せが訪れると考えています。それから、侑が音楽科に転科するとなると、各メンバーの曲を侑が作る話もやるのかなと思います。そうなると、侑と他のメンバーの絡みが増えそうなので楽しみです。

 

 今回はとても長い記事になってしまいましたが、最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。アニガサキの展開をこれからも楽しみにしています。

『ワクワク“叶えた”ストーリー』虹ヶ咲アニメ13話「みんなの夢を叶える場所」感想

 テレビアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」、通称虹ヶ咲のアニメ版「アニガサキ」が最終回を迎えました。

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 個人的にはアニガサキのクライマックスは12話であり、今回スクールアイドルフェスティバルが開かれた最終回はいわばエピローグであると思いました。ですが、感想記事も完走したいと思います。何卒最後までお付き合いください。それでは内容の振り返りと感想に移ります。

 

目次

 

内容の振り返り

 冒頭にて、侑は12話で言った通り音楽科に転科することを同好会のみんなに伝えます。何気にここでしずくが珍しく侑に絡んできたところもポイントです。

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 侑はみんなに、『スクールアイドルとして頑張っているみんなを見ていたら、本当にやってみたいことはとにかくやってみようと思った』と言いました。音楽科に転科するのも、スクールアイドルフェスティバル(以下スクフェス)もそこに含まれているのでしょう。同好会のみんなの過ごした日々が侑の背中を押してくれました。そして、スクフェスもいよいよ翌日に迫っていました。

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 オープニング明けにて、いよいよスクフェスがスタートしました。お台場名物であるユニコーンガンダムの立像もがっつり映っていました。ある意味、サンライズだからなせることです。ガンダムのビルドシリーズ以外でお台場のユニコーンガンダムが映ったのがよりによって虹ヶ咲であったというのも驚きです。

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 スクフェス当日、歩夢とせつ菜が一冊のピンク色のノートを回していました。

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 侑には秘密であるらしく、彼女が部室に来た途端に隠していました。

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 部室に全員が揃ったところで、『私たちの虹を咲かせに』とみんなで円陣を組んで気合を入れます。ソロがメインだから仕方なかったことでありますが、ここに来てシリーズの伝統である円陣を組んで気合を入れるというシーンが出来ました。

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 続いてフェスティバルのシーンに移ります。まずは歩夢のステージから。アニメ挿入歌の『Dream with you』がバックで流れ、元気いっぱいに歌う歩夢の姿が映し出されます。

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 ここで、第12話で歩夢の前身に一役買った今日子もステージを見に来ているところもポイントです。彼女が所属する焼き菓子同好会で、同好会メンバーを象ったクッキーを販売していました。

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 続いて愛のステージ。参加する人達は愛にタオルを振り回していて、本人も観衆も共に元気いっぱいのステージです。

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 出し物は、愛の実家のもんじゃ焼き屋が出張してきていました。もしアニメに続編があるなら、同好会のみんなと一緒に愛の実家へもんじゃ焼きを食べに行く話も見てみたいです。


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 その次は彼方のステージ。大きなベッドが数多く並べられ、みんなで寝ていました。

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 第7話ではアルバイトや学業、そしてスクールアイドル活動を数こなしていてオーバーワーク気味なためによく寝てしまうということがわかりましたが、ステージのコンセプトとしてわざわざベッドを数配置するあたり、寝ること自体は普通に好きであることがわかります。

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 晴天のもとでベッドを置いて集団で眠る光景自体は異様であり、妹の遥も困惑していました。

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 彼方の次は璃奈のステージ。

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 歌った後は観客とゲームで対戦していました。その時に使っていたゲームキャラが、ちょぼらうにょぽみ氏の4コマ漫画に登場する歩夢のペットの蛇・サスケ、「にじよん」でかすみが投げていたネズミ、同じく「にじよん」に登場した猫型ロボットの“アランちゃん”であるというファンサービスがありました。


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 そして何より、璃奈が大勢の人とゲームで触れ合っているというところにグッとくるものがありました。

 

 璃奈の次は果林のステージ。

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 ちょうどステージ交代の時間となったため、エマが来ていました。

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 このときエマが記念撮影に乱入してくるところも面白かったです。

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 そのままエマのステージに移行します。エマはフェスティバルに来てくれた子どもたち(※エマの子ではありません)と仲良くなり、一緒のステージで踊っていました。

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 エマ役の指出さんも、虹ヶ咲の1stライブでキッズダンサーと共にパフォーマンスを披露していたので、そのネタの回収であると思われます。

 

 ユニコーンガンダムの立像の前では、何やら怪しい動きがありました。

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 かすみがコッペパン同好会と協力して作った『どこでもかすみん』なる移動型ステージに乗って、せつ菜のステージに攻めてきました。そのまま攻撃を仕掛け、せつ菜はなす術もありません。このときのかすみの表情や動きが悪役のそれで腹黒い一面がよく現れています。

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 せつ菜のピンチに『solitude rain』のサビと共にしずくが駆けつけ、『しずくスカイブルーハリケーンなる必殺技を放ち、せつ菜の窮地を救いました。

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 やがてせつ菜も反撃に転じ、必殺技の『せつ菜スカーレットストーム』を放ってかすみを見事に退けました。

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 このとき、演劇部の部長が舞台の演出を操作しており、このヒーローショーのようなステージは演劇部と合同で行った出し物であることが分かります。

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 思えば第12話でせつ菜が生徒会副会長達と打ち合わせをしているときに、演劇部もそこに参加していました。

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 とにかく前半はお祭り騒ぎといった感じの内容でした。

 

 同好会メンバーの各々のステージが終わったところで、今度は彼方とエマが先程のノートを回していました。

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 一方、歩夢は藤黄学園の姫乃達と合流した後、侑とも合流しました。


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 歩夢は侑に他のみんなのステージも見ていかないのかと聞くと、侑は『今から新しいことをやるとしたら、このフェスティバルをやり遂げたらなのかな』と答え、そのための自信が欲しいと言っていました。11、12話を見る限りでは自信満々に見えなくもない様子でしたが、やはり新しいことを始める上での恐れや不安もあるみたいです。

 そのとき、愛のステージで機材トラブルがあったことを聞いたため、侑はそちらに駆けつけて行きました。

 

 機材トラブルの方は、璃奈が解決してくれました。

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 機材が復旧した後に愛が璃奈を抱きしめると、璃奈は『もしかして、初めて愛さんの役に立ってる?』と愛に聞きました。愛はそんなことを気にすることはなく、笑顔で璃奈のことを撫でていました。第6話で多くの人と繋がることができるようになった璃奈ですが、友人関係を構築する上ではまだまだ未熟なためか、誰かの役に立つかどうかを重視しているきらいが見えました。そんな璃奈に対して何の見返りも求めない愛の姿勢が、璃奈視点で見ると心にくるものがありました。

 

 一方その頃、しずくとかすみは…

 しずくが第8話の演劇祭のお礼にと、かすみに三日月型のヘアピンをプレゼントしていました。

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 アニメ化前のかすみの立ち絵ではトレードマークでもある三日月型のヘアピンですが、アニメではしずくからのプレゼントというところがロマンチックに思えます。

 そしてこの2人も、例の如くノートを回していました。

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 大盛況のスクフェスも順風満帆とは行かず、天気が雨に変わり、多くのステージを中止にせざるを得なくなってしまいました。

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 当然他の客も帰り、侑は落ち込みました。

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 雨は上がっても、使えるステージは残っておらず、スクフェスはこのまま終わるのかと思ったとき、歩夢が『終わりじゃないよ、これで終わりになんてしない。まだ伝えたいことがあるから』と侑を励ましました。

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 そんな侑の元に電話が入りました。なんと、副会長が学校にあと1ステージだけ支えるようにとりなしてくれました。それを聞いたみんなは、学校のステージへと駆けていきます。

 このときのシーンでユニコーンガンダム立像のサイコフレームが、「ガンダムUCユニコーン」本編の最終決戦仕様の緑色になっているところも特徴です。

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 学校のステージに着いた同好会のみんなは、ステージ上で思い思いのことを語ります。


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 このときの彼方の台詞が印象的で、自分達は『1人だけど1人じゃない』というのがまさにこのアニメ全体を通して培われたものだと思います。

 歩夢の台詞もまた、このアニメ全体を通しての頑張りを感じられました。

これからもつまづきそうになることはあると思うけど、“あなた”が私を支えてくれたように、あなたには私がいる。この想いは一つ。

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 この場合の“あなた”というのは、高咲侑のことはもちろん、それ以外のステージに集まってきてくれたみんなのことであり、そして、我々視聴者のことも含まれているのではないかと思います。

 祭りの熱量は最高潮に達し、お待ちかねの最後のライブシーンに突入します。

 

 今回歌われた曲はよ』。わかりやすく盛り上がるというよりも、さわやかな印象のナンバーです。アニメの挿入歌としてははじめての全員で歌う曲です。イントロは12話Cパートで侑が弾いていた作りかけの曲が元となっております。

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 ライブシーンの途中途中に、今までの話を振り返るカットがあるところも素晴らしいと思いました。


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 せつ菜推しとしてはたまらない一枚もあり、感無量でした。
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 中には、『そんなこともあったんですか?!』と思うようなカットまでありました。


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 エマとのツーショットは、11話までの歩夢が見たらどんな反応をするか未知数です。また、しずくと侑の絡みは本編ではほとんど見られなかったためここで補完してくれるのは嬉しいですが、続編があるならがっつり絡んでいる様子をもっと見せて欲しいと思います。

 ユニットシングルのネタを拾ったカットもあり、ファンサービスも見事に取り入れていると思いました。


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Diver Diva

 


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AZUNA

 

 他の学校のメンバーのカットもありました。


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 侑や他のファンの姿もありました。スクフェスを支えてくれたファンのみんなも、『みんなで叶える物語』の立派な一員です。


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 さりげなく、流しそうめん同好会のみんなの姿もありました。


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 流しそうめん同好会も、スクフェスで出し物をやっていたのでしょうか。

 

 髪を下ろした生徒会書記の双子と思われる人物も写っておりました。

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 新聞部の子はたいそうなカメラを持参してきており、プライベートも本気すぎるガチカメコであることがわかります。

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 演劇部部長の彼氏面ぶりも何気に印象的で、“あまとうスタイル”の継承者がまさかの「ラブライブ!」シリーズに登場となりました。


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 アクシデントはあったものの、こうしてスクフェスは無事に閉幕することができました。スクフェスでの頑張り、そして、今までの同好会での活動で培った絆を胸に、侑は転科試験に臨みます。

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侑はこのとき、『何事も全部上手くいくなんてことはなくて、実際は公開しちゃうことばかりなんだと思う』と思っていました。それでも、同好会での交流を通して生まれた何かを本気で始めたいという気持ちは侑自身にも止められません。

 

 一方、同好会の部室では、スクフェスの反響がたくさん来ていました。

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 次の機会での参加を望む声もあり、彼方も第二回がやりたいと言っていました。そのとき、歩夢が何か変わった様子を見せており、璃奈が歩夢にそのことを尋ねると、『始めてよかったな』と満足げに言っていました。

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感想・総括

 ついにアニガサキも最終回になってしまいました。ひとまずアニメのスタッフの皆さんには『お疲れ様でした』と言いたいです。今回の最終回は、スクフェスの話もやりつつ、今までの同好会の活躍を軽く振り返っていく、ちょっとした総集編や物語がひと段落した後の追加コンテンツのような印象を受けました。

 

 ただ、この最終回で歩夢達が回していたノートについて少し気になりました。おそらく、あのノートには『夢がここからはじまるよ』の歌詞やらが記されていたのかなと自分は解釈しています。ノートについては、しずくとかすみで回しているときも果林が『東雲とのコラボステージの後にみんなで集まる』という風に言っていたり、同好会のみんなが学校のステージに向かう前に歩夢が侑に『伝えたいことがある』と言っていたため、この文脈ならつまりはそういうことだろうと思いました。

 あとはライブシーンで止め絵が多いのが気になりましたが、その分ファンサービスを交えたカットで埋め合わせなどはできていたのかなと思います。

 

 アニメ全体を通しての感想ですが、10話の感想でも触れたように、これは高咲侑が同好会のみんなとの交流を通してスクフェスにせよ音楽にせよ自分のやりたいことを見つけるまでの話でした。とても小さな一歩に感じますが、その小さな一歩を踏み出すのにも意外と勇気と時間が要るのかなと思います。もう1人の主人公とも言える歩夢が侑と共にスクールアイドルの楽しさに目覚めていくところもよかったなと思います。最終回の最後の台詞がまさに、そのことを体現しています。

 準主人公であるせつ菜の視点で見るなら、一度は幕引きのつもりでやったライブが侑と歩夢の心を動かし、スクールアイドルフェスティバルを開くまでの新しい“大好き”の原動力になっていったんだなと感じました。せつ菜推しとしては、彼女の言葉を借りるなら『大好きがいっぱいの世界』が少しずつ出来上がっていく様子は見ていて楽しいものでした。『誰かの大好きが誰かを動かし、新しい大好きが生まれる』、『我慢せずに好きを発信していれば、何かが変わるかもしれない』といったエンタメ全般に対する賛歌のような文脈も感じ取れました。まさに、『届け、トキメキ』というキャッチコピーにふさわしい話だと思います。せつ菜推しとしては、大好きなせつ菜が報われた気がするので本当に嬉しかったです。

 

 終わり方自体は『俺たちの戦いはまだまだ続くぜ』的なものではありましたが、ひとまず一つのことをクリアすることはできたなと思います。ただ、せつ菜の親の話、エマのスクールアイドルのルーツ、彼方の母親、愛の祖母などの掘り下げられていない要素も多く、侑が音楽科に行った後の話も作れそうな気がするので、続編があるならそれらも含めて楽しみにしたいです。

 

 余談になりますが、今回がっつり登場したユニコーンガンダムは、覚醒形態も含めてバトルスピリッツでカード化されています。ラブライバーの皆さんもバトスピ始めてみませんか?(強引)

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 それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

『お疲れ様、令和1号』劇場版仮面ライダーゼロワン-REAL×TIME感想

 初めまして。初めてではない方はお久しぶりです。澄田兼鈞と申します。

 

 新型コロナウィルスの影響で本来は夏に公開予定だったのを延期していた「仮面ライダーゼロワン」の劇場版、「REAL×TIME」が2020年12月18日に公開されました。

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 仮面ライダーゼロワンのテレビ本編の話については、最終回直後に上げた記事にも書いたように色々と思うことがありました。それでも、ゴーストみたいに追加コンテンツを最後まで追って面白いと思えたケースもあったにはあったため、とりあえず劇場版を見てみることにしました。

仮面ライダーゼロワン総括・感想『もうちょっと頑張れ、令和一号』 - 澄田さんは綴りたい®︎

 しかし、今回の劇場版自体は一応テレビ本編前提の話ではありますが一本の映画としては楽しめたと思います。話の方はテレビ本編の後日談です。

 今回はその感想を書いていきます。ちなみにゼロワンの同時上映で現行作品の「セイバー」の短編もありましたが、今回はゼロワンに焦点を当てていきます。当然のことながらネタバレ注意です。書きたいことが散らかっていると思いますが、何卒最後までお付き合いください。

 

目次

 

あらすじ

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「神が6日で世界を創造したのなら、私は60分でそれを破壊し、楽園を創造する。」突如姿を現した謎の男エス/仮面ライダーエデンは、賛同する数千人の信者と共に、世界中で大規模な同時多発テロを引き起こす。人々が次々と倒れ、世界中が大混乱に陥る中、飛電或人、不破諌、刃唯阿、天津垓、更に滅亡迅雷.netの迅、滅も、仮面ライダーとなり敵と戦いながら真相を究明しようと奮闘する。
果たして、圧倒的な強さを見せるエスの正体とは。エスが作り上げようとする楽園とは、いったい何を意味するのか?

 

大まかな感想

ストーリーの振り返りなど

 映画の序盤からいきなりゼロツーとエデンの戦闘が始まっており、最初は状況を理解するのに時間がかかりました。しかし、この映画は「REAL× TIME(リアルタイム)」のタイトルの通り現在進行形で人類滅亡を食い止めるための60分を描いているため、そのことについては徐々に気にならなくなっていきました。また、エスの計画が時間を経過するごとに進んでいくところも随時画面に表示しており、尚更臨場感がありました。監督がテレビ本編でも映像を撮っていた杉原さんということもあり、本編や彼の前作である「ルパンレンジャーvsパトレンジャー」でも見られた変態カメラワーク(褒め言葉)も健在で、戦闘シーンのクオリティの高さは相変わらずのゼロワンといった感じでそこも楽しめた部分でした。

 今回はボスキャラのエデンの他にも、エデンの配下である量産型ライダーの仮面ライダーアバドが登場します。劇中ではゼロワンがそのアバドン達を掻い潜り、エデンの待つスタジアムにいくなど、「仮面ライダー555/ファイズ」の「パラダイスロスト」を思わせるシーンもありました。

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 人物描写についての感想に入ります。主人公・飛電或人/仮面ライダーゼロワンは、本編ではヒューマギアの暴走などのことも問題を先送りにしがちで綺麗事を並べている夢見者という印象がいまいち拭えませんでしたが、劇場版では倒すべき敵がエスと彼が率いるシンクネットに絞られていたこともあり、人類とヒューマギアの夢を守るために戦うヒーローの姿をしっかり見せてくれたように思います。根本は本来そうであるはずなのですが、テレビ本編ではいまいち振り切れていなかった分、劇場版では明確に倒すべき相手が決まっていたためそちらの面がより強く出ていたと思います。また、ヒロインで秘書ヒューマギアのイズエスのもとに『私も行く』と言ったときに制止したシーンも印象的でした。テレビ本編でイズを一度破壊され、最終回で彼女を復元して一から元に戻そうとするという結末には思うところがあったものの、『もう2度とイズを失いたくない』という悲痛な心境が読み取れました。テレビ本編終盤以前にもイズを失いかけていることを思えば尚更です。ですが、当のイズは決して守られるだけのヒロインには収まりませんでした。

 映画終盤でイズはゼアの導きにより、なんとゼロツーに変身して戦いました。ゼロツーに変身したイズが、エデンの世界滅亡のキーの犠牲になるべく或人が変身したヘルライジングホッパーをゼロツーの姿で止める様子も驚きました。或人は一度イズを失った悲しみから仮面ライダーアークワンに変貌し、憎しみに身を任せて滅を倒そうとしていた経験があり、ヘルライジングホッパーになったことで再びそうなってしまいかけていたところをイズが止めてくれたのはよかったです。このときの或人役の高橋さんの演技も鬼気迫るものでした。最終決戦でエスの信者の1人・ベルが変身する仮面ライダールシファーが登場しますが、アバドン軍団とルシファーを前にゼロワンとゼロツーが肩を並べて戦う姿はとてもカッコいいものでした。

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 或人とイズ以外では、個人的には刃唯阿/仮面ライダーバルキリーの活躍がとても素晴らしいものだと感じました。迫り来るアバドン軍団を前に、A.I.M.S.の隊長として部下を率いて登場し、バルキリーに変身した後にバイクアクションを披露しつつアバドン達をバッタバッタアバドンがバッタモチーフということで、はい!アルトじゃぁ〜{以下略})と薙ぎ倒していく姿は、テレビ本編での不遇ぶりはどこ吹く風といった感じでした。ゼロワン最終回後の記事でも書きましたが、テレビ本編での唯阿は変身の機会も少ない上にキャラとしての方向性があやふやな印象が嫌でも拭えませんでした。しかし、ゼロワン映画の前作である「令和・ザ・ファーストジェネレーション」に引き続き、劇場版での活躍には恵まれていると思います。初期からいる女性ライダーとしてバルキリーの活躍にも期待していたこともあり、そこを今回の映画でおさえてくれていたのも嬉しかったです。

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 他のライダーの活躍も印象的で、唯阿と連携している仮面ライダーバルカン/不破諌は、今回はテレビ本編に比べると活躍は控えめでしたがテレビ本編と変わらぬかっこよさが出ていました。また、シンクネットから遣わされた戦闘機を力づくで止めようとするのも、相変わらずの不破らしさがありました。滅亡迅雷.netのも、他のキャラに比べると台詞が少なかったものの、かつての強敵だったが味方になると頼もしい人物という雰囲気が出ていてよかったです。滅が仮面ライダー滅に変身するときに落下しながらの変身シークエンスが映るのも良かったです。天津垓/仮面ライダーサウザーについては、味方としては頼もしくも愛されキャラに収まっている様子には笑いましたが、この映画の展開のことで再び罪状が増えてしまったため不完全燃焼な部分もあります。その細かいことは後程書いていきたいと思います。

 飛電の副社長・福添准はおやっさん枠に収まっていました。シンクネットにZAIAの技術を横流ししていたZAIA社員(アキラ100%)を尋問するときに弁護士ビンゴ(嘘発見機能付き)はともかく、腹筋崩壊太郎と白衣の天使ましろちゃん(看護師型ヒューマギア)を使うところは首を傾げましたが、それが良いかどうかはさておき中盤のゼロワンテイストを感じる部分ではありました。

 

仮面ライダーエデン、シンクネット関連

 ここからは、劇場版限定ライダーの仮面ライダーエデンとその周辺設定で印象に残った部分を書いていきたいと思います。

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 仮面ライダーエデンに変身するエスは、本名を一色理人といい、医療用ナノマシンの開発を行なっていた人物でした。その医療用ナノマシンの被験者にはエスの婚約者である遠野朱音が選ばれており、ナノマシンの実用化と同時に彼女の病気を治す目的もありました。しかし、ナノマシン人工知能搭載式で衛星アークの制御の元に動いていたため、デイブレイクでアークが暴走したときにナノマシンもその被害を受け、それで容体が変化した朱音は帰らぬ人となってしまいます。しかし、朱音の脳だけはまだ生きており、彼女の脳をコンピュータにつないで電脳世界の楽園に住まわせていました。一連の出来事に悲しんだエスは自らの身体をナノマシンの集合体に変え、朱音のための楽園を作ることとアークの根源となった人間の悪意を滅ぼすことを目的にアズから力をもらい、シンクネットを立ち上げ、劇場版の世界同時多発テロを起こします。

 エスの大まかな紹介が終わったところでシンクネットの話に移ります。シンクネットは、エスが破滅願望のある人々をインターネット上で募ってできた宗教で、世界を滅ぼし、自分達がエスと共に楽園に導かれることを目的としています。インターネットで新興宗教の信者を募る部分は現代的だなと思いました。アバドンの正体が、ナノマシンで信者達が作った遠隔操作式のアバターだったというのも、インターネット社会の負の面に対する風刺を感じました。アバドンという名前が、“蝗害”を神格化した悪魔に由来するのも特徴です。

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 しかし、エスの真の目的は電脳世界に全人類を導き、悪意の集合である信者達には滅んでもらうというものであり、やがて真実を知った信者達からは離反されています。エスの目的については、『自分だけが朱音の元に行くのではダメだったのか』と思える部分もありますが、朱音を奪ったアークの根源である人間の悪意を滅ぼす目的もあったためにそういう手段を取ってしまったのでしょう。それに、『明日』をこの先も迎えられるかすらもわからない電脳世界に勝手に導かれる人間達からすれば大変迷惑なのは間違いないです。そういう意味では彼も“悪意”を持った敵であり、アークの使者たるアズが目をつけるのも必然であったと言えるでしょう。

 ただし、エスには朱音が死して尚寄り添おうとしてくれていました。エスとの初戦闘の後に或人も電脳世界に導かれ、そこでであった朱音からエスのことを止めてほしい』『私はちゃんと元気だ』というエス=一色に対する気持ちを聞かされます。これは仮面ライダーエデンの変身シークエンスにも現れていると考えられます。エデンの変身シークエンスでは、人間の女性の身体を象ったライダモデル(ゼロワン世界でライダーの装甲パーツの元となる物体)が身体に絡みついて変身します。これは、エスがいつまでも恋人の死を引きずっている心境を表しているとも受け取れますし、死して尚朱音がエスに寄り添おうとしてくれていることを示しているとも個人的には受け取れます。エスの信者・ベルがエスからエデンキーとエデンドライバーを強奪して変身した仮面ライダールシファーの変身シークエンスでは、巨大な骸骨のライダモデルが変身者に食らいついて変身するというものであり、寄り添ってくれる人がいて、たとえ人間を捨てても添い遂げたいという希望を持っていたエスに対し、『寄り添ってくれる人も守るべきものもない空っぽの破滅願望』、『その破滅願望に身を任せ、生きながらにして死んだ者という面』を表しているようにも見えます。エデンとルシファーはフォルムがとても似ていますが、エデンのカラーリングは赤を使っていて血が通っているように見えるのに対し、ルシファーは白が基調で白骨遺体を思わせます。個人的にはベルの掘り下げも欲しいところでしたが、エスとは違って同情の余地もない悪として描かれていたのかなと思いました。そのことは唯阿が他のシンクネット信者に対してもエスに比べれば同情の余地もない』と言い捨てており、他の信者共々ベルもやがて倒され、等しくお縄についていました。

 最後、エスは電脳世界で朱音と共に念願の結婚式を挙げており、そのまま幸せそうに退場していきました。

 

その他の感想-テレビ本編の内容も添えて

 「仮面ライダーゼロワン REAL×TIME」は確かに一本の映画としては楽しめました。ただ、いまいち不完全燃焼に思えた部分もあります。一つは天津垓/仮面ライダーサウザーについてです。

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 彼はテレビ本編で衛星アークに人間の悪意をラーニングさせ、デイブレイク、ひいては滅亡迅雷.netのサイバーテロの原因を作りました。そして、今回明らかになったエスナノマシンの不具合もアークの暴走によるものであり、『天津が余計なことをしなければエスは朱音さんと平和に暮らせていたかもしれないのに…』と嫌でも思ってしまいます。それと、仮面ライダーエデンのシステムの出所もアークであったと思えば、シンクネット事件の遠因も作ってしまっていたことになります。一応テレビ本編では子供向けのヒーローものである以上、彼が良いようにばかりしている展開が許されるはずはありませんでした。一度或人から飛電社長の座を奪った後はボコボコにされ続け、唯阿からはそれこそ読んで字のごとくの“鉄拳制裁”も食らい、最終的には飛電社長の座を或人に返した上にZAIAジャパンの社長の座も降ろされれるという仕打ちを受けた上で味方になってはいますが、ことの重大さとそれに伴う映画の展開も相まってしこりが残った視聴者も居るんじゃないかなと思います。

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   (読んで字のごとくの鉄拳制裁)

 劇場版ではバルカンとバルキリーの変身能力を復旧させるという働きもしている一方で、無職の不破に自社への誘いをかけるのを断られるといった愛嬌を見せていたりします。それだけに、今更裁きを受けて欲しいとかではなくもはやメタ的な話になってしまいますが、きちんとケジメをつけられるならまだしも、味方になる前提のキャラに『全ての元凶』みたいな過剰な悪役要素や取り返しのつきづらい要素を背負わせるのはあまり良くないのではと言いたいです。もちろん天津に限った話ではありません。今までの作品ならエボルト仮面ライダービルド)や我望仮面ライダーフォーゼ)みたいなラスボスとして倒されているような人物がやっているようなことだと思います。天津のリスペクト先と思われる檀黎斗仮面ライダーエグゼイド)も全ての元凶でありながら味方についていたこともあったものの利害の一致で手を組んでいただけで最終的にはVシネマ、小説版とで再び主人公達の前に立ち塞がり、そのまま倒されています。それだけに天津の扱いは色々と引っかかりました。ある意味彼も不幸なキャラクターだと思います。

 

 アズとの決着もまだ先延ばしになりそうだと思いました。

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 もし、仮面ライダールシファーに変身したのがアズだったらアークとの戦いにも綺麗な決着がついたのかなと思います。しかし、彼女としては自ら行動を起こし戦うよりも、誰かを唆し、悪意に身を焦がしていく様を見るのを楽しんでいるという節はあるのかもしれません。ですが、悪意に身を任せ破滅願望の赴くままに動いているという点は彼女もエスやシンクネットのメンバー達に通ずるものがあり、ルシファー、ひいてはアークワンやアークスコーピオンのようなアークの仮面ライダーに変身できる資質は備わっていたと思います。おそらくこれから発売されるVシネマでそこは触れられるのでしょう。映画単体としてはゼロワン本編前提でも楽しめましたが、本編で回収されなかったことまで解決したわけではありませんでした。ヒューマギアを含む人工知能や、その他のテクノロジーとの共存にはまだまだ課題がありそうです。そこについては気長に見守っていこうと思います。

 

あとがき

 劇場版仮面ライダーゼロワンは、テレビ本編が終わった8月から実に4ヶ月経ってからの上映であったため、テレビ本編の展開には思うところがあったものの、まずは『あ、久しぶり〜』という感想が真っ先に浮かびました。或人の『お前を止められるのはただ1人、俺だ!』という台詞やプログライズキーの電子音を劇場で聞くたびにそう思いました。

 本文でも書いた通り、まだ続きがあるような気がします。しかし、自分の中のゼロワンは一旦これで区切りを迎えられました。だからひとまず、『お疲れ様、令和1号』と言いたいと思います。西川貴教さんとJさんが歌う主題歌も素晴らしかったです。

 

 それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

『踏み出す“夢への一歩”、変わらない気持ち』虹ヶ咲アニメ第12話「花開く想い」感想

 虹ヶ咲アニメも12話、残すところ後1話となりました。今回も前回に引き続き、歩夢と侑にスポットが当たった話でした。

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 今回は2週間ぶりにメインライターの田中仁さんが担当した回でした。前置きはこのくらいにして、内容の振り返りと感想に移りたいと思います。

 

目次

 

内容の振り返り

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 昨晩、歩夢に『侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい、私だけの侑ちゃんでいて…』と告げられた侑。侑としては、歩夢に伝えたいことがあり、このままではまずいと歩夢に会った侑は昨日の話の続きをしようとしますが、もういいのと遮られてしまいます。

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 流石に歩夢も昨晩の行動はまずいと思ったのか、『フェスティバル頑張ろうね』と侑を励ます態度を見せました。しかし心の声は、『離れたくなんてない』と11話の出来事を引きずっている様子でした。

 

 オープニング明けにて、侑はせつ菜と共にスクールアイドルフェスティバル(以下スクフェス)の打ち合わせに行っていました。第7話で東雲学院のステージを彼方へ貸してもらうときといい、スクフェスの打ち合わせで発案者の侑と共に出かけていることといい、せつ菜は虹ヶ咲と他校の外交で役に立っていることがわかります。東雲学院サイドにいる遥も、ここ最近の話の描き方によるものだと思いますが、“彼方の妹”よりも“東雲学院のスクールアイドル”という側面が強くなってきたように思います。

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 しかし侑の方は、準備はちゃんとしてきたものの、歩夢との出来事を引きずっているためか、打ち合わせの最中も上の空でした。そのことでせつ菜が侑の様子がおかしいと思い始めました。

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 一方その頃、同好会の部室では…

 打ち合わせに出向いていないメンバーもスクフェスに向けて燃え上がっていました。(自称)部長のかすみを中心に謎の一致団結ムードが出来上がっていた中で、璃奈は出し物の相談があるとクラスメイトの浅希に連れて行かれ、続けて果林とエマも同じ理由で服飾同好会に連れていかれ、演劇部の方でも出し物を考えているらしく、しずくが部長に捕まり、彼方もバスケ部のメンバーに呼び出され、サッカー部の人には愛が呼ばれました。かすみと一緒に残るかと思われた歩夢も焼き菓子同好会の今日子に出し物の相談で連れて行かれました。人気者はご多忙です。同時に、スクールアイドル活動に協力的な脇役の面々にも好感が持てます。


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 一人部室に取り残されたかすみは、ゴルバットも文字通りの意味で顔負けするくらい口を開いて立ち尽くしていました。


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 しかし、かすみにもファンはきちんとおり、おそらく他のメンバーと同じく出し物の相談なのでしょうが、その人にそのまま連れて行かれました。


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 歩夢が今日子達と出し物の話し合いをしているシーンに移ります。今日子は歩夢のためにさまざまな出し物を考えていましたが、なかなか決まりません。しかし、『他のスクールアイドルのファンにも歩夢ちゃんの良さをアピールしたいんです!』と張り切っていました。


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 最初は侑のために始めたスクールアイドル活動も、こうして応援してくれる人ができたこと自体は素直に喜んでいました。特に今日子は第6話から歩夢のファンとして登場しており、12話では今まさに歩夢を応援したいという気持ちを形にしようとしています。その後のモノローグにて、『スクールアイドルとファンが一緒になってどんどん世界が広がってる』と言っているように、歩夢の“大好き”もまた知らず知らずのうちに際限なく広がっていってます。侑のスクフェス開催を応援する気持ちも嘘ではなく、素直に応援したいはずなのですが、どうしても彼女と離れていってしまうという不安を拭いきれません。

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 再び侑のシーンに移ります。スクフェスの打ち合わせの帰りにて、侑はせつ菜から歩夢の様子がおかしかったことを伝えられ、虹ヶ咲学園の正門近くで歩夢を見つけるとすぐさま彼女の方へ駆け出して行きました。

 侑はピアノのことを内緒にしていたことを詫び、歩夢に最初に告げるつもりだったことを伝えた上で、このままモヤモヤした気持ちを抱えているのは良くないと再度歩夢に自分の夢の話をしようとしますが、『それって私と一緒じゃなくなるってことでしょ』と遮られてしまいます。さらに、『侑ちゃんがこんなこと言うのは初めて』と続けたため、幼い頃から積み重ねてきた侑との関係性の変化に危機感を覚えていることがわかります。


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 ここでもまたすれ違ってしまいました。

 

 Bパートにて、スクフェスが1週間後に迫り、同好会のみんなは着実に準備を進めていました。


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 何やら、せつ菜が優木せつ菜の姿で副会長と共に打ち合わせに参加していましたが、副会長の希望でしょうか。
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 彼方は彼方らしく、準備の合間も寝ていました。

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 歩夢もまた、自分のところの出し物の話し合いをしていましたが、この時の今日子の表情からもうかがえる通り、歩夢自身の気が進んでおらず、準備が難航していることがわかります。

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 このときの今日子は歩夢に失望していたわけではなく、元気のない歩夢を気遣っていました。そこで今日子は、侑に相談を持ち掛けます。

 

 気がつけばスクフェス開催も2日後に迫りました。

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 歩夢はその日の帰りに、せつ菜に一緒に帰らないかと誘われました。

 せつ菜は歩夢に、こうしてスクフェスが開けるようになったのはファンのみんなのおかげであり、それに応えるためにも自分たちは先へ進まなければならないと説いていました。しかし歩夢は、『もう動けないよ』と弱気になっていました。

 歩夢はせつ菜に、自分がスクールアイドルを始めてから変化したことについて話しました。

私がスクールアイドルを始めたのは、みんなのためじゃないんだ。見てほしいのはたった一人だけだったの。

だけど今は変わってきてて、こんな私を良いって言ってくれる人がたくさんいて、大切で、今は私の大好きな相手が侑ちゃんだけじゃなくなってきて、本当な私も離れていっている気がするの

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 歩夢自身もまた、最初に侑と一緒の夢を見ると誓ったことから遠いところまで来ていました。歩夢が侑以外にも大好きな人ができたというのは、侑とともにスクールアイドルの世界に入るきっかけとなったせつ菜のことであり、自分を応援してくれるファンであり、同じくスクールアイドルとして頑張る同好会の仲間のことでしょう。“大好き”が際限なく広がっているのは、侑も歩夢も一緒です。

 

 それに対するせつ菜の励ましもとても印象的でした。

私も、我慢しようとしていました。大好きな気持ち。

でも、結局辞められないんですよね。

始まったのなら、貫くのみです!

 侑のことを想う気持ちが大事で、その一方でファンとの交流を通して新しい“大好き”に気付きつつあり、侑だけのスクールアイドルではなくなりつつある歩夢のことを肯定し、『歩夢さんはそれで良いんです』と言っているようにも思えます。

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 一度は自分の大好きを他人に押し付け同好会を空中分解させてしまったことにより、これからは他人の大好きも大切にしたい、でも、一度諦めていようが親に趣味を禁止されていようが自分の“大好き”を伝えたい気持ちを譲らず自他の“大好き”に向き合い続け、ひいては侑と歩夢の夢の始まりのきっかけになったせつ菜だからこその台詞であり、本気系スクールアイドル・優木せつ菜のかっこよさがこれでもかと出ているワンシーンです。そんなせつ菜だからこそ、歩夢の侑を想う気持ちと無自覚のうちに広がる大好きも両方肯定して彼女を励ますことができたのだと思います。一度侑に救われたせつ菜が、今度はこうして歩夢を救おうとしているところが印象的です。

 せつ菜の激励を聞いた歩夢は侑の夢と自分の気持ちに対し、『止めちゃいけない、我慢ししちゃいけない』と吹っ切れ、せつ菜とグータッチをしました。


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 そのまま歩夢は、侑の元へと駆け出していきます。このときにまた風景を使った演出が見られますが、Uターン禁止の標識と青信号が歩夢の『もう後戻りしない』という心情を表しています。

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 やがて侑の元にたどり着くと、侑が歩夢のファン達と共に歩夢専用のステージを作っていました。そこには歩夢ガチ推しである今日子の姿もありました。ステージの方は花をモチーフにした歩夢らしい造形です。

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 モチーフに使われた花にはそれぞれ歩夢に宛てた花言葉があり、今日子達が持ち出した黄色いガーベラ『愛』ファンから歩夢への気持ち。

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 今日子は歩夢のことを『可愛くて純粋でいつも頑張っていて、そんな歩夢ちゃんが私は大好きなんです』と評していました。

 そして、侑が歩夢に渡した赤いローダンセ『変わらぬ想い』、歩夢が侑を想う気持ちが変わらないのと同じで、侑が歩夢を想う気持ちも変わらないということの表れです。

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 それを知った歩夢が侑に抱きつくと、ファンの子達も『ずるい!』といって侑に続いて抱きつきました。歩夢がこのときファンの子達を抱きとめたのは、彼女が周囲に目を向けられるようになったことの表れです。


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 帰り道にて、歩夢が『前に進むって、大切なものが増えていくってことなのかな』と話しており、侑は『そうかもね』と答えていました。

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 侑の方も、『歩夢を最初に可愛いと思ったのは私なんだよ』と、幼い頃から変わらない気持ちを伝えていました。

 

 やがてマンションの前までたどり着き、ようやく侑は自分の夢について歩夢に伝えることができました。

私ね、音楽やってみたいんだ。2学期になったら、転科試験を受けようと思う。

 同好会のスクールアイドル達の活動を見続けた上で決めた侑の夢です。思えば侑が普通科だったのも、やがて夢を見つけて音楽を始めることの前振りだったと考えられます。

 そして歩夢も、『私はみんなために歌うよ』と新たな目標を侑に話しました。

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 やりたいこと、好きなことがバラバラなのは同好会のアイドル達だけでなく、侑もまたそうだったのです。

 バラバラだけど想いは一つ、侑と歩夢はお互いに『今までありがとう』と告げた後、2週間ぶりのライブシーンがスタートします。

 

 今回歩夢が歌ったのは『awakening promise』、今までの歩夢テイストを大事にしつつ、歩夢の葛藤が吹っ切れたような明るさ、力強さがあり、『say good-bye 涙』とはまた違った歩夢の前進を謳うナンバーです。

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 第1話の『Dream with you』と同じマンションの前で歌ったところも印象的で、一度夢の始まりを歌った場所で今度は新たなる夢の始まりを歌うという部分が良かったと思います。

 『Dream with you』ではライブシーンの途中でかなりダークな雰囲気の演出があった一方で、今回の曲はダンスパート以外の演出も全体的に明るいのが特徴です。

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(Dream with you)


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(awakening promise)

 

 歌い終わった後、お互いにこれからもよろしくねといい、そのまま2人は家に帰って行きました。

 

感想・総括

 ある意味、今回の話が真の歩夢回というべき話でした。歩夢の問題も侑ならきっと丸く収まる方向に持ってきてくれるという信頼もありましたが、歩夢が再び笑えたのは良かったです。

 侑が自分から離れていくという恐れもあると同時に自分も侑から離れていっているのではという恐れもあったからこそ、最終的に侑の夢に理解を示すことができたのだろうと思います。また、11話では嫉妬と焦りで『侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい』と言ってしまいましたが、12話では自分を見てくれるファンの存在を無視していたわけではないとわかったことについては好感が持てます。個人的な意見ですが、今日子と打ち合わせをしていたときの歩夢はひょっとしたら『あぁ、他にも私を見てくれる人はいるんだ』などという考えが頭をよぎりつつも『違う、私には侑ちゃんがいるのに…』などとそれを必死に封じ込めていたりしたかもしれません。しかし、せつ菜との会話における歩夢の『侑ちゃん以外にも好きな人が増えていった』という台詞に関しては、そういう描写が今の一度も全くなかったわけではないですが(2話のかすみとの会話、4・6話の愛と璃奈との交流、6話の今日子との出会い、9話でDiver FESに立候補したがる、11話で焼き菓子同好会に出向く、12話の今日子達との打ち合わせ)、この12話までに同好会メンバーやファンとの絡みがもっと多く有れば説得力もまた違ったのかなと思います。そこだけは引っかかりましたが、『みんなのために歌う』という目標もできたことから自発的に周囲に目を向けられるようになったことは確かであり、少なくとも『侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい』という考えは克服できたと思います。

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(第11話で歩夢が焼き菓子同好会に出向いたシーン。璃奈の手紙の音読と共に流されていましたが、『歩夢の知らない侑の姿があったように、侑の知らない歩夢の姿もある』演出する上では重要なシーンでした。)

 せつ菜へ嫉妬については、侑が歩夢の問い詰めに対して『違うよ』と即答していたことから11話時点ではすでに解消されており、歩夢からしてみればそれ以上に侑と自分が離れていくのが怖かったのかなと思います。11話終盤の2人の会話の終わり頃で完全に侑のターンで押し切れるかもしれないと思っていたところで歩夢が反抗してきたのも、つまりはそういうことでしょう。歩夢が侑を押し倒してしまうまでに至ったのも、侑が自分の夢を語りかけたことがトリガーとなったように見えました。

 やはり元々アニメ化する予定がなかったために続編があるかも怪しく尺も限られている中で、全員を掘り下げつつ様々な要素を描写するのは至難の技なのかなとも思えます。今回は11話と併せて、いつもの話に比べるとあまり親切ではないシナリオだなと思いました。それでも、歩夢の『スクールアイドルとして歌うことは好きで侑のスクフェス開催を楽しみにしておりそれを応援したい』という気持ちに嘘はなかったことと、侑の歩夢を大事にする気持ちがブレていなかったことは良いと思いました。

 

 歩夢の台詞の通り、前に進むということは大切なもの、好きなものが変わっていくというよりかは、それこそ侑のスクフェスの夢のようにそれらが際限なく増えていくことなのかなと思います。その一方で、元からあった好きなものが消えてなくなるわけじゃない、それは侑も歩夢も一緒です。そのことに気がつけたからこそ、歩夢は前進することができたのでしょう。

 そして、侑が音楽科に転科することを決めていましたが、そうなると歩夢と過ごす時間は当然今よりももっと少なくなります。侑は歩夢のように後ろを向いていたわけでないですが、そのことを気にしていたがために一度面と向かって話しておきたかったのかもしれません。それでも、第1話で誓った通りの同じ道でなくても、違う道を進んでも想いはひとつと誓い合えた2人ならきっと大丈夫でしょう。それまでは歩夢が侑に対して依存気味だった関係が、例え離れ離れでもお互いを励まし合う気持ちは忘れないという信頼関係に昇華できたところも良かったです。もしアニメ2期があるとすれば、音楽科に転科した後の侑の話もありそうな気がするので期待しています。今季の1クールは侑と歩夢がスクールアイドルに出会い、やがて自分のやりたいことを見つけていくまでの話なら、2期はスクールアイドルメンバー達がスクールアイドル活動を通して今度は自分のやりたいことを見つけていく話にするのもありかもしれません。

 

 余談ですが、せつ菜が今回の話で準主人公として申し分のない働きをしてくれたこともせつ菜推しとしては嬉しかったです。第3話では侑に救われるヒロインポジでしたが、第1話ではその侑をスクールアイドルの世界に引き込んでおり、今回の第12話では歩夢の前進を促すなどのヒーロー性も備えている、ヒロインもヒーローも両方できてしまう、準主人公というポジがとても様になるところもせつ菜の魅力の一つであると思います。またもせつ菜オタク前回の話でした。

 

final虹ヶ咲

 12話のCパートにて、侑が作曲にも挑戦していることを歩夢に話していました。これが最終13話で披露される曲につながるのでしょうか。


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 最終回のタイトルは『みんなの夢を叶える場所』と書いて“スクールアイドルフェスティバル”と読む、次回の展開も読めないですが楽しみです。

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 それでは今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。